[フィリピン] マニラ・ホテル市場(2021年後半期)

2022/04/27


総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンは、オミクロン変異株の流行で、外国人旅行客数は伸び悩み、レジャー部門の回復が失速しているものの、今後12か月で、国内のホテルの稼働率は、国内旅行者と海外から帰国するフィリピン人にけん引されるだろうと予測しています。



需要

コリアーズは、外国人旅行客の激減が需要の冷え込みの大きな原因であるとしています。しかし、2022年後半期からは、ゆるやかに回復に向かうと予想しています。

2021年1月~6月にフィリピンに入国した外国人は58,177人でした。2022年通年では200万人、2022年~2024年には年平均で400万人の訪問が見込まれています。


供給

コリアーズによると、2021年後半期に完成したホテル客室は191室でした。2022年には、前年比122%増の1,600室の完成を予想しています。新規供給の57%はベイエリアとみられています。また2022年~2024年は年平均2,270室が完成する見込みです。


稼働率

2021年後半期の稼働率は、前半期と比較して20ポイント高い44%に達しました。コリアーズは、帰国したフィリピン人がホテルを隔離施設として利用したことが、部分的に稼働率の上昇につながったと分析しています。2022年末までには、稼働率は2021年から6ポイント上がって50%に、2026年末までには年間5ポイントずつ上がって70%を達成する見込みです。


室料

コリアーズは、外国人観光客数のゆるやかな増加と帰国するフィリピン人の需要に支えられて、一泊当たりの室料が徐々に回復すると見込んでいます。2021年後半期末時点の室料は、前半期と比較して4.0%増の63ドルでした。2022年通年では、前年比4.0%増の66ドルに、2026年末までには年間平均4.8%増加して82ドルにまで達する見込みです。

*換算レート:1ドル=50ペソ



コリアーズは、ホテル事業者に対して、

(1) 政府の定めるコロナ対策のプロトコルを順守すること、

(2) 今後の12~24か月の供給を、渡航制限の緩和、コロナ感染者数の減少、レジャー支出の回復や消費者信頼感の回復などを鑑みながら、精査していくこと、

(3) 会場を訪れる人とオンライン参加者の双方を集めたハイブリッド型のMICE(会議、インセンティブ旅行、国際会議、展覧会)の検討、

(4) ホテルの用途変更の検討

を提案しています。




2021年後半期に見られたトレンド


■外国人旅行客の増加はゆるやか


世界的に渡航制限がまだ残っているため、フィリピンに入国する外国人旅行客数は控えめな状態です。フィリピン観光省の最新のデータでは、2021年前半期にフィリピンを訪れた外国人は58,177人と、前年同期比96%減でした。観光省は、2021年6月時点で、2022年の外国人観光客数を200~500万人と予測しています。コロナ前の2019年、フィリピンの外国人旅行者数は過去最高の830万人に達しました。



■稼働率に貢献したのは国内旅行者


コリアーズによると、2021年後半期のメトロマニラのホテル稼働率は44%と、2021年前半期の24%、2020年後半期の20%から改善しました。コリアーズは以前、2021年末時点の稼働率を30%と見込んでいました。改善幅については、12月末のホリデーシーズンを前に、海外に住むフィリピン人が多く帰国したこと、さらにオミクロン株の流行前にステイケーション客が増えたことが貢献したと分析しています。


今後も、レジャーへの出費を惜しまないフィリピン人の国民性により、ホテルの室料や稼働率の改善をけん引されるだろうと述べています。


コリアーズは、2022年のホテル稼働率を50%以下で推移すると予想しています。外国人観光客がパンデミック前のレベルに戻る見込みが少ないこと、オミクロン株の流行で国内消費、レジャー消費が控えめなことを背景として挙げています。


一方で、政府の積極的なワクチン接種プログラム、マクロ経済の回復、国内外の空の旅の回復が、ホテル稼働率の回復に影響を与えそうだとも述べています。



■新規供給は限定的


コリアーズは、2022年に完成するホテル客室は1,600室ほどと予測しています。これには、レッド・プラネット・ザ・フォート(245室)、ウェスティン・マニラ・ソナタ・プレイス・ホテル(303室)、ランソンズ・プレイス・ホテル(250室)が含まれています。ホテル事業者は徐々に需要が回復すると見込んでいることから、コリアーズは、2022年以降工事に大幅な遅れはないだろうと予測しています。一方で、レストランやジム、MICE施設といったホテル内の施設については、ニューノーマルや政府のソーシャルディスタンスなどに関するプロトコルに適応する必要があることから、より慎重な姿勢が続くだろうとみています。


2020年に完成したホテル客室が375室だったのに対して、2021年は720室でした。うち529室はベイエリアのキングスフォード・ホテル・マニラ、191室はパサイ市ニューポートのホテル・オークラ・ニューポートでした。




(出所:Colliers)

(画像:Photo by Alexes Gerard on Unsplash )