2020/05/07
[フィリピン] ポストコロナも不動産は持ちこたえる
フィリピンで急成長中の不動産コンサルタント会社ロビエン・リアルティ・グループ(LRG)のリサーチによると、新型コロナウィルス(Covid-19)の流行は世界中の多くの国々の経済成長に悪影響を与え、アジアパシフィック地域の国々も例外ではありません。
▼2019年時点のメトロマニラのオフィス需要内訳(出所:Lobien Realty Group)
メトロマニラのオフィス需要は、ゲーミング(POGO)が36%、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)が30%、その他が34%となりました。
2020年の第1四半期、中国の経済成長はCovid-19の影響で-0.91%となりました。インドネシア、シンガポールもともに‐0.26%となっています。世界銀行はそのレポートで、タイやマレーシアといった東南アジア諸国はどのように損失を埋めていくか戦略を立てる必要があると述べています。一方で、ベトナムは経済活動のマイナスを平均以下で抑えそうです。
フィリピンでは、メトロマニラおよびその他の地域で強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)が続いており、まだCovid-19との戦いに勝利したとは言えない状態です。統計によると、メトロマニラ(マニラ首都圏/NCRとも呼ばれる)の感染者数が最大で、続いてカラバルソン(カヴィテ、ラグーナ、バタンガス、リサール、ケソンから構成される地域)と中部ルソン島が続きます。
ロビエン・リアルティ・グループは、フィリピンの各州における主要なビジネスハブについて、オフィススペースの賃料が比較的安いので、メトロマニラを離れて、これらの地方ハブに移転するビジネスもありそうだと考えています。
Covid-19流行のフィリピン経済への影響は多大です。グローバル予測・定量分析レポートを提供するオックスフォード・エコノミックスによると、フィリピン経済の成長予測は、当初の5.9%から3.9%に下方修正される可能性があります。LRGは、フィリピンの不動産業界は特に、Covid-19の影響をまともに受けていると言います。ウィルスの流行により、ほとんどの事業活動にストップがかかってしまっているからです。これには、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO)、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)、昔ながらのオフィスも含まれています。POGOは、2016年から114万㎡のオフィススペースを占有してきました。BPOは、2019年には記録的な400,000平米のオフィス新規成約面積を誇っています。昔ながらのオフィスもまた2019年に370,000平米をリースしました。
■メトロマニラのオフィス
メトロマニラで賃貸可能な供給量も賃料は上がってきています。平均賃料は9%上昇、平米あたり1,060ペソ(約2,228円)から1,160ペソ(約2,437円)となりました。2020年、900,000平米の新規オフィススペースが市場に投入されることになっており、3月時点ですでに350,000平米が、様々な業種によりリースされました。
しかし、Covid-19がオフィス市場を大幅に減速させており、メトロマニラではその影響が顕著になっています。LRGは、政府が実施している渡航制限とECQ(強化されたコミュニティ隔離措置)の延長により、POGOの拡大もある程度減速するだろうと予測しています。POGOの貢献分が8億ペソ(約16.8億円/GDPの約0.2%)減ることが予想されているため、POGOの2020年のオフィス需要は200,000平米ほど減少するとみられています。BPOもまた大きくダメージを受けていますが、新しい政府のインフラプロジェクトが行われ新興する地方のビジネスハブに、競争力のある賃料と安い労働力を求めて、代替のロケーション探しに入るでしょう。また、昔ながらのオフィスは、諸経費をおさえられる在宅勤務のオプションを検討するでしょう。
LRGは、Covid-19の感染拡大が、2020年後半期までには封じ込められる前提で、メトロマニラのオフィススペース需要は、2021年までには改善してくる可能性があると予測しています。既存・新規のPOGO事業者やBPOが国内で成長を続けるにつれ、2021年後半には復活するでしょう。LRGは、自国でのパンデミックの影響と戦うべく、世界的に企業がビジネスをアウトソースする方向に動くと予想しており、BPOセクターからの需要はさらに高まる可能性があると考えています。
■地方オフィス
現在、地方の業務地区全体で空室率は15%ほどとなっています。2020年、地方市場には、257,000平米の新規オフィススペースが投入される予定になっています。2020年3月時点で、36,000平米がすでにリース済みとなりました。リースした業種は様々です。地方のビジネスハブの平均賃料は、平米あたり606ペソ(約1,273円)で、メトロマニラより手ごろとなっています。
■レジデンシャル
2020年、メトロマニラのレジデンシャル供給に15,500ユニットが追加されることになっています。国内外の投資家に影響を与えている渡航制限により、成約率は鈍化するでしょう。建設中のコンドミニアムユニットの多くは、中間価格帯(600万~900万ペソ(約1,260万円~1,890万円))向けとなっています。セカンダリー市場の価格は、市場価格と連動して下がる見込みです。市場がECQからどのように立ち直るかによっては、価格上昇も不活発となるでしょう。地方間の移動制限と失業増による需要減傾向がさらに強まる可能性もあります。
新築、今後建設予定のレジデンシャル物件の価格は、ECQ前の水準を保つでしょう。余裕がない不動産オーナーは流動性を求めて保有資産を売却するので、セカンダリー市場には成長の余地がありそうです。
■リテール
ルソン島のECQの影響を直に受けたのはリテールです。必要不可欠な日用品の消費は増えましたが、必要不可欠でない物品および業種は販売が落ちて厳しい状態となっています。
結果として、今年の大半は、Eコマースが消費財とリテール産業をリードすることになりそうです。ショッピングモールは、ECQが終了したら、モールの消毒、スタッフと顧客の衛生/ソーシャルディスタンシングに関してより厳しい措置を実施することで、徐々に回復してくるでしょう。
■観光・ホスピタリティ市場
ECQの開始以来、メトロマニラのホテル稼働率は、2019年第3四半期の74%から35%まで急落しました。LRGは、観光・ホスピタリティ業界はポストコロナに再び活性化するが、一定期間内に宿泊できるゲストの人数などに関して新しい規制が実施される可能性があると予想しています。衛生管理がしっかりしていることが、顧客が滞在先などを選ぶ際の決め手のひとつとなりそうです。
Covid-19の流行は紛れもなく不動産業界に影を落としましたが、LRGは時期が来れば回復すると予想しています。政府、事業者、そしてフィリピン国民が一丸となってウィルスに立ち向かうことで、Covid-19が過去の悪夢となる日も近づくでしょう。この経験から学んだことがちゃんと生かされさえすれば、LRGは不動産業界とフィリピン経済の将来については楽観的な見方を保っています。
(出所:The Manila Times)
(トップ画像:gerard fontanilla from Pixabay )
もっと詳しく知りたい方はこちら