2023/08/28
フィリピンのメトロセブは、2023年第1四半期のオフィススペースの成約面積において他の地方をしのぎ、アウトソーシング企業にとってフィリピンで最も魅力的な進出先としての地位を守っています。
総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンのレポートによると、新規供給があることで空室率は高止まりしているものの、事業拡大を検討しているアウトソーシング企業がオフィススペースを増やしてきそうです。
レポートでは、「セブ市場ではテナント寄りの傾向が見られるが、シェアードサービスや多国籍企業にとって、セブの人材プールやインフラを活用するオポチュニティとなるだろう。すでにフィリピン国内に進出済みの企業も、事業継続計画の一環としてセブに目を向けそうだ。」と述べられています。
一方で、家主に対しては、新しく広いオフィススペースやサスティナブルな建物を求める大手企業の動きを追って先回りしたアクションを取るようにと提言しています。
「事業を拡大し、広いオフィススペースを求めている企業は、この機会をとらえて、より良い賃料を引き出すよう交渉すべきです。セブ州内には質の高いオフィススペースがあることを考えると、魅力的なレートで新しく高品質なオフィススペースに入居する「価値への逃避」戦略を実施するにあたって、メトロマニラと同様、セブを拠点とする企業(BPO含む)にとっても大きなオポチュニティがあるとコリアーズは考えています。」ともレポートでは述べられています。
また、シェアードサービス事業者やメトロマニラに本社を置く多国籍企業を中心に、既存の企業もまた、事業継続計画において、成熟したインフラとスキルの高い人材プールのあるセブの可能性を再考すべきだとも述べられています。
さらにレポートでは、オフィス市場が現時点では敏感な状態だとも述べられています。この傾向はメトロマニラ内外で見られており、首都圏以外のオプションを探る企業もあれば、様子見の姿勢や事業拡大計画を控える企業もあるということです。
空室率は高止まりしていますが、コリアーズは、家主にとってもテナント企業にとっても最大化できるオポチュニティが存在すると指摘しています。セブにおけるスキルのミスマッチに対応し、AIが急速に発達する中、より価値の高いアウトソーシングサービスを提供できるような人材を育てるべく、ICT協議会、地方政府、教育機関などとの連携をさらに強めていく必要性があるとも述べています。
質の高い洗練されたアウトソーシング業務ですでに人気の高いセブですが、イロイロ、バコロド、ダバオやクラークといった都市も追いついてきているようです。
「メトロセブがアウトソーシングハブとしての魅力を維持するためには、家主、地方政府、地元のICT協議会の果たす役割は大きいです。セブが、外国のIT-BPM企業の投資先として注目を集め続けることが課題です。」とレポートでは強調されています。
2023年第1四半期、コリアーズによると、セブITパークとセブ・ビジネスパーク周辺地域にスカイライズ3B(Skyrise 3B)、フォースティナ・センター(Faustina Center)といったビルが完成したことで、41,400平米の新築オフィススペースが供給量に加わりました。
2023年全体では、2022年の89,800平米を下回る78,500平米の新築オフィススペースの完成が予想されています。2023年の残りの期間に完成予定のビルには、サウス・ロード・プロパティーズのイル・コルソ(Il Corso)、セブ・ビジネスパークのジョンドーフタワー(Johndorf Tower)、マクタンのMAHIなどがあります。
2023年から2025年までで、セブITパークとセブ・ビジネスパーク合わせて年間約91,300平米のオフィススペースの完成が予想されています。これは、同期間の新規供給の51%を占めることになります。一方で、2020年から2022年に完成した新規オフィススペースは、年間88,200平米でした。
2023年の第1四半期、メトロマニラ以外の地域のオフィス取引は29,200平米となり、前年同期の46,300平米から37%減少しました。一方で、セブでの取引は16,100平米で、地方取引の55%を占めています。
取引のほとんどはアウトソーシング企業によるもので、メトロセブで行われた取引の60%を占めました。このうち注目すべき取引としてはDexcom、BPO Seats、Cloudstaffによるもので、セブ・ビジネスパーク内のスペースを契約しています。
2023年第1四半期末時点、メトロセブの空室率は、期間内に完成した新築オフィススペースの影響で、2022年第4四半期の21.7%から上昇して23.2%となっています。
(出所:Philstar)
(画像:UnsplashのChristina @ wocintechchat.comが撮影した写真)
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