2020/06/30
[フィリピン] 今年4度目の政策金利引き下げ
新型コロナウィルス(Covid-19)の影響を受けた国内経済をサポートするために、フィリピン中央銀行は、予想外の利下げを行いました。
2020年6月25日、フィリピン中央銀行の金融政策決定会合は、政策金利である翌日物借入金利(RRP)を市場の予想に反して0.50%引き下げ、2.25%にすることを決めました。翌日物預金金利も1.75%となります。26日から適用となります。
今年に入って、フィリピン中央銀行は、政策金利を合計175ベーシスポイント引き下げています。うち1.50%の引き下げは、3月中旬、新型コロナウィルス(Covid-19)感染者の増加に伴いメトロマニラにコミュニティ隔離措置が実施されてから行われたものです。
今回の利下げの以前に、3月19日と4月16日の政策金利決定会合では、それぞれ0.50%の引き下げが決定されています。それ以前には2月にも0.25%の引き下げが行われました。
▼2020年に入ってからの政策金利の推移(PropertyAccess作成)
バーチャル会見で、フィリピン中央銀行のベンジャミン・ディオクノ総裁は、今年、来年は目標インフレ率のレンジ内におさまっているが、パンデミックの影響を受けた国内の経済活動を後押しすることが必要であると述べています。
2020年第1四半期のGDP成長率は、-0,2%と、1998年第4四半期以来のマイナスとなりました。3月17日から5月15日まで、ルソン島全域で実施され、メトロマニラについては5月末まで延長された強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)によるものです。
コミュニティ隔離措置により、ルソン島の人々の活動は制限されました。ルソン島は、フィリピンのGDPの約70%を生み出しています。このため、ECQが第1四半期に影響を及ぼしたのは3月の最後の2週間のみにもかかわらず、マイナス成長となりました。
国内の景気に加えて、ディオクノ総裁は世界経済の見通しも暗いと考えています。
「経済の再開が始まっていますが、世界的な回復はまだまだ長引き、一様ではないでしょう。よって、経済活動を強化し、財政状況をサポートするために対策を継続していく必要性が大いにあるわけです。特に、人々の健康を守り、農業生産を促進し、インフラを建設するためには効果的な介入が必要です。」
ディオクノ総裁は、これらの考慮したうえで、金融政策決定会合は、穏やかなインフレ環境の中、さらなる利下げが成長のダウンサイドリスクを緩和し、市場の信頼感の促進につながると判断したと述べています。
また中央銀行は、経済活動の再開に伴う世界的な石油価格の上昇を受けて、平均インフレ率を4月時点の予測2.2%から2.3%へ、来年については4月時点の予測2.5%から2.6%へと上方修正しました。
フィリピン中央銀行のフランシスコ・ダキラJr.副総裁は、世界的な石油価格の上昇が、今回の予測見直しの主な要因であるが、一方で、国内外の経済成長の減速と安定したペソに部分的に相殺されたと話しています。
国内経済の活性化における利下げの影響について言えば、市場心理、特に消費者の信頼感がどのくらい早く回復するか次第であるともダキラ副総裁は述べています。
利下げの他にも、フィリピン中央銀行は、3,000億ペソの国債買い入れなどにより政府のCovid-19対応の支援をしてきました。
フィリピン中央銀行の定款では、政府に対して貸付を行う権限があるものの、その金額は過去3年の年間歳入平均の20%までに限られていると言います。
ダキラ副総裁はまた、この上限があるので、仮払金という形で中央銀行が提供できるのは、5,500億ペソ前後となるが、財務省から追加買い入れの依頼は来ていないとコメントしています。
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