コロナにおけるフィリピン不動産市場の状況と対策(2020年〜2021年)

2021/03/20

2020年から始まったコロナ禍(Covid19)は東南アジアの不動産セクターその中でも特にホテル、商業、オフィスに大きな影響を与えた。

また同時に住宅セクターにおいても、リモートワーク、ソーシャルディスタンスの推進において働き方の変化が加速する中で、ローカルの住宅ニーズにも変化が現れている。

2021年に入り、東南アジアの主要国ごとの経済から不動産市場の動向までまとめた。

フィリピンにおけるコロナ禍での経済

フィリピン経済

この国は、世界で最もダイナミックな経済の1つといわれる。経済は、OFW(海外で働くフィリピン人)からの安定した海外送金と良好な労働市場に支えられた強い消費者需要がある。この国はまた、中産階級の成長、急速な都市化、そして平均年齢24歳からわかるとおり多くの若い人口を抱えている。

フィリピン主要産業

フィリピンの経済は第一次産業及び食品加工に基づいてきた。セメント、鉄、鋼の生産も盛んだ。近年、電気通信も発展しており多くの地域で携帯電話やスマートフォンが使えるようになりつつある。また豊富な労働力を活かしたサービス産業及びBPO(IT、コールセンター、バックオフィスのアウトソース)が主要産業になってきていることが特色だ。

GDPトラックレコードと予測https://www.statista.com/statistics/578705/gross-domestic-product-gdp-growth-rate-in-philippines/フィリピン経済は2010年代以降東南アジアのライジングスターと呼ばれるほど、過度なインフレを抑えながら堅調に成長してきた。しかし、2020年3月中旬から2ヶ月に渡って対策を取られた、「ロックダウン」(隔離措置)により消費が非常に落ち込んだ。またその後に渡っても現在もGCQと呼ばれる「セミロックダウン」と呼ばれる状態にあり高齢者の外出禁止、学校授業のオンライン化等で東南アジアで最高の落ち込み幅となった。

2021年以降は東南アジアの中でベトナムに次ぐ7%を超えるGDP成長率が予測されている。

不動産予測で最も重要な指標「人口増減」

これはコロナに関わらず国際連合も2100年までの予測値を出しているが、あらゆるシンクタンクや学術機関で不動産価格の将来予測は人口増減に影響を受けると述べられている。

フィリピンは東南アジアにおいて最も生産年齢人口増加が続く国であり、現在既に1億人を超える人口からわかるように、経済圏で大きな労働力を有している。本グラフでは2025年までが出ているが年間170万人ほど増加していくことがわかる。

国連のデータをもとに作成

コロナでフィリピン政府が行った不動産セクターへの施策

フィリピン政府は以下の2つの施策を行った。

•2020年4月から3ヶ月間 新築販売の支払債務の延期を許諾

これは新築マンション等の販売において、フィリピンで一般的な分割払い支払いの支払い債務の延期を許可させる施策である。この施策により、支払いに充当予定であった既に新築販売会社に送付済の先付け小切手の換金の猶予が与えたれたり、支払い遅延した場合でも、遅延損害金が発生しない状況となった。

•ローンの支払、賃料について30日の猶予(ECQ期間内はずっと) 2020年5月15日に終了

ECQというのは、フィリピンで最も厳しい「ロックダウン」を意味しており、2020年3月16日〜5月15日に2ヶ月間に渡ってローン支払いや賃料の免除措置があった。これはいわゆるレンタルリリーフと呼ばれる政策であり、日本では実行されなかった。(日本は特定の産業において給付金という形式をとった)

サブセクターごとの状況

レジデンシャルセクター(住宅)

以下2020年第三四半期における首都マニラ都市別住宅の供給状況と新規の供給予定のグラフである。現在40万戸の住宅が供給(確認)されており、1,300万人の人口を要する首都マニラはスラム街もおおく、圧倒的に住宅が不足していることがわかる。その中で旧首都であり、広大な住宅地を要するケソン市が最も多くの住宅数があり、金融の中心地であるマカティ市、新興のビジネス中心地であるBGC(ボニファシオグローバルシティ)があるタギッグ市が続く。

一方で、将来の供給計画に置いては空港から近い埋立地の新興開発街区を含むパサイ市に多くの供給予定がある。パサイ市の一部はベイシティと呼ばれるフィリピン最大手の財閥SMグループの本拠地でありカジノエリアでもある。

コロナにおいて観光客やカジノ産業の住宅需要の落ち込みが見られることから今後本エリアの調整は避けられないものと考えられる。

また将来の価格予測では、パッシグ市、マンダルヨン市、パラニャケ市が価格上昇が期待できるエリアとなっている。パッシグ市とマンダルヨン市は第二の規模のビジネス街区であるオルティガスセンターを抱えており、既に利便性の高いエリアである。

オフィスセクター

オフィスについては一定コロナの影響を受けたと言える。多くの外資系企業が東南アジアのヘッドクオーターとしてフィリピンマニラを選択してきていたことからわかるように、英語圏であり安価な労働力のフィリピンはとても魅力的な拠点である。

オフィスにおいてはBGCがあるタギッグ市、マカティ市、オルティガスがあるパッシグ市の順番で今後の供給がされる予定である。

マニラのオフィスの平均の利回りでは表面で5.6%程度となっている。



日本とフィリピンの関わりのまとめ

日本はフィリピンで2番目に大きな貿易相手国であり、貿易総額は200億2000万ドル。 DTI(フィリピン貿易産業省)に掲載されているプロジェクト例: 三菱商事(7600万ドル) 商船三井(530万ドル) 伊藤忠商事の子会社、ドールフィル(19.2百万ドル) イセ食品(2億5000万ドル) 住友電装株式会社(4600万ドル)がある。今後も密接な関わりが期待される。

本記事は2021年1月に放送した以下の不動産学校での放送を要約したものです。



執筆 風戸裕樹 Property Access 株式会社 代表取締役