[フィリピン] 不動産業界の見通し①

2019/12/26

[フィリピン] 不動産業界の見通し①

フィリピンの堅調な経済状況、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)からの安定的な送金、および消費者の強い購買力。これらは、過去約10年間、前代未聞の成長を遂げてきたフィリピン不動産業界を支えてきました。

一方で、新しいセグメントも新興しています。

Business Inquirer紙の調査に対し、不動産業界の専門家は、持続可能な成長をさらに促すような新しいトレンドにより、2020年も同様に不動産デベロッパーにとって明るい展望が見られるだろうとしています。これらのトレンドは、メトロマニラや主要な都市化エリアだけでなく、デベロッパー各社が将来のプロジェクトに向けて開拓を始めた、地方の二次都市、三次都市と呼ばれるような都市でもみられるだろうとしています。

不動産デベロッパーの事業拡大計画、特に地方における拡大計画は、経済活動を刺激し、人々の生活の質を高めるのに役立っています。

しかし、自己肯定感はありません。ポジティブな見通しの中、デベロッパー各社に対して、注意を促し、運転資金を貯め、税制の先行きの不確実性、激化する競争、規制上の制約など、将来起こりうる向かい風のためにとっておきの戦略を練っておくよう求める専門家もあります。


1.フィリピン不動産市場の今と今後

フィリピン不動産業界は、国の経済成長を受けて、引き続き好調でしょう。OFW(海外で働くフィリピン人労働者)からの送金とビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の収益を含む、フィリピンのマクロ経済における柱が、不動産業界に引き続き利益をもたらすとみられています。

テクノロジー革新や新コンセプトもまた、不動産業界に活気を与え、国内の不動産デベロッパーに対する、注目を集めるような、革新的なプロジェクトの導入への期待を高めます。環境に配慮したグリーンなプロジェクトが増えるとみられており、その流行は地方へも伝播すると考えられています。

[オフィス]

政府はまだ、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO)の経済全体に与える影響を完全に把握できていませんが、同業界がオフィスとレジデンシャルを中心とするフィリピン不動産を支えているのは一目瞭然です。BPOの中には、税制改革の不確定性を受けて、様子見の状態に入っているものもありますが、エンジニアリング、建設、フレキシブル・ワークスペース事業者などの従来からのオフィス入居者がオフィスを探している状態がメトロマニラ全体でみられ、オフィス空室率も低いレベルが続いています。

不動産コンサルタント、プロノーヴ・タイによると、メトロマニラにおけるオフィス賃貸面積シェアとして、POGOがトップ(37%)に躍り出たとしています。続くのは、従来のオフィスやBPO企業です。

また、メトロマニラ以外の地域へのオフィスの拡大も目立ってきています。コリヤーズによると、セブ、パンパンガ、イロイロ、ダバオあたりが、BPOの将来のハブとなりうるとしています。


[レジデンシャル]

コンドミニアム需要は堅調です。OFWからの送金と購買力の増加により、レジデンシャルの成約も堅調ですが、部分的には建設業界におけるスキルを持った人材不足により販売開始が遅らせるデベロッパーもありました。中所得層(320万ペソ~600万ペソ(約690万円~1,290万円)の価格帯のコンドミニアム・住宅)が市場で最も魅力的なセグメントとなっています。

コリヤーズは、2019年末までにコンドミニアム在庫は128,500ユニットに達すると予想しています。メトロマニラのストックは、2021年末までには、2018年末の118,900ユニットから28%増の、152,000ユニットにまで膨らむとみています。


[リテール]

リテールは活発で、今後3年間で新規賃貸可能スペースが約100万㎡完成する見通しです。デベロッパー各社は、フレキシブル・ワークスペース・オペレータなど、ライフスタイル重視で従来のテナントとは異なるテナントを受け入れることで、空室率をコントロールしようとしています。


[工業部門]

工業部門では、南ルソンで工業用地および倉庫の持続的な成約が見られました。しかし、税インセンティブの合理化などの懸念が、各社の拡大計画に影響を与えることがありそうです。中国の製造業および観光客の関心も増えています。アヤラランドは、初となるフィリピン-中国工業団地の建設と、中国人マーケットのためのホテルのオープンに乗り出しています。


(出所:Business Inquirer