[トレンド] NFT×不動産:NFTは不動産の未来を形作るのか?

2021/10/22



社会とともに技術が進化を遂げるにつれて、生活のほぼすべての側面がバーチャルな世界へと移行しています。仕事や学校から会議や社会的な集まりまで、さらには集団で行うフィットネスクラスや結婚式までもが、コンピューターやスマホ、タブレットを通じて、自宅で快適に行うことができるようになっています。驚くべきことは、ここにNFT不動産物件の購入が加わることです。



NFTが「Non-Fungible Token(代替不可能トークン)」の略であることはすでに耳にされたことがあると思います。NFTがデジタルアート界に旋風を起こしたこともご存じでしょう。しかし、デジタル世界でしか購入できないブロックチェーン物件を購入することができると聞いたら驚かれるのではないでしょうか。


それだけではありません。NFT物件の中には、実際に存在する建物がついてくる場合があるのです。そして、これらデジタルの建物が、実際の物件のデザインや建設に大いに影響を与えることになります。


このようなバーチャル不動産が、不動産業界をどのように変えようとしているか、また、この動きに対応するためには何ができるのかを一緒に少し見ていきましょう。



1.バーチャル不動産トレンドとは?

2.バーチャル不動産vs.実物不動産

3.バーチャル世界が現実世界にどのような影響を与えているか

4.これらは何を意味するのか?
 



バーチャルNFT不動産現象


2020年後半、クリスタ・キム氏の「Mars House(マーズ・ハウス/火星の家)」というデジタルアート作品に、サザビーのオークションで50万ドル以上の値が付きました。「世界初のNFTデジタルハウス」の売却と言われています。しかし、これだけがホットなバーチャル不動産、つまり市場で一般的に「メタバース」と呼ばれているものではありません。


NFTのトラッキング(追跡)サイトである
NonFungible.comによると、Decentraland(ディセントラランド)の土地区画が283,567ドルで売却されており、Somnium Space(ソムニウムスペース)の不動産が50万ドル以上売却されたりしています。これらのメタバースの中で、人々はカジノに行ったり、友だちとダウンタウンの流行りのスポットに行ったりと、あなたが普段、実際の生活でやっていることと全く同じことをするわけです。


メタバースのタイプによって、そこに集まる人々も違います。ショッピングモールや美術館といった、コンテンツの充実したメタバースには、多くのデジタル上の「客入り」があります。現実世界で、若者は街へ、家族持ちは郊外に集まるのと同じようなロジックが、これらのバーチャル世界でも働いているのです。

 


遠くからつながりを求めて


2020年、Covid-19パンデミックにより外の世界の閉鎖が余儀なくされ、人々は新しく直面した孤独に苦しみました。そんな中、このようなメタバースへと目を向けて、他の人々と交流したり時間を過ごしたりしたのも驚きではありません。ゲーマーが、社会的なライフランとしてビデオやオンラインゲームにのめりこむように、テクノロジー中毒者や不動産愛好家は、このようなデジタル世界に投資し、参加することで、癒しを求めたのです。


クリスタ・キム氏は、マーズ・ハウスを一般公開し、このデジタル物件のバーチャルツアーも開催しています。2021年6月の5日間、クリスタ氏は、バーチャルリアリティのプラットフォームであるSpartial(スパーシャル)と提携して、チケット1枚200ドルで、マーズ・ハウスの45分間のガイドなしツアーを開催したりもしています。また、結婚式やその他バーチャルなプライベートイベントでマーズ・ハウスを「賃貸」できるオプションもあります。
 



すべての始まりはブロックチェーンと暗号通貨


ブロックチェーンと暗号通貨のコンセプトが一般に導入されたのは2008年でした。ビットコインやドージコインなどの暗号通貨は、仮想の元帳システムであるブロックチェーンに存在するデジタルの通貨です。米ドルやユーロといった現実の通貨を暗号通貨に換金することができます。各暗号通貨には、それぞれの為替レートが存在しており、国際通貨の為替と似ています。

 


ブロックチェーンNFT不動産

 
過去20年くらいで、人々の間にモバイル機器がすさまじい勢いで浸透したのと同じように、ブロックチェーンの技術と暗号通貨についても、同じようなトレンドが見られます。多くのブロックチェーン技術は、オンラインで発生する取引を安全に暗号化し保護する方法を提供しています。そして、人々が、生活の手段として、モノのインターネット(Internet of Things(IoT))にますます依存するのと同じように、ブロックチェーン技術も成長を続け、主流となる日は近いでしょう。
 


