[フィリピン]不動産市場動向(2020年9月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年9月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。

[フィリピン]不動産市場動向(2020年9月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2020年9月のレポートを発表しています。2020年スマートシティインデックスでは、マニラがその順位を落とし、交通渋滞、汚職、医療サービス、大気汚染、失業といった住民の懸念が浮き彫りになりました。フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者(POGO)がコロナの影響で不活発となり、オフィス需要の減少が予想される中、IT-BPM業界の促進による需要の維持が期待されています。また、レジデンシャルは、ハイエンド物件を中心として回復の兆しがすでに見え始めているようです。


■不動作市場全般

・スウェーデンを拠点とするInstitute for Management Development (IMD)Business Schoolの「2020年スマートシティ・インデックス」で、マニラは2019年の94位から、104位へと転落しました。調査の回答者は、マニラの道路渋滞、汚職、医療サービス、大気汚染、失業を、問題点として挙げており、2019年のスマートシティランクCから、ランクDへとランクダウンしました。今年ランキングが改善したバンコクとクアラルンプールを除いては、東南アジアの諸都市のランキングもまた悪化しましたが、マニラが域内では最下位でした。同調査では、経済発展や技術インフラも主要な指標として見ており、バンコクとクアラルンプールは、整備された技術インフラのおかげで、Covid-19対応の上で「スマートさ」が見られたとも述べられています。

・この調査では、メトロマニラのような高度に都市化が進む都市において、Covid-19の影響を和らげるとともに、市民の生活条件を強化する上でのテクノロジーの重要性に焦点を当てています。道路渋滞、汚職、医療サービス、大気汚染、失業といった、回答者からあげられた懸念は、未来に備えた都市計画、都市開発におけるテクノロジーの役割と深くかかわっています。



■オフィス

・フィリピン情報技術・ビジネスプロセス協会(IBPAP)は、米国、カナダ、アイルランド、オーストラリアに加えて、シンガポール、日本、マレーシア、スリランカのアジア4か国とも連携して、国内のアウトソーシング業界を促進していこうとしています。ソロンズの2020年グローバル・イノベーション・インデックスで、最も魅力的なアウトソーシング先でフィリピンは1ランク落として6位となったこともあり、IBPAPはBPOの人材プールのスキルアップや再教育に力を入れています。同インデックスでは、フィリピンのインターネットインフラと公共交通機関における課題が、パンデミックの期間中のBPO業界の営業不効率につながったとしています。一方で、IBPAPは、コロナ後のIT-BPMのハブとなりうる25都市を選定、メトロマニラ以外のエリアにも投資を呼び込む目的で、インターネット接続性やデジタル教育プログラムなどの分野でサポートをしていく計画です。

・コロナ前は、フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者(POGO)が急激な成長を見せ、オフィススペースの需要を押し上げてきましたが、パンデミックによりPOGOの営業が制限され、オフィススペース需要の大幅減につながることが予想されています。クッシュマン&ウェイクフィールドは、オフィス市場に予想されるスランプを埋め合わせるべく、IT-BPM業界の持続可能性を図ることがカギになってくると述べています。技術インフラ投資と労働力のスキルアップが、IT-BPM業界の促進と、コロナ後の復活に必要だとみられています。



■レジデンシャル

・フィリピン中央銀行が発表するレジデンシャル不動産価格インデックスによると、2020年第2四半期の前年同期比上昇率が過去最高の27.1%を記録しています。2019年第2四半期は0.4%、2020年第1四半期は12.4%でした。ハイエンドレジデンシャル物件の需要が高かったことが販売価格を押し上げたことに加え、メトロマニラ外の価格上昇率18.1%に対して、メトロマニラが34.9%と、価格上昇が急激に進みました。

▼レジデンシャル不動産価格インデックス対前年同期上昇率(出所:フィリピン中央銀行)

物件タイプ別にみていくと、レジデンシャルコンドミニアムの価格上昇率が最も高く30.1%、続いて一戸建て24.1%、タウンハウス10.8%、デュプレックス0.8%となっています。

