[フィリピン]不動産市場動向(2020年11月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年11月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。

[フィリピン]不動産市場動向(2020年11月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年11月のレポートを発表しています。同レポートでは、アヤラランドに続く第2のREITとなりうるダブルドラゴン・プロパティーズ社のREIT届出のニュースを受け、今後さらなるREITの活用への期待を高めています。

一方で、数多くのPOGO(オンラインカジノ業者)がフィリピンを離れたことによるオフィスおよびレジデンシャルへの影響が懸念される一方で、徐々に完全操業に近い状態で事業が可能になったアウトソーシング業界の動きに注目が集まりそうです。



■不動産市場全般

・ダブルドラゴン・プロパティーズ社(DoubleDragon Properties Corp.)が、2020年11月、証券取引委員会(SEC)に対して、不動産投資信託(REIT)の届出を提出しました。承認されれば、フィリピンでアヤラランドに続く第2のREITになります。ダブルドラゴンのREITは、DDMP REITと呼ばれる予定となっています。株式公開(IPO)では、147億ペソ(約319億円)を調達し、追加割り当てオプション付で、約59.4億株の普通株式を一株当たり2.25ペソ(約4.88円)で売り出すことにしています。DDMP REITのポートフォリオには、パサイ市のベイシティ開発に位置する3つの商業物件が含まれることになっています:ダブルドラゴン・プラザ、ダブルドラゴン・センター・イースト、ダブルドラゴン・センター・ウェストで、店舗が入った合計6棟のオフィスタワーで構成されています。

・パンデミック期間でも事業の拡大計画を支援し、財務基盤の強化するための有力な資金源を提供するとして、REITへの強力な関心が再び高まっています。ゆっくりとした景気回復が予想されるなか、不動産活動を刺激するとみられているビジネス環境の改善と大物インフラプロジェクトの再開をきっかけに、楽観的な見方が戻ってきているようです。


■オフィス

・フィリピン情報技術ビジネスプロセス協会(IBPAP)は、アウトソーシング業界が被った、ロックダウンに関連した企業の費用、キャパシティを限定して事業活動を行うことによる機会損失および営業損失は、約1,200億ペソ(約2,611億円)に上ると述べています。アウトソーシング企業は、コミュニティ隔離措置の期間も事業を継続するためには、政府が求める条件に含まれている、在宅勤務用の設備、従業員用の宿泊施設、および通勤サービスなどの費用を負担しなくてはなりませんでした。さらに、ロックダウンの初期は、アウトソーシング業界で働く人々のたった50%(在宅40%、職場10%)しか勤務することが認められていませんでした。現在は、フレキシブルな働き方で95%まで仕事に戻ることが認められています。アウトソーシング業界の2019年の収益は263億USドル(約2.7兆円)で2018年の7.1%増を記録していました。昨年、IBPAPは、2020年~2022年の収益の年間平均成長率3.5~7.5%、290億~320億USドル(約3.0兆円~3.3兆円)に見直していました。

・フィリピンオンラインカジノ企業(POGO)の先行きが不透明な中、アウトソーシング業界は、制約はあったもののパンデミックの中でも営業を続け、オフィス部門をけん引しました。しかし、企業が拡大計画を延期したり、新政権下で米政府がアウトソーシング業界に対する方針転換をしたりする可能性があり、オフィス部門は今後も脆弱な状態が続きそうです。


■レジデンシャル

・JPモルガン証券フィリピンは、家計の所得に悪影響を与える景気の停滞により、レジデンシャル部門は2021年も減速気味で、2022年に入ってから軌道に戻るだろうと予測しています。特に、レジデンシャルのプレセール需要は2020年に37%、2021年に12%縮小するとみられており、パンデミックの影響から経済が回復する2022年になってやっと、長期的な需要が成長をけん引するとみられています。しかし、レジデンシャルの2017年~2019年の成長は量よりも価格に引っ張られてきたところが大きいため、売上は2022年までにパンデミック前のレベルには戻らない可能性があります。多くのPOGOがフィリピンを離れ、また政府もPOGOに対する規制を強めたことで、レジデンシャル部門に悪影響を与えることが懸念されています。過去3~4年、レジデンシャル部門は、メトロマニラの複数エリアのレジデンシャル価格を引き上げた、POGO関連産業で働く中国人の流入から恩恵を受けたからです。

