[フィリピン] 不動産市場動向2022年12月

2023/02/09


不動産コンサルタント会社クッシュマン&ウェイクフィールドが2022年12月のレポートを発表していますので、ご紹介していきます。


クッシュマン&ウェイクフィールドは、世界的なインフレや地政学的な緊張はあるものの、フィリピンの不動産市場は、比較的明るい長期的な成長見通しに支えられていると述べています。特に注目すべきは、レジデンシャル不動産価格インデックスで、デュプレックス、コンドミニアムを中心に力強い成長を見せています。工業不動産も、Eコマースへのさらなるシフトとデジタル化に後押しされると述べています。



■不動産市場全般


・2023年第3四半期までに、インフレ率を2%から4%に収めることを目標に、フィリピン中央銀行(BSP)は、2023年にさらなる金融引き締めを進め、今年の金融政策決定会合(MB)の最初の会合2回で新たに金利を引き上げる可能性について示唆しました。政策決定はデータに基づいて行われますが、BSPは引き締めのサイクルが今年最初の2会合で止まることはないだろうとして、2023年末までには最終的には金利が6%にまで到達する可能性についても触れました。現在のベンチマーク金利5.5%は、2008年11月以来最高水準となっています。BSPは、2022年12月に50ベーシスポイントの利上げを実施、2022年5月から合計で350ベーシスポイント上げました。この利上げ判断は、2022年11月にインフレ率が8%に達したことを受けて行われました。8%のインフレ率を記録するのは14年ぶりで、2022年通年のインフレ率は5.6%となりました。2023年に行われるであろう利上げは、25ベーシスポイントあるいは50ベーシスポイントといった小幅なものになると見られていますが、国内外の動きに大きく左右されそうです。


・クッシュマン&ウェイクフィールドは、積極的な利上げと、世界規模での経済における不確定性が、短~中期的な不動産市場の完全回復を遅らせる可能性があるだろうと述べています。一方で、近隣諸国と比べると比較的明るいフィリピンの長期的な成長見通しに支えられて、逆風を乗り切るだろうとも述べています。



■オフィス


・フィリピン労働雇用省(DOLE)のレポートによると、2022年9月~11月の3か月間で、在宅勤務を行う従業員数が減少しています。2022年11月時点で、在宅勤務を行う従業員数は39,502人でした。2年前の37,434人と比較すると依然として多いものの、1年前の71,406人の約6割となりました。パンデミック関連の規制がますます緩和されるにつれて、2022年1月から11月の期間にフレキシブルな働き方を導入した企業は5,146社と、2021年の同期間で記録した16,586社から大きく減少しました。これは、「勤務日数の削減」や「労働者のローテーション」など、あらゆるタイプの「フレキシブルな働き方」の影響を受ける従業員が、減少していることを示しています。


・クッシュマン&ウェイクフィールドは、「フレキシブルな働き方」は従業員のリテンション(繋ぎ止め)と人材開発にとって重要だとして、2023年も継続すると見ています。財政インセンティブ審査委員会(FIRB)は、税制上のインセンティブに影響を与えることなく、コロナの影響を受けたIT-BPM企業に対して長期的にフレキシブルな働き方を認める決議No.026-22を、2023年1月31日まで延長することを決めました。



■レジデンシャル


2022年第3四半期、BSPが公表するレジデンシャル不動産価格インデックス(RREPI)は前年同期比で6.5%増となり、第2四半期の2.6%よりも速いペースで成長しました。2021年第3四半期は、6.3%でした。タイプ別で見ると、デュプレックスで価格上昇が加速し、前年同期比26.7%を記録したほか、コンドミニアムは19.2%、一戸建ては9.8%でしたが、タウンハウスは16.3%のマイナスでした。メトロマニラのレジデンシャル不動産の価格は前年同期比で17.5%上昇し、第2四半期に記録した6.3%から加速しました。メトロマニラ以外のエリアでは、2022年第2四半期の2.2%成長に続き、第3四半期は2.3%と成長率はほぼ横ばいでした。メトロマニラの新築レジデンシャルの評価額は、平均して平米当たり139,283ペソでした。メトロマニラ以外のエリアでは平米当たり47,129ペソでした。全国平均では84,589ペソでした。一方で、銀行による居住用不動産ローンは、メトロマニラで2.0%、メトロマニラ以外で5.7%のマイナスとなり、全体では前年同期比で4.2%減となりました。


