[フィリピン]不動産市場動向(2021年1月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2021年1月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。

[フィリピン]不動産市場動向(2021年1月)


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2021年1月のレポートを発表しています。新型コロナウィルスとその感染拡大防止のためのコミュニティ隔離措置は、オフィスやホスピタリティに特に影響を及ぼしています。物流は、Eコマースの発達に加え、コロナウィルスのワクチンを特定の温度環境下で輸送する必要性から、コールドチェーン物流を中心にオポチュニティを得ているようです。


■不動産市場全般

・アーバン・ランド・インスティテュート(ULI)とプライスウォーターハウスクーパーズ(PwC)のレポート、「2021年不動産の新興トレンド(2021 Emerging Trends in Real Estate)」において、マニラは、アジア太平洋地域の都市の投資見通しにおいて、22都市中19位に転落しました。レポートでは、マニラの順位が転落した理由について、レポートでは、世界的な不況の中、東南アジアの国々におけるリスクが高まったことで、マニラの不動産投資見通しが弱まったことを挙げています。マニラは、都市開発においては13位と健闘しましたが、2021年の賃料上昇見込みでは20位となりました。

一方で、レポートでは、フィリピンが、主要ビジネス街の混雑解消のため、メトロ・クラークなどの衛星都市などを設立したことについての功績も認めています。フィリピンの投資見通しランキングは、2017年は3位でしたが、2018年、2019年、2020年はそれぞれ18位、19位、17位となっていました。国の不動産投資の魅力を高め、投資家の信頼感を取り戻すため、政府と一丸となった努力が重要であることも述べられています。


▼投資見通しランキング(出所:Pricewaterhouse Coopers)


・コロナ前の好調なフィリピン不動産セクターは、国内でも最も成長見込みのある投資クラスの一つであることが認められていました。アジア通貨危機など過去の危機を切り抜け、フィリピンの不動産ブームは10年以上も続いてきました。クッシュマン&ウェイクフィールドは、適切な景気刺激策が行われることで、国の経済と不動産セクターは短期から中期で回復すると考えています。法人所得税率を域内でも高い30%から20%にまで引きさげる、待ちに待った税制改革法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises (CREATE)Act)の可決に加え、新しいインフラ開発が完成することで、不動産活動がさらに活発化することが期待されています。同様に、金融機関戦略移転法(Financial Institutions Strategic Transfer (FIST)Act)では、銀行システムが、不良債権、焦げ付き融資に紐付いた資本を開放するための柔軟性を与えてくれます。


■オフィス

・拡大計画をいったん見送る企業が出ており、成約済みだった新規完成オフィススペースが市場に戻ったことで、オフィス空室率が悪化しました。オンラインカジノ事業者(POGO)のフィリピン離れにより、メトロマニラのオフィスセクターはすでに影響を受けており、2020年第4四半期の空室率は7.8%に達していました。平均賃料はわずかに下がって0.1%減となりました。これは、主要ビジネス地区以外のエリアのオフィススペースの希望賃料に下げの方向で修正が入りましたが、一方で、2020年に完成予定だったオフィススペースのうち、無事完成したのがたった45%だったことによります。オフィス在庫には、2020年約376,000平米が加わりました。

・2021年に入って、徐々にオフィスに戻る動きが出ているものの、短期~中期的には、世界的なビジネス環境の不確定性が、企業の拡大戦略の決定に引き続き影響を与えるとみられており、オフィス不動産がパンデミック前の活気を取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだとみられています。しかし、新政権の下、アメリカの保護貿易政策が弱まることで、フィリピンのIT-BPM業界の成長が見込まれることから、オフィス市場は恩恵を得られるのではないかとみられています。


■レジデンシャル

・パンデミックにもかかわらず、センチュリー・プロパティーズ・グループ(CPG)は2021年も積極的に新しいレジデンシャルユニットを提供していく計画です。同社は、2021年4月までに、約1,600戸を引渡し予定で、これは、同社が2020年全体で引き渡した1,200戸よりもずっと多い数字となっています。CPGは、戦略の再調整を行い、次のようなアプローチを進めていくことにしています。①カーボンフットプリントを減らし、より環境に優しいビルを増やす、②デジタルプレゼンスを高める、③住宅ローンのプロセスにおいて、クライアントの信用支援プログラムを導入する、④カスタマーオンラインレコードアシスタントの開発です。

・ポジティブな需要の指標ともなる低金利環境はレジデンシャル部門の回復をサポートするとみられています。クッシュマン&ウェイクフィールドは、デジタルインフラの活用に加え、コロナに関わる様々な制約があるうちは、プロセスを整流化し、非接触型の取引が簡単にできるようにするような方法を模索していくことが必要になってくるだろうと述べています。


■ホスピタリティ

・マカティ・シャングリラホテルは、長引くパンデミックの影響を受け、2月~一時的に営業停止することを発表しました。レジャー型のホテル滞在ができるように許可を受けた宿泊施設のひとつであるにもかかわらず、ぱっとしない需要に加えて、ホテル・観光業界の回復に向けた見通しが不透明なことで、ホテル事業者の財務状況に圧力が加わり、今回の一時営業停止の判断に至ったものとされています。30年にも渡って営業をしてきたマカティ・シャングリラホテルですが、今年末まで、解雇対象となる従業員に対して、補償、医療補助、日用品支援などを行う前提で、一部の従業員を解雇することにしています。シャングリラホテルは、ビジネス環境に改善が見られるまでのあいだ閉鎖となります。

・新型コロナウィルスの変異種の出現で再び不安が広がり、海外旅行の再開をさらに先延ばしさせています。主要な都市エリアや観光地でより厳しいコミュニティ隔離措置が行われていることで、国内観光にも活気がなかなか戻らない状況が続くとみられており、観光業界の見通しはさらに不透明なものとなるでしょう。


■工業・物流不動産

・飲食業界にけん引されたことに加え、新型コロナウィルスの全国的なワクチン接種プログラムも加わり、投資庁(Board of Investment (BoI))は、冷蔵保管庫業の時価が2023年までに総額200億ペソに上ると見積もっています。政府は、2021年内に7,000万人のフィリピン人に対してワクチン接種を行うべく、複数の製薬会社から1億4,800万人分のワクチンを調達することにしています。ワクチンによっては、特定の温度を保つ必要があることから、ワクチンを流通させるためには、このような温度要件を満たすことが、物流業界には必要になってくるでしょう。

・冷蔵倉庫(コールドストレージ)業は、生活必需品やEコマースへの需要のシフトにより急速に頭角を現し、パンデミックの勝ち組のひとつとして出現しています。ワクチン輸送の要件が、コールドチェーン物流、コールドチェーン倉庫の重要性を強調する一方で、日用品その他生活必需品リテール市場もまた、この業界の成長を加速させそうです。クッシュマン&ウェイクフィールドは、フィリピンの冷蔵倉庫の収容能力は、アジア太平洋地域のその他の国々と比べるとまだ低いので、このようなオポチュニティが出てきたことで、今後ますますの成長可能性がありそうだと述べています。


(出所:Cushman & Wakefield

(トップ画像:Photo by Hitoshi Namura on Unsplash )