[フィリピン]不動産市場動向(2021年3月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2021年3月のレポートを発表していますのでご紹介していきます。

[フィリピン]不動産市場動向(2021年3月)

不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2021年3月のレポートを発表しています。公共工事を中心として、急速に建設活動が活発になってきている一方で、「NCRプラス」と呼ばれるメトロマニラと周辺4州に再び実施されている厳しいコミュニティ隔離措置は、リテールの収益に影響を与えそうだとも述べています。


■不動産市場全般
・2021年2月、メトロマニラの卸売建設資材価格の指標となっている、建設資材卸売価格インデックス(construction materials wholesale price index (CMWPI))が加速し、対前年同期で2%増となりました。この増加は、前年同期は1.5%増、前月が1.2%増となっており、この数値は過去16か月で最高でしたが、その一部は、昨年の減速からの急上昇というベース効果によるところです。2021年1月の対前年同期成長率と比べて大きな上昇を見せた商品には、ガラスおよびガラス商品が14.4%(1月は0%)、燃料および潤滑油が-0.3%(1月は-7.5%)、配管器具および付属品/水道工事が-1.3%(1月は-3.3%)、補強および構造用鋼が3.3%(1月は1.7%)、電気工事関連が0.4%(1月は0%)、コンクリート商品およびセメントが1.2%(1月は0.8%)がありました。一方で、一部の商品では価格が落ち着きを見せました。これには、材木2.8%(1月は3.6%)、PVCパイプ0.6%(1月は1.3%)、タイル工事関連2.2%(2.6%)、塗装工事関連0.3%(1月は0.4%)などがありました。
・2020年、建設業界は、工事の制約を受けたり、プロジェクトの中にはタイムラインの延期があったりと、難局を迎えましたが、ここ数か月、公共・民間建設工事への規制が緩和され、建設活動が急速に回復してきているため、建設資材価格を押し上げる形となっています。需要は、公共工事が業界を引っ張っているようです。というのも、民間デベロッパーは、パンデミックによってかなり財務面で圧力がかかっているため、新しい建設プロジェクトを控えて、ビジネス環境がより安定するまで待ちの状態に入っているからです。


■オフィス
・パンデミック当初はその実施に課題があったものの、在宅勤務の導入により、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業界の生産性は、従業員の生産性が約15%~40%増、従業員の欠勤が40%減と改善が見られました。家族がらみの用事に出なくてもよくなったこと、オフィスと自宅との間の通勤時間をセーブできたことが、より良いパフォーマンスにつながりました。一方で、不安定な労働市場状況により業界の離職率は減少しました。在宅勤務の実施により、BPO業界は、不動産およびその他費用については約20%のコスト削減を行ったとされるのに対して、接続性およびその他従業員がリモート勤務を行うために必要な在宅勤務用の設備を整えるのに、追加の費用が掛かる形となりました。
・パンデミックが進むにつれ、多くの企業が在宅勤務関連のソフトウェアやツールへの投資を行い、リモート勤務の費用対効果を実現しました。企業がより柔軟な働き方を採用するにつれ、仕事は、様々な労働力が混じりあう方向へと向かっています。


■レジデンシャル
・人間居住・都市開発局(Department of Human Settlements and Urban Development(DHSUD))は、経済の再活性化における不動産セクターの役割を強調し、フィリピンの住宅プロジェクトを増加させ、より多くの雇用を生み出そうと計画しています。DHSUDはまた、民間セクターの関与を増やし、官民で住宅開発を進めるにあたってシナジー効果を促進することも検討しています。
・アフォーダブル住宅セグメントへの民間セクターの関与を推進することは、待望の景気刺激を与えるだけでなく、フィリピンの慢性的なアフォーダブル住宅不足の緩和にもつながる可能性があります。しかし、現在の厳しい一連の要件と長期にわたる手続きにあっては、政府はまずは手続きの整流化から始めて、より多くの民間セクターの関与を促す努力をしていくべきだろうとクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは述べています。


■ホスピタリティ
・フィリピン観光振興委員会(Tourism Promotions Board)は、初となるハイブリッド型の観光&技術フォーラム(Tourism & Technology Forum (TTF))を開始します。ほとんどはオンライン参加で、900以上の観光関連者が参加し、中には技術関連大手企業の姿もあります。このフォーラムでは、特に「スマート・ツーリズム」キャンペーンにおける最新の技術発展・革新にかかる情報拡散を容易にしていきたい狙いです。このキャンペーンは、「デジタルプラットフォームの強化、確実なデータ駆動型の計画、促進・マーケティング用のその他ツールの拡大」を目指すものです。スマート・ツーリズムは、資源経営効率、競争力、および持続可能性を、技術革新と実行により強化していくことを目標としています。このフォーラムは、パンデミックがもたらした課題に立ち向かうための、ベストプラクティス(最優良事例)や新しいアイディアについての情報の同時共有も行う狙いがあります。
・他の国々でのホスピタリティセクターの再開において新しく採用されている方法にならって、フィリピン国内のホスピタリティ業界もまた戦略的な枠組みが必要だとクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは述べています。感染者数の増加が完全に制御できる状態になれば、ホスピタリティ業界は、ホテル、レストラン、結婚式その他のイベントの会場といったビジネスモデルに再投資し、主に需要を率いる客層の安全性や信頼感を高めることができます。


■工業・物流
・2021年2月度および3月度受領分の申請にかかる、フィリピン経済特区庁(Philippines Economic Zone Authority(PEZA))の投資承認が131.9億ペソ(約296億円)に達しました。33のプロジェクトのうち、3件はエコゾーンの開発、30件は企業で輸出関連(12)、情報技術(11)、施設(5)、物流(1)、ユーティリティ(1)となっています。PEZAは、2021年の投資予定額1,000億ペソ(約2,245億円)相当を確保したい考えです。2020年の投資承認額は950億ペソ(約2,133億円)で、2019年の1,175億ペソ(約2,638億円)から19%となっています。
・2021年3月末、ドゥテルテ大統領が署名して成立した税制改革法(CREATE法)は、2020年7月1日に遡って法人所得税率を30%から一気に25%に引き下げます。これにより、フィリピンの工業セクターの、外国企業に対する魅力が高まるものと見られています。共和国法(RA)11534号、つまりCREATE法は、工業セグメントの中でも主力のドライバーであるものの、いまだ回復の途中にある製造業、電子業に大きな便益をもたらすことが期待されています。


■リテール
・メトロマニラおよび周辺のブラカン州、カヴィテ州、ラグーナ州、リサール州で2週間にわたって実施される厳しいコミュニティ隔離措置(ECQ)は4月5日まで(注:この後、4月11日まで延長)となっており、事業者はフル操業ができなくなるため、リテールセクターの中でも多いところで収益が70%ほど減少すると見られています。レストランやファストフード店といった非エセンシャル(必要不可欠でない)なグループは、すでにかなりの打撃を受けていますが、Covid-19感染者数最多の「NCRプラス」と呼ばれるエリア内での、移動や事業活動が制限されることで、急激な減収に見舞われることになるでしょう。早急にワクチン接種を行うことが、リテールや飲食店の客足の伸び悩みにつながっている消費者の健康・安全への懸念を落ち着かせるための主な解決策になるのではないかとみられています。
・パンデミックが回復への道のりを阻み、リテールセクターは前代未聞のプレッシャーと戦っています。デベロッパー各社、リテール各社は、多様なEコマースの選択肢と非接触型のカスタマーエクスペリエンスを長期的な解決策として導入していくべきだとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。

(出所:Cushman and Wakefield