メトロマニラのレジデンシャル用コンドミニアムの需要は、物価や金利の上昇にもかかわらず、ハイエンド物件を中心に持続的に推移しています。クッシュマン&ウェイクフィールドは、この背景として、2023年さらなる経済の再開が進み、オフィス勤務への回帰を含め、事業活動がさらに活発化していることを挙げています。一方で、経済状況が好ましくないことで、中価格帯の住宅プロジェクトの需要の伸びは、中期的に影響を受けそうだとも述べています。



■ホスピタリティ


・観光省(DOT)は、2022年に設定した外国人渡航者数の目標170万人から、2023年は約50%増加すると見込んでいます。一方で、2022年の外国人渡航者数の実績値は、240万人を超えるとされています。2023年は、少ない場合で260万人、多い場合では640万人の外国人渡航者を見込んでいます。DOTは、海外からの観光客を呼び込むためには、観光インフラを整え、団結してデジタル化・コネクティビティを確立し、国全体の観光体験を強化して、均等に商品開発を進めることの重要性を強調しています。


・旅行・観光産業は、力強い成長の道を歩んでおり、今年は今まで禁止されていた路線の再開などを背景に業績が伸びそうだとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。海外からの観光客、MICEイベントの再開、力強い国内観光などが、ホテルおよび宿泊施設の稼働率を押し上げるとみられています。



■工業/物流


・2023年のフィリピンの経済成長をけん引するのはサービス業界、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)業界、および半導体ならびにインフラ業界だとみられています。2022年第3四半期、サービス業は業界の中で最も急速な9.1%成長を記録、フィリピンの国内総生産(GDP)に最も貢献した業界でした。サービス業界は、デジタル技術の発達を受けて、さらに成長するでしょう。そのためには、国内のインターネットインフラを整備することは、その可能性を最大限に活用するには必須だと考えられています。一方で、中国企業への半導体の輸出を実質的に禁止する規制の恩恵も受けそうです。アメリカの半導体メーカーを国内に呼び込みたい考えです。また、フィリピンの電子製品の輸出も堅調に推移しています。2021年に12.9%、459.2億USドルに達し、国内の輸出額の6割を占めてナンバー1となっています。BPO業界は、直接雇用を2028年までに110万人にする計画で引き続き雇用創出に貢献しています。インフラ部門への投資もまた、国内のインフラを近隣諸国に追いつくレベルにするための優先課題となっています。


・国内でデジタルエコノミーが爆発的に進んでいることを受け、工業不動産部門の長期投資目標の達成は堅そうです。Eコマース企業からの需要を補いつつ、製造業と貿易業の再び活発化していることで、不動産投資家は新たな恩恵を受けそうだとクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。



■小売


・物価および金利の上昇に加え、ペソ安が進んでおり、消費者信頼感指数(CCI)は、2022年第3四半期の-12.9%からさらに悪化して-14.6%となりました。CCIが2020年第3四半期に-54.5%という急激なマイナスを記録して以来、10四半期連続のマイナスとなりました。2023年第1四半期についても、前回の13.4%から9.5%へと指数が悪化しており、今年1年間の見通しが33.4%から21.7%に下がったことを反映しているようです。企業の信頼感指数も、2022年第3四半期の26.1%、1年前の39.7%から第4四半期は23.9%に下がりました。今年1年間についても、財務状況および資金調達が厳しくなるとの予想から、前回の57.7%から46.2%へと指数が悪化しました。


消費者、企業ともに信頼感が冷え込んでいるにもかかわらず、客足がパンデミック前のレベルまで戻りつつあることを受けて、クッシュマン&ウェイクフィールドは、今年の小売部門はより好調な業績を収めるだろうと予想しています。Eコマースへの注目が続くことで、小売ブランドは、実店舗とオンラインの融合による恩恵を受けるだろうと述べています。



(出所:Cushman & Wakefield Philippines


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