[フィリピン]2021年第1四半期マニラレジデンシャル市場

2021/05/25

2021年第1四半期マニラレジデンシャル市場

総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンが、2021年第1四半期のマニラレジデンシャル市場のレポートを発行していますので、本日はこちらを見ていきましょう。

コリアーズはまた、800万ペソ以上(約1,800万円)のラグジュアリーセグメントが、景気後退時でも最も影響を受けにくいと述べています。同社によると、フィリピン企業と外国企業の合弁によるプロジェクトが、現在市場で最も高価な部類に入り、革新的な設備やアメニティを備えていて、高額にもかかわらず成約率は2020年末には85%に達したということです。

またメトロマニラ周辺エリア(マンダルヨン、アラバン、ラスピニャスなど)のコンドミニアム開発が活発になりそうだとも述べられています。これらのエリアは2020年の中所得向け~ラグジュアリープロジェクトの成約件数の21%を占めたということです。

需要減に対応する形で、デベロッパー各社は割引や、頭金の分割払い・頭金なし、予約金の引き下げや電化製品などのプレゼントといったプロモーションを出してきているようです。


■需要
パンデミックがプレセール、セカンダリー、両方のレジデンシャル市場の需要を妨げています。コリアーズは、今後12か月から24か月で、中所得向け~ラグジュアリープロジェクトを中心として成約率が伸びると予想しています。

■供給
2021年第1四半期、コリアーズによると、4,145戸の新築ユニットの引き渡しがあり、すべてがベイエリアだったということです。2021年に完成予定の10,387戸のうち、このベイエリアが74%を占めるようです。

■賃料
セカンダリー市場の賃料は、2021年第1四半期、さらに1.6%下がりました。2020年には7.8%の賃料修正が入ったということで、世界通貨危機の際の3.7%下落を越えています。しかし、コリアーズは、2022年から徐々に賃料は上昇してくると見ています。

■空室率
2021年第1四半期、空室率はさらに上昇し、16.3%となりました。2020年は15.6%でした。コリアーズは、今年完成を予想しているユニットが加わることで、2021年末までにさらに空室率が上昇することを予測しています。

■価格
2020年の価格下落に続いて、2021年第1四半期もCovid-19の影響により2.5%の下落がありました。しかし、コリアーズは政府のワクチンプログラムに支えられえて、価格が緩やかに回復してくるのではないかと述べています。



2021年の完成ユニット4倍弱

2021年第1四半期に完成したユニットは4,145戸で、2020年第4四半期の1,080戸の4倍弱となりました。第1四半期の完成ユニットはすべてベイエリアのものだということです。コリアーズは、2021年に10,387戸のユニットが完成すると見ていますが、当初のコリアーズの予想10,604戸から2%減となっています。これは、プロジェクト1件が完成を2022年前半期にずらしたことによるものです。それでも、2020年に完成した3,370戸から3倍程度となっています。コリアーズによると、2021年に完成するユニットの85%超はベイエリアとフォートボニファシオだということです。


空室率は2022年やや減少

2021年第1四半期のセカンダリー市場の空室率は、15.6%から16.3%に上がりました。そのうちでも最も高い空室率を記録したのは、ベイエリア、フォートボニファシオ、そしてマカティCBDでしたが、コリアーズは、2020年の完成物件の64%がフォートボニファシオとマカティCBDであったことが、空室率の上昇につながったのではないかと見ています。

ベイエリアの空室率の増加は、オフショアゲーミング業界への渡航制限が部分的に影響しているだろうとコリアーズは述べています。2021年第1四半期のPOGO(フィリピンオフショアゲーミング会社)関連の取引は25,000平米程度で、2020年第1四半期の48,000平米と比較すると半分程度になったということです。ベイエリアのレジデンシャル市場需要はほぼPOGOにけん引されているため、2021年のレジデンシャルの空室率はさらに高まり17.2%程度になるとみられています。

コリアーズは、経済のリバウンドとオフィス賃貸の段階的な回復にともなって、2022年後半期くらいから空室率が回復してくるだろうと予想しています。オフィススペースの賃貸低迷もレジデンシャル需要に影響を与えたとみられており、平均オフィス空室率はレジデンシャルはレジデンシャル市場にも反映され、2020年第4四半期の9.1%から2021年第1四半期は11%へと上昇しました。コリアーズはまた、地域によってはプレセールの発売の低迷が見られと述べていますが、一方で、2021年第1四半期、販売が好調だったのは、フォートボニファシオ、マニラ、モンティンルパ、C5-パシッグ回廊のプロジェクトだったということです。


賃料と価格はさらなる修正

2021年第1四半期、価格は2.5%、賃料は1.6%下がったということで、コリアーズはさらなる修正が入ると予想しています。ただし、2020年に価格は13.2%、賃料は7.8%下落したことと比較すると、そのペースは緩やかになるようです。コリアーズは、政府のワクチンプログラムとオフィススペースの契約回復に支えられて、2022年以降価格は1.5%、賃料は1.7%ほど上がると見ています。パンデミック前の平均価格成長率は2015年~2019年で年間13.9%でした。

パンデミックが賃貸市場に与える影響として、コリアーズは、感染者数の増加やCovid-19関連の追加費用などを懸念して、引っ越しを控えるテナントもいるようだと述べています。家主の中には、20%~25%ほど賃料の割引を提示している者もおり、特に空室率が高いコンドミニアムで顕著だということです。また、コンドミニアム内の厳しいソーシャルディスタンスにり、アメニティの利用に限界があることから、居住空間の広い土地付き住宅を選ぶ動きもあったようです。



(出所:Colliers Philippines

(画像:Photo by Ralph David from Pexels)