現代のIoTにおける機器の例には、IPアパートメント用インターコム、スマートフォン・スマートウォッチ、自動販売機、空調システムなどがあります。


デジタルスペースの新しいトレンドとしてバーチャル不動産を購入したり、投資したりするのは驚くべきことではないのです。SNSプラットフォームが出現したときのことを思い出してみるのも良いでしょう。プラットフォームが成功するのか、長続きするのか、懐疑論が持ち上がり、多くの人が一時的な流行りに過ぎないと言いました。しかし、それらのSNSが今はどうなっているでしょうか。同じようなブームがメタバースや他のデジタル不動産物件についても起こりうるのです。

 


バーチャル不動産vs.実物の不動産


バーチャル不動産は、実物の不動産と大差ありません。違うのは、メタバースに存在する家には「物理的に」住むことができない、ということだけです。ディセントラランドなどのバーチャル世界では、人々は現実世界でやるのと同じように活動します。例えば、芸術作品で自宅を飾ったり、友だちとぶらぶらしたり、アートギャラリーや美術館を訪れたり、イベントに参加したりするのです。現実の自分自身に近い、また時にはちょっと美化したようなアバターを持っています。


不動産についての知識がおありなら、バーチャル版の投資のアプローチもご理解いただけるでしょう。現実世界の不動産で多様な投資ポートフォリオを持とうとするのと同じようなことが、メタバースの物件についても言えるわけです。その発生期にありながらも、バーチャル不動産は、従来の不動産に匹敵する資産クラスになろうとしているのです。

 


バーチャルと現実の不動産の類似点


現在、メタバースで最も人気の物件は、ダウンタウン地区にあるものです。メタバースにコンテンツがあればあるほど、ダウンタウンもにぎやかで、その分値段も張ってきます。ニューヨークやロサンゼルスといったメトロポリタンエリアの不動産が、周辺の郊外エリアよりも高いのと同じコンセプトが、デジタル不動産についても当てはまるのです。よって、これらのバーチャルスペースのデベロッパーたちは、それぞれのバーチャル都市の建築や個性に細心の注意を払っています。


最後に、どちらの不動産タイプも、ひとつ大きなものが共通しています。「希少性」です。各メタバースには、限られた数の「区画」しかありません。基本的には、普通の土地区画のようなものですが、NFT世界に存在しています。よって、人気のメタバースには、高額の値札がついてくるのです。人気商品だけれど、欲しい人全員には行き渡らないからです。さらに驚くべきことに、高額のバーチャル物件の中には、金利が発生する住宅ローンがついているものもあります。それだけではありません。オーナーは、バーチャル住宅をテナントに「賃貸」することもできるのです。唯一の違いは、メタバースでは、このような金銭面での意思決定は、ディーファイとも呼ばれる分散型金融ソフトウェアに基づくことです。これは、ブロックチェーンをベースとした金融プログラムで、自動ワークフローを用いて消費者のスマートな金銭面の意思決定を助けるのです。
 


2つの世界の融合


バーチャル物件と実際の物件があまりにも似ているので、NFTに実際の家がついてきたという事件もあります。カリフォルニアの不動産エージェント、シェイン・ダルジェロフ氏は、デュプレックスを購入・改装して、グラフィックデザイナーに依頼してそのデジタルレプリカを作成してNFTに換えました。そのNFTを購入した人は、そのアート作品の元となった住宅も手に入れています。

 

「アートというよりは、このようなプラットフォームを利用して住宅を販売する私たちの重要性なのです。そのアートが持つ重要性とは、暗号プラットフォームを通じて直接購入した最初の家であるという生きた証として、それがあなたのデジタルウォレットに、永遠に保存されることなのです。そこに真の価値が存在します。」とシェイン・ダルジェロフ氏は語っています。
 



バーチャル不動産の利点


バーチャル世界にはもう一つの利点があります。世界中から友だち(そして敵も)が集まるプラットフォームであるという以上のものです。


これらのスペースに物理的に「存在する」ことは誰にもできませんが、メタバースが現実スペースに大きく勝る利点とは、より多くの人にリーチできるということです。これは、広告会社や大手企業にとって、商品やサービスを普段逃してしまっている客層に売り込むためのゲームチェンジャーです。


