[フィリピン] レジデンシャル市場は今:変わる需要に対応しつつ回復中

2022/03/29


新型コロナウイルスの感染者数がゆっくりと減少し、制限も緩和されつつある中、フィリピン不動産は、すべてのセグメントにおいて見通しが明るくなってきています。レジデンシャルは特に、変わる需要に対応し、新しいオポチュニティに近づき、回復を始めています。




2022年1月に行われたウェビナーで、不動産サービス会社ジョーンズラングラサール(JLL)フィリピンのリサーチ・コンサルタント業務ヘッドのジャンロ・デ・ロス・レイェス氏は、市場は、レジデンシャル・コンドミニアムを中心に改善してきており、2021年第4四半期に制限が緩和され、オフィスに戻る人が増えて、6.8%から5.1%へと大幅に減ったことについて触れています。



デ・ロス・レイェス氏は、オフィスに戻ることが増えたことで、ビジネスハブで働く会社員の需要が増えたとコメントしています。このような会社員が、賃貸契約を再開したり、職場の近くの滞在先を探したりしているようです。



空室率については、JLLは、中所得層向けセグメントが改善しており、賃料は平米当たり720ペソ(約1,695円)に上がりました。一方で、上流、高級セグメントはやや空室率は高めで、賃料は平米当たり1,015ペソ(約2,390円)程度となっています。



価格についてはまちまちです。JLLによると、中所得層向けおよび高級セグメントの即入居可物件の価格は、上昇傾向です。高級セグメントのプレセールの価格も上がっているようです。一方で、中所得層向けのプレセール価格は下がっています。

 



さらに、価格設定については、フィリピン中央銀行( Bangko Sentral ng Pilipinas (BSP) )レジデンシャル不動産プライスインデックス(RREPI)は、2021年第3四半期、2四半期連続で減少した後に、対前年同期で6.3%上昇しました。レジデンシャル不動産価格が急激に上昇していることを示しており、コンドミニアムユニットとタウンハウスの需要にけん引されています。



BSPのプレスリリースには、「これは、第3四半期の消費者信頼感調査(Consumer Expectations Survey)の結果とも一致しています。景気回復の兆候が見える中、同期間、不動産物件を購入することを希望する消費者の割合が増えました。」と述べられています。




分譲地・住宅開発業者協会(Subdivision and Housing Developers Association, Inc. (SHDA))のプレジデント、メイ・P.ロドリゲス氏は民間デベロッパーも回復してきていると述べています。



「2020年、すべての民間デベロッパーが下降傾向でした。販売も伸び悩み、代金回収もかだいでした。幸い、2020年末から2021年にかけて、多くのデベロッパーが回復しましたが、パンデミック前のレベルにはまだ達していません。」



ロドリゲス氏は、民間デベロッパーの業績はパンデミック前の50%~70%程度で、今年はさらに回復しそうだと述べています。



バイヤーの傾向は?

サントス・ナイトフランクは、2021年のグローバル・バイヤー・サーベイ(Global Buyer Survey)で、多くのフィリピン人回答者がパンデミック中に引っ越しをしたことを指摘しています。



同社のレポートには、「フィリピン人回答者の実に85%が、Covid-19が始まってから引っ越しを下と回答しています。主な理由として、屋外スペースのニーズ(33%)、ダウンサイズ(17%)、よりよいアメニティを求めて(17%)が挙げられています。」と書かれています。



他にこの調査で分かったこととしては、フィリピン人はセカンドホームの購入可能性(44%)が、アジア平均(27%)、世界平均(33%)よりも高いようです。このようなセカンドホームは、投資としてだけではなく、別荘として、また渡航・移動制限が課されたときの休暇の場所として、利用されるようです。



さらに、「新鮮な空気が吸える」住宅を求める声も高まっていることも分かりました。



「フィリピン人回答者のうち、3人に1人は、一軒家やヴィラへの引っ越しを考えているようです。水辺のレジデンス(23%)への関心が高まっています。これは、郊外での暮らしの関心が高まっているという調査の結果とも一致します。」



拘束ブロードバンドやホームオフィス/書斎といった機能的な面や、アウトドアスペースやウェルネス/ウェルビーイング関連アメニティといった健康やウェルネスに関連する面を重視する傾向も見られています。グリーンスペースの近さ、質の良い空気、ハイレベルな医療へのアクセス、長めの良さなども、住宅購入の際の重要なポイントになっているようです。



一方で、コリアーズ・フィリピンは、カヴィテ、ラグーナ、ブラカン、パンパンガといった地方の購買力が高まっていると報告しています。コリアーズは、このような傾向が、オフィス、レジデンシャルコンドミニアム、そして学校や病院といった設備に加えて、モールやレクリエーションの設備を建設するきっかけをデベロッパー各社に与えたと分析しています。



コリアーズはまた、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の送金額の伸びもまた、レジデンシャル需要を支えると予想しています。BSPによると、2021年9月のOFWの送金額は1,350億ペソで、2022年は4%増加するとみられています。




(出所:Business World Online
(画像:Photo by Lance Lozano on Unsplash)