2021/07/15
[フィリピン] パンデミックの2020年、デベロッパー各社の業績は
パンデミックにより人々の生活や事業活動が制限され、損失を被った業界が少なからずありました。不動産セクターもその例外ではありません。コミュニティ隔離措置により、建設、マーケティング、販売を含む不動産活動全体が減速しました。
このように、コロナウィルス感染拡大抑制のための措置が成長の足を引っ張る形になりましたが、不動産会社は回復力を見せています。2020年後半に制限措置が緩和され、回復は明らかになりました。フィリピンの不動産デベロッパーの2020年の実績を見てみましょう。
SM Prime Holdings, Inc.(SMプライム・ホールディングス)
2020年純利益:180億ペソ(約396億円)
シー財閥率いるSMプライム・ホールディングスは、2016年Lamudi社のフィリピン不動産デベロッパー規模ランキングで首位を獲得、2020年も引き続き業界をリードしています。しかし、パンデミックの爪痕は確かに刻まれています。
2019年の純利益が381億ペソ(約838億円)だったのに対し、2020年の純利益は53%減の180億ペソ(約396億円)となりました。最も減益幅が大きかったのは、モール収入で、2019年には578億ペソ(約1,272億円)だったのが、2020年には236億ペソ(約519億円)にまで減少しました。しかし、コロナの大幅な財務への影響にもかかわらず、他のセグメントはかなり好調でした。
例えば、SMデベロップメント・コーポレーションが行うレジデンシャルセグメントの収益は、2019年の437億ペソ(約691億円)から6%増の465億ペソ(約1,023億円)を記録しました。一方で、商業不動産ビジネスもまた、2019年の46億ペソ(約101億円)から48億ペソ(約106億円)と増収となりました。
SMプライム・ホールディングスの現在進行中のプロジェクト:
サンズ・レジデンシーズ、ミント・レジデンシーズ、ジェム・レジデンシーズ、サウス2レジデンシーズ(高層レジデンシャル開発)
▶SMプライム・ホールディングスのアニュアルレポート(英語)
Filinvest Development(フィリンベスト・デベロップメント)
2020年純利益:115億ペソ(約253億円)
ゴティアヌン財閥の率いるフィリンベストは、2020年に115億ペソ(約253億円)を稼ぎ出しましたが、2019年の159億ペソ(約350億円)から27.6%減となりました。SMプライムと同様、モールの賃料収入が、スランプに大きく効いています。しかし、フィリンベストはパンデミックの期間もビルの運営を続け、オフィス賃貸は成長しました。
銀行部門であるイースト・ウエスト・バンキングは、64億ペソ(約141億円)の貢献をし、2019年の純利益への貢献度から4%伸ばしました。
フィリインベスト・デベロップメントの現在進行中のプロジェクト:
ミラ・バレー&ヴァレ・ドゥルセ(住宅地プロジェクト)、アクティーヴァ・フレックス(高層レジデンシャル)
▶フィリンベスト・デベロップメントのアニュアルレポート(英語)
Megaworld Corporation(メガワールド・コーポレーション)
2020年の純利益:106億ペソ(約233億円)
タン財閥が所有する不動産会社、メガワールドの2020年の純利益は106億ペソ(約233億円)でした。去年の192億ペソ(約422億円)から約45%減となりました。オフィスビジネスは弾力性を見せ、2020年の賃料収入は104億ペソ(約229億円)と2019年とほぼ同等レベルでした。
2020年の第4四半期は、回復の兆しを見せて、その他のビジネスセグメントも対前四半期で伸びました。予約販売は対前四半期で85%増、ライフスタイルモールは24%増、ホテルは25%増となりました。
メガワールドの現行のプロジェクト:
ベルモント・ホテル・イロイロ(ホスピタリティ)、アーデン・ボタニカル・ビレッジ(住宅地プロジェクト)、ワン・マンハッタン(高層レジデンシャル)、メイプル・グローブ(タウンシップ)
▶メガワールド・コーポレーションのアニュアルレポート(英語)
Ayala Land, Inc.(アヤラランド)
2020年純利益:87億ペソ(約191億円)
アヤラランドの2020年純利益は87億ペソ(約191億円)で、対する2019年は332億ペソ(約730億円)でした。しかし、2020年の第3四半期から第4四半期にかけて28%を記録し、コロナによってもたらされた不況から復活する兆しを見せています。販売予約は819億ペソ(約1,802億円)で、2019年の56%程度となりました。
