2019/03/28
[フィリピン] 不動産市場2018年のまとめと2019年の見通し
2回にわたってお届けしているフィリピン不動産市場についてのBusiness Inquirer紙の2018年のまとめと2019年の見通しについて、今回は後半の2019年見通しをご紹介していきます。
▶前半の2018年まとめはこちら
2019年見通し
■オフィス
オフィスセクターの予想は2019年も良好です。供給面では、大量のオフィススペースが今年追加される予想ですが、一方で、BPO、オンラインゲーミング、フレキシブルワークスペース企業が、市場投入を控えているオフィスビルのプレリースをしており、需要面も楽観的です。賃料もまた、健全な賃貸需要と投資家の関心が、オフィス物件の資本価値を支えるとみられており、上昇基調の見通しです。
■レジデンシャル
レジデンシャルセクターは、アッパーミドルから高級セグメントの堅調な需要により、2019年も力強さを見せるでしょう。これらのセグメントはプレセールで80%~100%が販売されています。マカティおよびBGCでのレジデンシャルの賃貸市場もまた、BPOおよびオンラインゲーミング企業の健全なオフィススペース需要からの漏出効果の恩恵を受けそうです。
■リテール
フィリピンの安定したマクロ経済環境が2019年のリテール市場を支えるとみられており、小売業者は、フィリピン人の可処分所得の増加をうまく利用しているようです。フィリピン小売自由化法(Trade Liberalization Act)の緩和もまた、最低払込資本金要件の引き下げにより、フィリピンに参入する外国投資が増えることになりそうです。政府の議論中のREIT法の具体化もまた、不動産市場へ投資を呼び込むことになりそうです。
■ホスピタリティ
ホスピタリティセクターは、2019年も堅調なパフォーマンスを継続するでしょう。外国ホテルオペレータがフィリピン市場に参入し、国内デベロッパーとパートナーシップを締結する見通しです。観光地へのアクセスを改善するためのインフラの整備に見られるように、政府の継続的な観光業へのサポートが、2019年の観光に良い影響を与えるとみられており、ホスピタリティセクターのさらなる成長を促すでしょう。
■コワーキング/フレキシブルオフィス
2019年は、フィリピンの不動産業界に新たなトレンドと機会を生む一年となるでしょう。ミレニアル世代率いるコミュニティ型のライフスタイルへの文化的な移行が、コワーキングやコリビングの人気をけん引するとみられています。コワーキングスペースの需要の増加が、2019年に外国資本のフレキシブルスペースオペレータのプレゼンスの増加も促進するとみられています。
WeWork*1やIWGといったフレキシブルスペースオペレータは、フィリピン国内でのビジネスを拡大させてきており、2019年もさらなる拡大を続けるとみられています。国内のコワーキング/コリビングスペースのプロバイダの出現もみられる予想で、メジャー企業のビジネスエリアでない周辺地域で運営されるでしょう。こういったタイプの資産にかかる資本コストが少ないことから、投資家の関心を集めることになりそうです。
■物流
物流もまた、2019年に活発になる資産タイプと見られています。Eコマース企業の新興が、商品の出荷や配送が必要になるにつれ、物流セクターを支えるでしょう。たとえば、ラザダ(Lazada)やザロラ(Zalora)はフィリピンにおける事業を大いに拡大しており、これもまた物流セクターに恩恵を与えることになりそうです。
国内外の政府の方針もまた、間違いなく、2019年の不動産業界に影響を与えるでしょう。例えば、米中の貿易戦争もまたフィリピンの不動産市場に多大なるオポチュニティをもたらしました。というのも、米国に課される関税が原因で、中国は他の国々にスペース/土地を探しているからです。フィリピン政府のBuild, Build Build(BBB)政策もまた投資活動に拍車をかけてきました。特に顕著なのは、クラークシティやパンパンガ州で、PPPプロジェクトによりクラーク国際空港の拡張やスービック貨物鉄道などが控えています。政府のインフラ整備により、周辺の州にも漏出効果を与えています。TRAIN2法およびREIT法も、実際に施行されたら、2019年の不動産業界に影響を与えることになるでしょう。
JLL社は、2019年のフィリピン不動産業界の見通しは引き続き明るいと述べています。BPOセクターからの不動産スペースの需要だけでなく、テクノロジー企業やフレキシブルスペースオペレータなどの新興する不動産ステークホールダーからの増加する需要もまた、2019年のフィリピン不動産市場に大きく食い込んできそうです。
2019年の不動産業界の成長と拡大の予想が、ダバオ、セブ、クラーク、カガヤン・デ・オロ、イロイロ、バコロドといった次の波の都市にもうまくいけば投資を促すことになりそうです。このようなことから、2019年は、フィリピンの不動産業界にとって、さらなる確かな一年となる見込みです。来る2019年の選挙、TRAIN2への懸念、PEZAの建物認証の遅れなどといった障害を除けば、2020年もすでに有望です。
(出所:Business Inquirer)
*1 WeWorkに関するPropertyAccess.coの過去の記事はこちら
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