2023/09/19
総合不動産サービス会社コリアーズは、フィリピンの不動産市場全般と同様に、マニラ首都圏のオフィス市場にもポジティブなトレンドがあると述べています。
コリアーズによると、マニラ首都圏では、2023年前半に取引活動が改善し、契約更新をしない動きが鈍化したことで、オフィス空室率はわずかに低下しました。
賃料の回復度合いは、マニラ首都圏中でもエリア(サブマーケット)によってばらつきがあるものの、マカティ中心業務地区(CBD)、フォート・ボニファシオ、オルティガスCBDでは賃料の回復が見られているということです。
第2四半期の成約面積も同様に改善しました。主に、取引量の増加にスペース退去の動きの鈍化が重なりました。
こうした市場の新しい動きにより、コリアーズは、今年末までの純成約面積は増加すると予想しています。一方で、2023年後半には供給量が増えることから、空室率は依然として高止まりすると予想しています。
コリアーズでは、現在のテナント寄りの市況を踏まえ、地主とテナントは引き続き機会を捉えるべきだと考えています。
テナント企業は、不動産戦略において「価値への逃避」やフレックス・ワークスペースの導入を検討する可能性があるでしょう。
一方で家主は、ESG(環境、社会、コーポレート・ガバナンス)やDE&I(多様性、公平性、インクルージョン)への関心が高まる中、テナント企業と協力してオフィスの改装を行い、ビルのアメニティや共有スペースにこれらの要素を取り入れることで、企業と従業員の価値観を一致させることができる。
従業員のエンゲージメント、人材確保のための職場への投資
職場と労働力の変革が進む中、コリアーズは、企業がステークホルダーとの継続的な対話を促進し、ベストな働き方、優秀な人材の確保や留保に必要なものを見極める必要があると指摘しています。
オフィスを、従業員(特に新入社員)のエンゲージメントにとって重要な場だと考える企業は依然として多く、オフィスを採用ツールや研修フロアとして利用して自然と人が集まるよう促す企業が増えているようです。コリアーズは、DE&IやESGへの関心が高まる中、企業は、こういった点をワークプレイス戦略やデザインに反映させることで、差別化や人材の確保に役立てられるのではないかと提案しています。
WFHとRTOのギャップを埋める地方戦略
コロナ関連の制限が解除され、職場復帰(Return to Office/RTO)をするにあたって従業員の懸念事項の一つが、マニラ首都圏の本社に戻るための費用です。完全にRTOを実施すると、従業員の離職リスクが高まり、企業にとって大きな負担となります。
コリアーズは、このような地方出身の従業員の離職リスクに対応すべく、地方に拠点を開設することは、従業員の在宅勤務(WFH)とRTOのギャップを解消する有効な戦略かもしれないと提言しています。
2023年下半期に大幅な供給
コリアーズによると、2023年第2四半期、サンフアンのPrimex TowerとベイエリアのParqal Building 1-9の竣工により、80,400平方メートルの新規オフィススペースの引き渡しがありました。
2023年全体では、66万8,400平方メートルのスペースが竣工を迎える予想です。うち、2023年後半に供給されるのが53万8,900平方メートルで、このうちの3分の2を、フォート・ボニファシオ、オルティガスCBD、ケソンシティが占めるとみられています。
コリアーズのデータによると、2023年から2025年にかけて、年間49万2,400平方メートルのオフィススペースが完成する予定です。この数値は、オフィススペース建設が、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター(POGO)の需要に大きく影響された2017年から2019年にかけての年間竣工面積100万平方メートルの半分に過ぎません。
取引は5%減少
また、2023年上半期のマニラ首都圏のオフィス取引面積は、前年同期比5%減の30万6,000平方メートルでした。政府機関、電話通信会社、保険会社、フレキシブル・ワークスペース事業者を含む従来型の企業の取引面積は12万5,700平方メートルでした。
2023年第2四半期の取引の大半を占めたのは、アウトソーシングおよびシェアードサービス企業で、7万3,000平方メートルでした。多くのアウトソーシング企業が現在も積極的に事業を拡大しており、ハイブリッド型業務形態にもかかわらず、マカティCBD、フォートボニファシオ、オルティガスセンターの高品質な新しいタワーに移転し、質への逃避戦略を展開しています。
サブマーケット別では、2023年上半期の取引件数では、ベイエリア、オルティガスCBD、マカティCBDが最も多く、マニラ首都圏のオフィス取引全体の57%を占めました。
2023年上半期の注目すべき取引には、ケソン市のTelus、24/7 Intouch、Reed Elsevier、アラバンのIGT Solutions、マカティCBDのChevron、Opentext、サンファン市のTransparent BPO、運輸省(Department of Transportation (DoTr))などがありました。
持続的な地方取引
2023年第1四半期の主要な地方エリアにおける取引面積は60,400平米で、前四半期の29,300平米から増加しました。
2023年上半期では89,700平米で、前年同期の90,700平米からわずかに減少しました。アウトソーシング企業を中心に、地方取引全体の48%を占めたのはセブで、続いてパンパンガ(26%)、ダバオ(11%)でした。
コリアーズは、マニラ首都圏のオフィスセクターの上昇は年内も持続すると楽観視しています。マニラ首都圏以外の主要なオフィス拠点が引き続き取引を記録する一方で、現物スペースを占有するテナント企業のプロフィールは多岐にわたっています。楽観的な企業の景況感と堅調なマクロ経済成長予測が、今後12ヶ月間の企業の事業拡大を下支えするだろうと述べています。
(画像:Unsplashのkate.sadeが撮影した写真)
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