モール収入は第4四半期に対前四半期で10%増の17億ペソ(約37億円)となりました。一方で、観光省が立ち上げた国内の「トラベルバブル」がホスピタリティ部門の回復に効いて、対前四半期で52%増となりました。
アヤラランドの現在進行中のプロジェクト:
クレッセンド&サウス・コースト・シティ(ビジネス地区)、アロジス(物流施設)、ワン・ヴェルティス・プラザ(オフィスビル)
Vista Land & Lifescapes, Inc.(ビスタランド&ライフスケープス)
2020年純利益:64億円(約141億円)
ビジャール家率いるビスタランドの2020年純利益は64億ペソ(約141億円)で、2019年の116億ペソ(約255億円)から45%減となりました。パンデミックによる打撃を大きく受けたにもかかわらず、予約販売は2020年第2四半期から第4四半期で37%増となり、コロナ前の70%レベルまで回復してきています。賃貸ビジネスも弾力性を見せ、95%の総床面積が稼働中です。
海外で働くフィリピン人労働者からの送金額が今後伸びてくる予測があることから、同社は、不動産セクターについて楽観的な見方を維持しています。
ビスタランドの現在進行中のプロジェクト:
キズナ・ハイツ、スカイ・アーツ・マニラ、ビスタ・プワント、シンフォニー・タワーズ、パイン・クレスト(高層レジデンシャル)
▶ビスタランド&ライフスケープスのアニュアルレポート(英語)
Robinsons Land Corporation(ロビンソンズ・ランド・コーポレーション)
2020年純利益:52.6億ペソ(約116億円)
ゴコンウェイ家の不動産会社ロビンソンズ・ランドの純利益は52.6億ペソ(約116億円)となりました。2019年の86.9億ペソから39%減となりました。レジデンシャルユニットや土地区画の販売などの開発ポートフォリオはパンデミックの期間も堅調で、30%増の122.6億ペソ(約270億円)を記録し、モール、オフィス、ホテル、工業用地などの投資ポートフォリオの38%を補う形となりました。
第4四半期は着実な回復の兆しを見せ、純利益は対前四半期で20%増の8.6億ペソ(約19億円)となりました。
ロビンソンズ・ランドの現在進行中のプロジェクト:
シエラ・バレー・ガーデンズ&ザ・ヴェラリス・レジデンシーズ(高層レジデンシャル)、フォーブス・エステーツ(住宅地プロジェクト)
DMCI Homes(DMCIホームズ)
2020年純利益:14億ペソ(約31億円)
インフラ系コングロマリットのDMCIホールディングスの不動産部門であるDMCIホームズは、2020年14億ペソ(約31億円)の純利益を上げ、2019年の31億ペソ(約68億円)から55%減となりました。ボラカイ島のホテルサービスがパンデミックの影響で大幅減益になったことに加えて、建設活動おおよびユニットの引き渡しの遅れ、建設費用の高騰などが収益減の要因となりました。
しかし、2021年第1四半期は、前四半期の約2億ペソ(約4億円)の損失から898%増の16億ペソ(約35億円)の純利益を出し、回復の勢いを加速させています。(出所:DMCIホールディングス)
DMCIホームズの現在進行中のプロジェクト:
アレグラ・ガーデン・プレイス、ブリクストン・プレイス、ザ・カムデン・プレイス(高層レジデンシャル)
▶DMCIホールディングス(親会社)のアニュアルレポート(英語)
Century Properties(センチュリー・プロパティーズ)
2020年純利益:11.5億ペソ(約25億円)
アントニオ家率いるセンチュリー・プロパティーズは、2019年の純利益から22%減の11.5億ペソ(約25億円)を記録しました。しかし、この減益幅は同社が想定・準備したレベルだということです。アフォーダブル住宅とオフィス賃貸は2020年もその強みを発揮し、純利益の93%に貢献、2019年から43%増となりました。
センチュリー・プロパティーズの現在進行中のプロジェクト:
ザ・リゾート・レジデンシーズ・アット・アズール・ノース(高層レジデンシャル)、バトゥラオ・アートスケープス(住宅地プロジェクト)
不動産活動は減速したものの、各社とも何とか営業を続けて、革新を受け入れ、特定のビジネスは回復力を見せています。全体として、この厳しいコロナ禍における不動産各社の実績は力強く、業界の安定性を示す形となりました。
(出所:Lamudi、各社ウェブサイト)
(画像:Photo by Firmbee.com on Unsplash )
※日本円表記は、1PHP=2.2円で換算しています
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