[フィリピン] 地震と建築物の安全性

2019/05/02

フィリピンの地震と建築物の安全性


2019年4月22日(月)、23日(火)と続けてフィリピン国内で比較的大きな規模の地震が起こり、余震も続いています。フィリピン諸島もまた、日本列島と同じ、環太平洋火山帯(リング・オブ・ファイヤー)に属していますので、地震があること自体は珍しくありません。今回の地震で、4階建てのスーパーマーケットのビルが崩れ死者も出ているとのニュースもありますが、実際フィリピンの建物の地震対策はどうなのでしょうか。

(地図:報道を元にPropertyAccess.co作成)


これについて、CNNフィリピンによると、フィリピン国内の建物は、National Building Code(国家建築基準)を遵守していればマグニチュード8.4の地震に耐えうると報じています。

構造エンジニアのロナルド・イソン氏はCNNフィリピンの番組で、現在の基準に従うことで、建物がマグニチュード7~8.4の地震に耐えうるようにできていると述べました。

「基準に沿って設計された建物であれば、基準の意図としては、こういった地震が来ても建物が倒壊しないようにすることです。ちゃんと設計された建物であれば、倒壊するはずがないのです。」とイソン氏は、説明しました。イソン氏は、フィリピンの構造エンジニア協会員カレッジの学長をしています。

しかし、すべての建物が基準に従っているわけではないことにイソン氏は懸念を示しています。

2011年の研究で、メトロマニラの低層レジデンシャルのうち35%、中層レジデンシャルの25%が、旧式の規範や基準に従っているため、現在の基準に満たしていないことがわかっています。Philstar誌によると、フィリピン火山地震研究所(Phivolcs)は、1992年より前に建てられた建物について、監査を行うように勧めているといいます。1992年に、より厳しい耐震基準が国家建築基準に盛り込まれたからです。

イソン氏は、月曜日の地震を受けてパンパンガ州で倒壊した4階建てチュゾン・スーパーマーケットについて、地方政府の役人は、基準の要件はすべて満たしていたと話しているが、実際は基準を遵守していなかったのではないかと見ています。揺れを感じた一帯のうちで、他の建物は崩れなかったのに、急に一棟だけ倒壊するのには大きな疑問が残るとしています。

2014年に建設されたチュゾン・スーパーマーケットは、メトロマニラを含むルソン地域を揺らしたマグニチュード6.1の地震のあとに倒壊し、死亡者を出し、何名も生き埋めになりました。州政府は、建物は国家建築基準に準拠していると述べていますが、関係者は、この4階建ての建物が2階建てにしか認められていなかったのではないかと確認中です。フィリピン国家警察の長官オスカー・アルバヤルデ氏は、スーパーマーケットチェーンのオーナーが自主的に警察署に出頭したとしています。パンパンガ州司法当局も、アパリット、サント・トマス、グアグアにあるチュゾンの他3店舗の一時閉鎖を命じています。

高層、中層ビルでも安心

月曜日の巨大地震の後、揺れる高層ビルのビデオがソーシャルメディアにあふれましたが、イソン氏は、ビルは地震が来たときには揺れるように設計されているので、揺れるのは通常のことであると保証しました。15階建て以上の建物はより長い間揺れると説明しています。

フィリピン大学の国家ハザードアセスメント(UP-NOAH)のディレクター、マハール・ラグメイ氏はCNNに対し、地震の震源が深い場合、高い建物がより揺れ、震源が浅い場合は、低い建物が揺れると話しています。

どちらのタイプの建物も安全だ、とイソン氏は話しています。「建物がちゃんと設計されていれば、つまり国家建築基準に沿っていれば、低層でも高層でも大丈夫です。地震に耐えうるようにできています。」

イソン氏は、建物が国家建築基準に準拠しているかは定期的にチェックがされるべきだとしています。

日本と同様に地震がある国だからこそ、信頼のおけるデベロッパーの新築の物件を購入したいものです。

(出所:CNN Philippines, Philstar