2020/05/01
[シンガポール] S-REITにより柔軟性を持たせる新措置
シンガポールの不動産投資信託(S-REIT)は、2020年4月16日に発表された新措置により、資金調達とキャッシュフローマネジメントに、より柔軟性を持つことができるようになります。
この新措置には、課税所得の分配期限の延長、レバレッジ比率の上限引き上げ、新しい法的規制の導入延期などがあります。目的は、新型コロナウィルス(Covid-19)流行から来る深刻な景気後退の中でREITに猶予を与えることです。
■課税所得の分配期限の延長
S-REITが課税所得の少なくとも90%を分配するための期限は、3か月から12か月(事業年度2020年の終了後)に延長され、「税の透明性」の対象となります。
「税の透明性」とは、S-REITがユニットホルダーに対して分配した所得に関しては課税されないという意味です。
この延長が適用されるのは、事業年度2020年の間にS-REITの課税所得から分配された分配金についてです。
事業年度が3月31日に終了したS-REITには、2020年度の課税所得の少なくとも90%を分配するために、2021年3月31日までの期間があるということです。
12月31日に事業年度が終了するS-REITについては、ユニットホルダーへ2020年度の分配を行うために、2021年12月31日までの期間があるということになります。
S-REITは通常ユニットホルダーに所得のほとんどを分配するため、手元資金が少ない傾向があります。今回の延長で、S-REITにはキャッシュフローマネジメントのための柔軟性が増えることになります。
シンガポール内国歳入庁が5月上旬までに、今回の変更点の詳細を提示することになっています。
■レバレッジ比率の上限引き上げ
もう一つの措置は、S-REITのレバレッジ上限を、45%から50%に引き上げることです。
シンガポール金融局(Monetary Authority of Singapore(MAS))によると、この措置は直ちに有効となり、S-REITが資本構成の管理する際に大きな柔軟性を得ることになります。
シンガポール証券取引所のグローバルセールス&オリジネーションヘッドのチュー・スタット氏はこのように述べています。「S-REITのレバレッジ上限の引き上げは、短期的な資本構成の管理という点では非常にタイムリーです。また、長期的にも、競争力を上げるという点でS-REITを成功に導いてくれるでしょう。」
「これは、強化された株式発行上限(Enhanced Share Issue Limit)*とともに、S-REITの資本調達を容易にし、与信枠の余力を残しておくことにつながります。」
*Enhanced Share Issue Limit
シンガポール証券取引所は、メインボードに上場する企業に対して、資本金の100%(自己株式および子会社株式を除く)を上限として持分割合に応じて発行される株式および転換社債の発行を承認する株主総会の承認を得ることを認めることとしました。従来は資本金の50%を上限としていました。同措置は、2020年4月8日から2021年12月31日まで有効となります。(出所:シンガポール証券取引所)
■新しい法的規制の導入延期
MASはまた、新しい最低インタレスト・カバレッジ・レシオ要件の導入を、2022年1月1日まで延期しました。これにより、利益およびキャッシュフローへのCovid-19流行の影響を和らげたい考えです。
レバレッジ上限の引き上げと、シンガポール証券取引所が発表した「強化された株式発行上限」により、S-REITは、銀行借入、社債の発行、株式市場での資本調達など、引き続き、異なる資金調達チャンネルへのアクセスが可能となります。
S-REITは、年次レポートおよび中間決算で、レバレッジ比率とインタレスト・カバレッジ・レシオを開示することが義務付けられます。
(出所:Straits Times)
(トップ画像:Frank Busch on Unsplash )
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