[フィリピン] 2021年第2四半期 マニラ・レジデンシャル市場

2021/09/06


総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンが、2021年第2四半期のマニラ不動産市場のレポートを出していますので見ていきましょう。


コリアーズは、レジデンシャルの成約率が回復してくるのは、オフィス賃貸の立ち直り、マクロ経済の回復、海外で働くフィリピン人労働者からの持続的な送金、競争力のある住宅ローン金利、企業・消費者心理の改善を背景とした2022年となるだろうと予想しています。


またワクチン接種の加速が、上記の要因を支援し、より多くの企業の再開・拡大を促すとして、ワクチン接種の展開に期待を寄せています。



需要

Covid-19の影響により、プレセール、セカンダリー市場両方で成約は抑えめでした。コリアーズは、今後12か月で、政府のワクチンプログラムを背景に景気が回復してくることで、需要も徐々に戻ってくると予想しています。


供給

2021年第2四半期に完成したユニットは2,235戸で、コリアーズは、2021年末までに10,061戸がメトロマニラ内で完成すると予測しています。在庫のほとんどは、ベイエリアとフォートボニファシオとなりそうです。


賃料

2021年第2四半期、セカンダリー市場の平均賃料はさらに1.7%下がりました。すべてのエリアにおいて成約率が苦戦しました。コリアーズは、オフィス賃貸の回復に支えられて、2022年ごろから賃貸料も緩やかに回復してくると予想しています。


空室率

2021年第2四半期の空室率は17.1%に達し、第1四半期の16.3%からやや上昇しました。新築コンドユニットの引き渡しが多く控えていることから、コリアーズは、2021年末にかけて空室率はさらに上昇し、2022年から緩やかに回復してくるものと見ています。


価格

2021年第2四半期、価格はさらに3.2%下がりました。値下がりの主な要因は、セカンダリー市場のユニット需要が沈滞したことです。コリアーズは、2022年に価格は徐々に回復してくると見ています。




コンドミニアムの完成続々

2021年第2四半期、コリアーズによると、メトロマニラ全体で2,200戸の引き渡しがありました。うち、ベイエリアが82%、フォートボニファシオが残りの18%を占めています。コリアーズは、2021年に10,061戸のユニットの完成を見込んでおり、2020年の3,370戸と比較すると198%増となります。2021年から2025年まで、毎年約7,500戸の完成が予想されており、このうち約73%は同様にベイエリアとフォートボニファシオだということです。


▼第2四半期に完成したコンドミニアム

エリア

コンドミニアム名

ベイエリア

Bayshore Residential Resort Cluster A

Bayshore Residential Resort Cluster B

Kingsford Hotel

Palm Coast Villas Misibis

S Residences - Building 1

フォートボニファシオ

East Gallery Place



空室率の回復

メトロマニラのレジデンシャル・セカンダリー市場の空室率は、2021年第2四半期17.1%にまで上昇しました。第1四半期は16.3%でした。空室率の増加はすべてのエリアで見られました。ベイエリアの空室率が最も高く23.8%でした。これは、大量に新規供給が在庫に加わったことによるものです。Covid-19に端を発した渡航制限によりオフショア・ゲーミング企業による成約も少なかったことが、ベイエリアのレジデンシャルユニットの需要低迷につながりました。


コリアーズによると、オフィススペースが低迷したことで、すべてのビジネス地区において成約面積が減少したということです。2021年第2四半期時点で、メトロマニラのオフィス空室率は、第1四半期の11%から上がって12.7%となっています。


全体として、需要の冷え込みは2021年末頃まで続き、2022年後半期頃からオフィス鎮咳が回復するにつれて、成約件数も徐々に伸びてくるとみられています。海外で働くフィリピン人労働者(OFW)からの送金額は2021年1月kら4月で110億USドルに達し、前年同期比で5.1%増となりました。OFWの送金は、フィリピンのレジデンシャル需要、特に、アフォーダブル~中価格帯の物件の需要の主要なけん引要素となっています。フィリピン中央銀行(BSP)は、政策金利を2.0%で据え置くとみられていますので、より多くの投資家・エンドユーザーを呼び込むきっかけになりそうです。コリアーズは、政府が予想している2021年~2022年にかけての景気回復を受けて、レジデンシャル市場も回復してくるとみています。


またワクチン接種が進むことで、レジデンシャル需要の回復も期待されています。より多くの経済が再開し、オフィススペースの吸収が進ことがかんがえられるからです。また、政府は2022年第1四半期までに集団免疫を達成することを目標としており、投資家の信頼感回復にもつながりそうです。



賃料と価格は?

コリアーズによると、2021年第2四半期、さらに価格および賃料の修正が入り、価格は3.2%、賃料は1.7%下落しました。レジデンシャルプロジェクトの需要が冷え込んでいることから、2020年第2四半期以降、メトロマニラのすべてのエリアにおいて、価格・賃料とも下降を続けています。この価格の下落は、年末ごろまで続いたあと、2022年ごろからは徐々に上昇すると見られています。コリアーズは、2022年から2025年まで年間2%程の平均価格上昇を予想しています。


プレセール市場の需要底上げのために、見込み客向けの割引やプロモーションを行ったデベロッパーもありました。柔軟な支払方法だけでなく、電化製品やギフトバウチャーなどのプレゼントを用意するなどのマーケティング戦略を展開しています。


公共交通機関に近いアフォーダブル~中所得層向けの物件では、需要の増加が見られるようです。主要なビジネス地区の周辺エリアにあるレジデンシャル物件でも、革新的な支払スキームを提供しているものやインフラプロジェクトへに近いものには投資家が集まっているようです。


一方で、中所得層向け~高級の戸建て(House and Lot)物件への需要も、メトロマニラの外では高まってきているようです。コリアーズは、南北ルソン地方の主要な都市エリアに、より大きなスペースの低密度のコミュニティを好むフィリピン人家庭が増えてきていると分析しています。



(出所:Colliers