[フィリピン]不動産市場動向(2020年6月)

2020/07/16

[フィリピン]不動産市場動向(2020年6月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年6月のレポートを発表しています。フィリピン貿易産業省がコミュニティ隔離措置の対象となったエリアの物件について賃料支払に猶予期間を与える通達を発行したとのことで、ロックダウンの影響を受けた個人・企業には朗報です。また隔離措置が多くの地域で緩和され、少しずつ活動が戻ってきているようです。


■不動産市場全般

・フィリピン貿易産業省が2020年6月4日に発行した通達MC No.20-31により、強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)、修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置(MECQ)、一般的なコミュニティ隔離措置(GCQ)域内のレジデンシャル・商業物件について、賃料支払に30日間の猶予期間が与えられることになりました。この猶予期間は、最終の支払期日またはコミュニティ隔離措置の解除のいずれか遅い方から起算して、建物が実際に営業可能となったか否かにはかかわらないということです。この新しいガイドラインは、6月2日に発表された通達MC No.20-29の改定版です。以前の通達では、猶予期間の起算は事業セクターの営業が許可された日からで、営業が実際に再開したかどうかにかかわらないというものでした。修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置(MGCQ)の下では、すべてのセクターの事業再開が認められているので、賃料支払の延期は適用されません。

・フィリンヴェスト・ランド社(Filinvest Land, Inc.)は、ポストパンデミックの事業戦略2本柱(1)ミックスを多様化した上で投資物件ポートフォリオを拡大、(2)新領域への慎重なレジデンシャル拡大を展開するにあたって、2024年までに総賃貸面積210万平米にまで賃貸事業を拡大する計画を発表しました。フィリンヴェスト社は、2020年内に、ニュー・クラーク・シティのフィリンヴェスト・イノベーション・パークと、フィルインベスト・シティの複合用途コンプレックスを含む、大規模プロジェクトの完成を迎えます。さらに、フィリンヴェストは、エネルギー&持続可能性、モビリティ、プロップテック、スマートリビング、IoT(モノのインターネット)など関連セクターを含む、不動産および不動産テクノロジーにおけるイノベーションを急速に発展させるべく、プラグ・アンド・プレイ社(Plug and Play)とのパートナーシップを提携しました。プラグ・アンド・プレイのイノベーション溢れるハブを通じて、フィリンヴェストは、不動産の様々な分野とスマートリビングのデジタル化を進める起業家やスタートアップ企業と協働し、事業上の課題解決につながるような、スタートアップとテクノロジーのベストなミックスを見つけていこうとしています。


■オフィス

・Covid-19による厳しいビジネス環境の中、認可POGO(ポゴ、Philippines Offshore Gaming Operators)と関連サービス業者あわせて5社が営業を停止したと報告されています。これらのPOGOは、フィリピン国内で積極的に活動を行う45社のうち11%を占めます。POGOの閉鎖は、オフィス市場の空室率の増加につながりそうです。

・ダモサランド社(Damosa Land, Inc.)は、ダバオ市の不動産市場について、パンデミックによる低迷の後、2021年には飛躍的な回復を見せるとの楽観的な見方を示しています。ダモサランドは、BPOセクターのリバイバルにあやかって、新プロジェクトの計画もあります。ダモサランド社は、ダバオ市において、2020年の20,000平米のオフィスビル1棟、2020年第4四半期から2021年第1四半期にかけて、レジデンシャルプロジェクトを2件を完成する計画です。


■レジデンシャル

・セブ・ランドマスターズ社(Cebu Landmasters, Inc.)は、Covid-19により人々は持家の重要性を実感し、2020年第1四半期の同社の予約販売20%増(62億ペソ、2019年5.2億ペソ)につながったと言います。セブを拠点とする同社は、これについて、カガヤン・デ・オロ、マンダウエ市、イロイロにおける低価格住宅ブランド「カサ・ミラ」の購入しようとする低所得から中所得層にけん引された結果だと分析しています。同様に、中所得層向けブランド「ヴェルミロ・グローンズ・ボホール」も80%売約済み、セブの貧困層向け住宅開発「ヴィラ・カシータ・ノース」は完売しました。セブ・ランドマスターズ社は、今年の設備投資について、昨年と同レベルの100億ペソ(約216億円)に設定しており、今年の残りの期間でさらに12プロジェクト、2020年全体では合計14プロジェクトを立ち上げることになります。

