2021/10/21
フィリピン政府のチーフエコノミストである、カール・ケンドリック・チュア経済開発庁長官は、より多くの経済活動が再開し、ロックダウンの制限が緩和または解除されることを前提に、今年の公式な経済成長目標である4~5%を据え置く考えを示しました。
カール・ケンドリック・チュア氏は、2021年10月13日、上院議員らに向けて、同時期にフィリピンの成長目標を下方修正した国際通貨基金(IMF)を例に挙げ、IMFより楽観的な見方を示していると話しています。というのも、今年行った強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)は、同じECQという言葉を使っていても、2020年に初めてECQを行った時とは、その厳しさに大きな違いがあるからです。
チュア氏は、最近、行動制限の緩和が進んでいることを受けて、「経済は、昨年のようにはならないでしょう。もちろん、引き続き改善していかねばなりませんが。」とコメントしています。
フィリピンは、2020年、域内でも最も厳しいCovid-19感染拡大抑制のためのロックダウンを行ったことで、戦後最悪の不況を記録しました。
チュア氏は、Googleのモビリティデータにも触れています。チュア氏によると、8月、9月に職場に出勤した人の数は、パンデミック前のレベルより20%低いだけだったということです。昨年は、半数が出勤しなかったとも付け加えています。
ワシントンに本拠を置くIMFは、2021年のフィリピンのGDPの成長予測を、前回の5.4%から3.2%に引き下げたばかりでした。インフレの高まりと、アジアでも最も高い失業率を考慮してのことです。
2021年10月12日に行われたメディア向けの会見で、IMFのチーフエコノミスト、ギタ・ゴピナート氏は、フィリピンが「(コロナ感染の)第2波に大きな打撃を受けたが、追加の補正予算を繰り出したことが回復に役立った」と述べています。
IMFの世界経済研究部長のマルハー・ナバー氏は、今年の後半期の回復は「浅いものになりそうだ」と話しています。というもの、7月以降感染が再増加し、パンデミック拡大の懸念が再燃したからです。
ナバー氏は、「フィリピンは、昨年の急激な収縮から脱却しようとしています。回復は進行中です。今年の経済成長率は3.2%を予想していますが、この予測の下方修正の理由は、第2四半期にパンデミックが悪い方向へと進み、感染者数が増加したからです。」と説明しています。
ナバー氏はまた、ワクチン接種と政策支援を続けることで、フィリピン経済の継続的な回復を助けられるだろうと述べています。「2022年の成長率は6.3%を予測しています。貿易相手国の景気回復にも支えられるでしょう。」
IMFの2022年の成長予測は、政府の7~9%という目標よりも低いものになっています。
一方で、NEDAのチュア長官は、厳しいロックダウンを行う度に、わずかな支援金を出すよりも、経済を再開させることが、失業やビジネス支援のためのより良い解決策となりうるだろうとコメントしています。
「回復、というのは、ビジネスが営業できるようにすることです。しかし、厳しい隔離措置を行ったことで、多くのビジネスに営業を許可できている状態にありません。厳しい隔離措置をこのまま続けたら、多くのためらいや不確実性が生まれるでしょう。」
「ビジネスを支援するためのより持続的な方法としては、まずは経済を再開させることです。すでに18か月も制限をかけてきました。再開できるようになったらすぐ、資金調達や補助金を必要としているビジネスなどが出てきますから、金融セクターに対応してもらうことができます。しかし、Bayanihan2のように資金提供だけして、経済の再開を制限してしまっては、鶏が先か、卵が先かの議論に陥ってしまいます。企業が活動しなければ、税収は減る、それでは、より対象を絞ってサポートをしようにも追加の収入がないのです。」
チュア氏はまた、「サポートは行います。しかし、そこに必要な条件は、経済の再開です。さもなくば、お金を使って生産性を上げることのできない企業や個人に、お金を突っ込んだり貸したりしているにすぎなくなってしまうのです。」とも述べています。
(出所:Business Inquirer)
(画像:Photo by Lance Lozano on Unsplash )
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