・POGO事業者の多くがフィリピンを離れたことで、特にPOGOの影響を多く受けていたエリアに波紋が起こり、レジデンシャルの空室を急増させるリスクを高めています。国内のレジデンシャル需要は、失業の増加と海外フィリピン人労働者からの送金額の伸び悩みにより、引き続き足を引っ張られそうです。また、厳しい出入国管理と世界的な景気低迷が、海外にいるフィリピン人の帰国を促しそうです。


■ホスピタリティ

・初となるシュアステイ・プラスホテル(パンパンガ州)を皮切りに、セブ・クワッド・マネジメント社は、アメリカ発のベストウェスタンによるシュアステイ・プラス・ホテルと提携して、セブシティへの事業拡大計画に4,500万ペソ(約9,780万円)を投じる計画です。このホテルプロジェクトは、観光および観光関連業がCovid-19状況に適応すべく施設をアップグレードまたは老朽更新するための投資インセンティブを提供する方針に従って、投資庁(BoI)から税務上のインセンティブを与えられています。セブのシュアステイ・プラスホテルは、接触者追跡、オンライン予約、非接触支払のためにITシステムを採用することにしています。BoIのインセンティブは、フィリピンの主要な成長力であり、2019年は191万もの雇用を生み出した観光業の回復を支援する目的で行われているものです。

・クッシュマン&ウェイクフィールドは、多くの宿泊施設が営業再開を認められているものの、国内旅行の意欲を回復させるにはしばらくかかりそうだと予想しています。外国からの旅行者をまだ迎えられないため、国内観光を通してホテル部門を再開させることは、安全でCovid-19プルーフな宿泊施設作りから始まりそうです。


■工業・物流

・アボイティスグループと日本の常石グループの合弁である、セブ・インダストリアルパーク・デベロッパーズ社は、工業セクターの力強い成長を受けて、今後3年間で、540ヘクタールの西セブ工業団地(WCIP)の拡大計画に乗り出しています。これにより、5,000もの職を生み出すことが予想されています。WCIPは、マスタープランに基づいた総合コミュニティで、現在は283ヘクタールのフィリピン経済特区庁(Philippine Economic Zone Authority(PEZA))に登録された経済特区があり、11社の中工業~重工業会社がテナントとして入っており、セブの主要な工業地帯に沿った戦略的な立地にあります。WCIPを通じて、アボイティスは、同エリアの経済活動をさらに促進し、WCIPをバタンガスのLIMA団地や、セブ州ラプラプ市のマクタン経済区IIなどに匹敵する、完全に統合された経済の中心地へと発展させることを目論んでいます。

・セブ市で新興する工業セクターは、造船業ならびに製造・輸出企業が多く入ることで知られています。国内のその他の地域と同様に、セブ市の工業セクターも、必需品・サービスの需要増とEコマースの需要増から生まれた新しいオポチュニティの恩恵を受けています。


■リテール

・国内最大手のモール事業者であるSMインベストメント社は、「オムニチャネル」リテール戦略を採用し、パンデミックの中変化する消費者の買い物動向に対応すべく、オンラインと店舗のプレゼンスの両方を同化しようとしています。オンラインのプレゼンスを拡大するだけでなく、SMインベストメントは、消費者の利便性を高める努力をしています。たとえば、パーソナルショッパーを取り入れたり、デリバリー&ピックアップサービスを行ったり、マニラではバーチャルモールを展開したりしています。コロナ前と比べて、客足は40%、モールのテナントの売上は60~70%ほどですが、SMインベストメントは2021年第3四半期までにはコロナ前のレベルにまで回復すると楽観的な見方をしています。

・長期化が予想されるコロナ危機の中で発達するリテールトレンドの一つが、より総合的に幅広い消費者に到達できるよう、従来の店舗型リテールを他のリテールチャネルで補完することです。リテール部門は大きな打撃を受け、パンデミックが消費者の自信感と購買力を蝕み、回復の速度が抑えられる中、オムニチャネル戦略を通してオンラインプレゼンスを高めることで、パンデミックにより買い物行動が変化した消費者にも到達する可能性が期待されます。


(出所:Cushman & Wakefield

(トップ画像:Image by rachinmanila from Pixabay )