・ファースト・パーク・ホームズ社(PHirst Park Homes, Inc.)は、バタンガス州のナスグブにおける「ファースト・パーク・ホームズ・バトゥラオ」という同社6つ目となる水平型コミュニティについて、初めてのデジタル発売を行いました。バーチャルツアーでは、物件内の新しくオープンした設備を見ることができ、ファースト・パーク・ホームズのオフィシャルフェースブックページでは、ウォッチパーティーを通じてビレッジの様子を見ることができます。同社の新プロジェクトは、センチュリー・プロパティーズ・グループ(Century Properties Group, Inc.)のレジデンシャル・観光エステート「バトゥラオ・アートスケープス(Batulao Artscapes)」に隣接しています。


■ホスピタリティ

・Covid-19対策の省庁横断タスクフォースは、営業の再開が認められる宿泊施設の定義を拡大し、ホテル、リゾート、アパートメントホテル、ツーリストイン、モーテル、ペンション、民間住宅、エコロッジ、サービスアパート、コンドテル、およびB&B(ベッド&ブレックファースト)を含めることとしました。営業再開の許可を得るためには、ゲストの健康と安全を確保したうえで観光省からの営業許可証を取得する必要があります。

・ロックダウンにより数か月の遅れをとりましたが、部分的に建設工事を再開した、ブルームベリー・リゾーツ社(Bloomberry Resorts Corp.)が手掛けるケソンシティのソレール・ノース(Solaire North)は、2022年末から2023年初旬にオープンを目指しています。フィリピンの景気もその頃までには回復していると期待されており、ブルームベリー・リゾーツ社は、メトロマニラ北部エリア、つまりブラカン州およびパンパンガ州エリアのゲーミング市場に対応すべく、ケソンシティの複合用途開発、ヴェルティス・ノース(Vertis North)内にこの40階建ての総合ゲーミング&リゾート施設を構えることにしています。



■工業/物流

・クラーク投資家・賃借人協会(Clark Investors and Locators Association)は、クラーク・デベロップメント社(Clark Development Corp.)に対して、ロックダウン期間中営業ができなかった事業者に対して、一時的な賃料減額をするように求めました。同協会は、クラーク・フリーポート・ゾーン内の事業者がパンデミックを乗り切るためにはクラーク・デベロップメントのサポートがかかせないと述べています。パンパンガ州が3月16日から5月31日までロックダウンを発令し、事業者の大部分は閉鎖を余儀なくされました。

・フィリピン経済特区庁(Philippine Economic Zone Authority)は、5月5日よりドゥテルテ大統領が新たに3つの経済特区を認定したと発表しました。これにより今年新たに経済特区に加わったのは合計12となりました。これらの経済特区の内訳は、ITセンターが9つ、製造経済特区が2つ、ITパークが1つで、フィリピンに合計640億ペソの投資を呼び込むとみられています。PEZAは大統領に対して、さらに71の経済特区を認定するように迫っています。これらが認定されれば、760億ペソの投資誘致につながるとみられています。


■リテール

・2020年6月15日より、マニラを含む「一般的なコミュニティ隔離措置(GCQ)」に指定されたエリアでは、レストランは、厳しい健康・安全手順を踏んだうえで、定員の30%にて店内での飲食が認められるようになりました。政府は、リテール設備の安全性に対する信頼感は完全には回復していないが、リテールは今後3~6か月で回復するだろうと予想しています。

・ショッピングモール事業者は、安全なモール環境を確保すべく、厳しい安全・消毒対策をすることで、消費者を呼び戻そうとしています。モール事業者はまた、パーソナルショッパーサービスや非接触支払システムなども消費者のために取り入れています。

・Eコマースが普及し、Eコマース事業者は、オンラインチャンネルでのプレゼンスを高め、Covid-19が引き起こした「ニューノーマル」に適応するため、独自のオンラインプラットフォームの立ち上げに続々と投資をしています。

(出所:Cushman and Wakefield

(トップ画像:Jeanne Paredes on Unsplash )