▼レジデンシャル不動産価格インデックス対前年同期上昇率・物件タイプ別(出所:フィリピン中央銀行)

・ハイエンド物件が、市場の低迷からいち早く抜け出しそうです。一方で、パンデミックにより、バイヤーの好みは中長期的に、従来のビジネス街に近い高層物件へとシフトしそうです。というのも、コロナ後のニューノーマルとして、アジャイルな働き方が、労働文化の一部となるからです。コンドを購入するにあたって、低密度で、様々なアメニティや設備の整った物件への関心が高まりそうです。今後しばらく低金利が続きそうなので、初めてマイホームを購入する人を中心として、レジデンシャル需要にポジティブな影響がありそうです。



■ホスピタリティ

・稼働率の下落に加えて、外国人観光客の再来時期が不確定な中、ホスピタリティ業界は、現在の市場に適応して、フレキシブルワークプレイスやサービスアパート/コリビングなどに転換せざるを得なくなっています。一方で、ホテルの中には、フランチャイズ企業との既存の管理契約に縛られて、このような措置が取れないものもあります。そういったホテルは、デジタル化を進めて、短期的には、パンデミック期間中の存続を、そして長期的には、市場機会をとらえることにつなげていけそうです。クッシュマン&ウェイクフィールドは、ホテル事業者は、今後の生き残りをかけて、ホテルゲストの新しいサービスレベルに対する期待値に応えるための作業手順を整備し、飲食機能の再構想を計り、メンバー特典の見直しや、フランチャイズ企業との支払減額などの交渉を進めることができそうだとしています。

・ホテル業界の回復は、旅行や観光の再開に依存しています。ホテル事業者は、パンデミックの悪影響をこれ以上受けないために、サービス改革やデジタル化を進めていくことになりそうです。



■工業/物流

・フィリピン経済特区庁(PEZA)によると、ロックダウンを経て、現在は、PEZAに登録された企業の85%、製造業の91%、IT-BPM業界の77%が、必要最低限の人員で、または在宅勤務で、営業を再開しています。PEZAは、現在のPEZAのインセンティブが、世界的に見ても競争力があるとして、通称CREATE法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)の対象から外すように主張しています。

・外国・国内企業ともに、ビジネスリスクを最小限に抑えることが好むので、PEZAのインセンティブを今後も継続して確保できるかどうかが重要になってきます。これは、PEZA認可エリアに今後入居しようとする企業の、将来の立地戦略や決定を左右しそうです。PEZAインセンティブの有無で大きな影響を受けそうなのは、電子機器や半導体メーカーなどの輸出型の企業です。これらの企業は、PEZA登録企業の大部分を占めています。



■リテール

・フィリピンフランチャイズ協会(PFA)は、米国を拠点とするシンクタンクESGが、フランチャイズ企業の投資先としてフィリピンをASEAN域内ナンバー1にランクしたと明かしています。1を最高とする1~4までの尺度で、フィリピンのスコアは2.1でした。市場規模、知的財産保護、経済要因、長期投資リスク、コロナ後の回復、といった分野でのハイスコアが貢献しました。PFAによると、フランチャイズ業界は、コロナ前の国のGDPの約7.8%に貢献し、約200万人分の職を生み出しました。

・フィリピンのリテール業界の特徴のひとつが、インターナショナルブランドの活躍です。「Retail Apocalypse(小売の終末)」の影響で他国がつまずく中、フィリピンでは、コロナ前より外国ブランドが躍進を続けていました。リテール部門をけん引する市場ファンダメンタルズと、フィリピンに深く根付いたモール文化により、コロナ後の回復期にも外国ブランドを呼び込むことになりそうです。2000年小売自由化法(Retail Trade Liberalization Act 2000)の可決と外国小売投資にかかる最低払込資本金の要件引き下げにより、リテール業界がさらに外国企業に対して開かれることで、この流れが強まりそうです。


(出所:Cushman & Wakefiled

(トップ画像:Ramon Kagie on Unsplash