[フィリピン] メトロマニラのオフィススペース成約が2年ぶりに回復

2023/04/11


総合不動産サービス会社コリアーズによると、メトロマニラのオフィススペース取引は、アウトソーシング企業がハイブリッド型の働き方を実施するにあたってオフィススペースの合理化が懸念されるものの、増え続けています。



2022年、実際のオフィス成約面積が、オフィス退去面積を上回って、2年連続のマイナスからプラスに転じました。メトロマニラの新規供給は、POGO(フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者)前のレベルまで戻っており、アウトソーシング企業が需要を支えています。フレキシブル・ワークスペースが、ポストコロナのテナント企業のオペレーションにおいて重要な役割を果たしそうです。



コリアーズは、メトロマニラ内外のフレキシブルワークスペース事業者にとっては特にオポチュニティがあるとして、割安な賃料の高品質スペースを探している医療関連のアウトソーシング企業のスペース需要を取り込むべきだと提言しています。また、デベロッパーに対しては、メトロマニラの外にオフィススペースを求めるアウトソーシング企業との連携を密にすべきだと述べています。



HIMS事業者の拡大

2022年、コリアーズのデータによると、医療情報マネジメントサービス(HIMS)事業者によって23,800平米のオフィス取引があったということです。これは、メトロマニラのアウトソーシング企業による取引の9%に相当します。



主要なものとして、R1 RCMのケソンシティの取引、Tenet Healthcareのフォートボニファシオでの取引があります。コリアーズは、2020年から2022年でメトロマニラの平均賃料が全体で37%下がっていることから、これらの企業は、新築の高品質スペースと賃料修正を活用したのだろうと見ています。



コリアーズは、家主に対して、HIMS企業がメトロマニラの内外で今後さらなるスペース拡大・新規成約の可能性があるとして、同業界の需要をモニタリングしていくことを提言しています。



アウトソーシング企業のメトロマニラ以外の動きに注目

コリアーズのデータによると、2022年、メトロマニラ以外の地方で221,100平米の取引があり、2021年の取引面積113,100平米の2倍となりました。



特に、イロイロ、バコロド、ブラカン、ラグーナにおいて、アウトソーシング企業からの問い合わせが増えているということで、コリアーズはデベロッパー各社に対して、プロジェクトの引渡しスケジュールを全うするように提言しています。



上記地域以外にも、イリガン、ダグパン、ウルダネタ、マロロス、ジェネラル・サントス、タルラック、カバナトゥアン、プエルト・プリンセサといった主要地域のポテンシャルにも注視していく必要があるとしています。というのも、これらの地域は、フィリピンIT&ビジネスプロセス協会(IBPAP)によると、2025年までに「デジタルシティ」に変貌するポテンシャルの高いエリアと謳われているからです。



新規供給はオルティガスとケソンシティ中心

コリアーズによると、2022年に750,300平米の新規オフィススペースが完成しました。同社が2022年第3四半期時点で予測していた783,900平米から下がる結果となりましたが、これについて、デベロッパーが既存の建物の空きを埋めたり、地方政府(LGU)から認可が下りるのが遅かったりしたことを理由として挙げています。



2023年には、641,100平米の新規供給がある予測で、オルティガスCBDとケソンシティがその約半分を占めると見られています。



2023年から2026年にかけて、コリアーズは、新規供給が先細りし、2013年~2016年のPOGOが新興する前の年間450,000平米から550,000平米レベルに戻って、年間平均555,000平米ほどで推移すると予想しています。



オフィス取引は43%増加

2022年末で、マニラ首都圏のオフィス取引は603,800平米に上り、2021年に記録した422,400平米から43%増加しました。



エリア別に見ていくと、フォートボニファシオとマカティCBDが取引件数では最多でした。コリアーズは、テナント企業が、品質の高いビルが魅力的な賃料で市場に出ているのを活用したと分析しています。2022年第4四半期だけ切り取ると、オフィス取引は111,200平米と、第3四半期から34%減少しました。ほとんどの取引がオフィスの移転だったということです。



第4四半期の主な取引には、ケソンシティのR1 RCM、マカティCBDのADPフィリピン、オルティガスCBDのPwC、フォートボニファシオのCIMBの取引がありました。



2022年12月、フィリピン経済特区庁(PEZA)の報告によると、ITビジネスプロセスマネジメント企業 約786社が、100%在宅勤務を実施できるよう、BOIに登録を移管しました。



一方で、財政インセンティブ審査委員会(FIRB)は、より多くのIT-BPM企業が、税制上のインセンティブに影響を与えることなく、長期的にフレキシブルな働き方を採用できるようにするための締切を2023年1月31日まで延長しました。



コリアーズによると、地方取引の約70%がアウトソーシング企業によるものだったということです。取引の多かったエリアは、セブ、ダバオ、パンパンガでした。IBPAPは、今後6年間はアウトソーシング企業が成長を続けるとして楽観的な見方をしており、110万人分の雇用を創出し、うち54%は地方がその恩恵を受けると予測しています。

 


(出所:Business World Online

(画像:Unsplashのkate.sadeが撮影した写真)