例えば、台湾IKEAは、「あつまれ どうぶつの森」のゲーム内でカタログを再現、ゲーム内の家具広告を活用しています。これは、ビデオゲーム内のIKEA風の無人島と自社のプラットフォーム/店舗とのリンクを作ることで、現実生活ではIKEA製品を買わないような客層も掴んでいます。



パンデミック後もワークフロムホームはしばらく続きそうなことから、社会との関わりの主な方法として、これらのバーチャル空間への依存が進むかもしれません。さらに、ミレニアルや若い世代は、オンラインショッピングやバーチャル品の購入とともに成長していますから、メタバースのトレンドも自然と進化してくるでしょう。これらのメタバースに物件を所有するのには数十万ドルかかることもありますが、インターネットアクセスさえあれば、プラットフォームに入ることができるので、販売側にとってもオーディエンスのさらなる拡大につながります。
 



バーチャル世界が現実世界にどのような影響を与えているか


Covid-19パンデミックが不動産市場にもたらした大きなトレンドのひとつがバーチャルツアーです。対面でのツアーは安全ではないということで、不動産オーナーは、見込みバイヤーや借り手に、自宅から快適・安全に、物件をオンラインで内見できるようにしたのです。


しかし、メタバースのトレンドの盛り上がりが、さらなるオポチュニティを開花させたらどうでしょうか。建築家らはすでに、グラフィックデザインソフトウェアを用いて、新しい建築物のリアルな描画を作成しています。


これらのメタバースは、テナントが本当に必要としている建築デザインやアメニティについて、不動産デベロッパーや建築家にリアルタイムのインサイトを与えてくれることになるでしょう。ある意味、バーチャル空間が、実世界にもいずれ存在しうる、クラウドソースの不動産物件の描画となりうるのです。そして仮想空間には、いまのところゾーニング規制などがありませんので、実際の不動産を作る際の様々なひらめきを与えてくれるような、消費者の創造力が自由に発揮できるのです。


このNFT不動産の高まりは、単なる一時的な流行以上のものであることを証明してくれるかもしれません。今後の不動産に革命を起こす可能性があります。これらのメタバースに人々を住まわせることで、ハイテク革命とハイタッチなパーソナライゼーション(個人化)とを結びつけることにつながるのです。今のところ、ゼロから「夢のマイホーム」をデザインできる人はほんの一握りの人々ですが、これらのメタバースが、夢を一般大衆がアクセス可能かつ達成可能なものにしたらどうでしょうか。


 

これらが意味するところはなにか?


このNFT不動産の高まりにあなたがどういった見方をしているかにかかわらず、一つ確かなことがあります。テクノロジーが不動産の未来を動かしているということです。ご存じのとおり、不動産は最も古くからある産業の一つで、すぐにどうこう変わるというものでもありません。人間が世界に暮らし続ける限りにおいて、不動産ニーズが存在するのです。


私たちのテクノロジー依存型の社会についていくためには、不動産テックに投資する時期です。不動産テックに投資をすることで、あなたの物件が、ますます技術の進歩が進む未来により迅速に適応する助けになるのです。

 


時代遅れにならないために不動産テックに投資する


テクノロジー、特にクラウドベースのテクノロジーの、最大の利点は、お互いに統合できる能力です。スマートロックやビデオ付インターコムといった不動産テックの機器はすでにインターネットに接続されています。そして、ほとんどの入居者情報、物件情報は、NFTが依存するソフトウェアである、安全なブロックチェーンに移管できます。したがって、物件のあらゆる面に不動産テックを導入することで、競争の一歩先を行くことができるのです。


近い将来、すべての不動産テック機器および不動産管理システムが、一つのデータベースに統合され、そのもとで運営されることになると言われています。今はまだあり得ないことのように見えますが、メタベースでちょっとクリックするだけで、自分のマイホームの改造を行える日がくるかもしれません。不動産テックがもたらすあらゆる機能や自動化をご自身の物件に適応させることで、未来に備えていく必要がありそうです。




(出所:ButterflyMX

(画像:Image by Gerd Altmann from Pixabay )