2020/03/27
[フィリピン]打たれ強い不動産業界に前向きな姿勢を
新型コロナウィルス感染症の世界的流行と、政府によるルソン地域全域の1ヶ月間の隔離処置により、フィリピン経済の成長に衰えがもたらされることは明白です。
米国投資銀行JPモルガン・チェース銀行は「新型コロナウィルス感染症の流行がフィリピン経済へもたらす影響は、当初の予想を上回るかもしれない」とし、フィリピンの年間GDP成長率予測を昨年の6.2%から5.1%(YoY)に引き下げたと発表しました。ユニオンバンク・オブ・フィリピンの経済学者らは、「隔離強化により経済活動の73%がロックダウンされ、人々の行動も制限されているため」同国の2020年GDP成長率はわずか5.4%に留まると発言。地元や世界の株式市場も、十数年前の世界金融危機以来の下降を見せ、揺れ動いています。
打たれ強い業界
新型コロナウィルス感染症の流行が、生命や健康、世界経済に与え得る脅威が拡大する中で、フィリピン経済に希望の光を射す打たれ強さを見せる業界があると一部の人々は前向きな姿勢を保っています。
エンリケ・ソリアーノ3世教授(ウォング+バーンスタイン・アドバイザリー・グループ エグゼクティブ・ディレクター)は、住宅に対する非常に大きな需要が未だ供給されていないフィリピンでは、不動産業界はレジリエンスを見せる業界の一つであると指摘します。
「長期的に見て、私なら最後の1センターボでも不動産に賭けます。不動産投資というのは、正しく行えば、ほとんどの投資家にとって地元のゲームです。株の動きはアジア全体や世界の情勢に大きく左右されるので、几帳面な株式プレイヤーでない限り、資本市場は高いリスクを伴います。」と、ソリアーノ氏は言います。
「この業界では、すでに10年近くも上向きの状態が続いてきました。感染症の流行があろうと無かろうと、そろそろ減速してくる頃です。行動的に見ると、どんな下降時にも不動産市場は自ら自然と軌道修正をします。時間と共にまた回復していくというプラス面は明確です。フィリピンの不動産は、6百万戸以上の家屋の供給を目指す、非常にレジリエントな業界です。この住宅の需要は事実に基づいています。」とソリアーノ氏は加えました。
ソリアーノ氏は、感染症の世界的流行が住宅の供給に大きな影響をもたらす可能性は低いと指摘しました。しかし、今後も先行きの不透明さが長引けば、特定の地域において需要と価格帯が落ち込み、資本基盤に限りがある住宅デベロッパーにはその影響が重くのしかかるかもしれません。
それでも希望はまだまだ残っている、とソリアーノ氏は言います。
「デベロッパーはテクノロジーがビジネスのディスラプターであることにようやく気づき、今後住宅やワークプレイスの安全性を上げるため、数々のテクノロジーを応用せざるを得なくなります。インフラと医療イノベーションの統合はパワフルな価値を生み出し、現状維持に満足している不動産プレイヤーを時代遅れにします。」と彼は説明します。
「投資家にとっては変わらず平常業務でしょう。不動産プレイヤーが唯一超えなくてはいけないハードルは、先行きに対する不安の結果起こるリスクの管理です。」
7つのトレンド
不動産サービス会社サントス・ナイト・フランクは「感染症の影響と国際株式市場の下降にも関わらず、フィリピンの不動産業界には前向きでいられる理由がある」と指摘し、その理由を2020年にフィリピンの不動産を形成する7つのトレンドと説明しています。
これらのトレンドには、不動産市場に数々のオポチュニティを放つと見られる不動産投資信託(REIT)の展開;医療、アニメ、ゲーム開発のあおりを受け、拡大し続けるBPO業界;コ・ワーキングスペースの増加;開発が環境にもたらす影響に対する自覚が徐々に広がりデベロッパー間に生まれたサステナビリティへの注目;首都圏で対応仕切れないほどの工業・物流業界の需要増加;コ・リビングスペースの増加と、首都圏マニラの労働者に向けたマイクロスタジオの台頭、などが含まれます。
(出所:Business Inquirer)
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