[フィリピン] 2021年不動産市場見通し(ホスピタリティ、物流、メトロマニラ以外の地域編)

2020年末にご紹介した、総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンの2021年フィリピン不動産市場の見通しの続きをご紹介していきます。

[フィリピン] 2021年不動産市場見通し(ホスピタリティ、物流、メトロマニラ以外の地域編)


2020年末にご紹介した、総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンの2021年フィリピン不動産市場の見通しの続きをご紹介していきます。


総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンは、景気および世界のCovid-19との戦いに希望のもてるニュースが出てきており、このトレンドがフィリピン不動産にもポジティブな影響を与えるだろうと述べています。フィリピン経済も不動産業界も、力強い基盤を持っており、コリアーズ・フィリピンは不動産市場の世界景気後退後の立ち直りに対して前向きです。


■ホスピタリティ

レジャー業界はパンデミックの影響引きずる

フィリピンのレジャー業界は、Covid-19パンデミックと渡航制限の影響に引き続き苦しみそうです。ホテル部門もまた、デベロッパーが回復の遅れを予想しているので、新規プロジェクトの完成遅れに直面しそうです。


観光省(DOT)によると、2020年の1月~10月の訪フィリピン観光客数は、渡航制限により81%減のたった132万人となりました。観光収入もまた80%減の810.5億ペソとなりました。前年同期は3,989.3億ペソでした。


今後12か月間は、外国人観光客数も冷え込んだ状態が続くとみられています。有効なワクチンが展開されるまで、旅行を警戒する動きが続くことが予想されるからです。コリアーズは、これがホテル稼働率と平均客室単価(ADR)に影響を与えるとみています。


2020年前半、コリアーズによると、メトロマニラのホテル稼働率は、2019年後半期の71%から25%まで落ち込みました。世界的な渡航制限によるものです。ロックダウン中のホテル利用客のほとんどは、海外から戻ってきたフィリピン人労働者(OFW)、医療関係者、および首都圏の公共交通機関が止まったことにより毎日の通勤が難しくなった会社員でした。


2020年から2022年にかけて、コリアーズは、約6,100室が新規で完成すると予想しており、新規供給も来年から回復してくると予想しています。また、2021年には稼働率も戻ってくるだろうと述べていますが、新規供給が増えてくるにもかかわらず、外国人観光客は冷え込んだ状態が続くとみられることから、50%以下にとどまるだろうとしています。平均客室単価は、2020年に約30%減したところから、2021年は約5%ほど回復するだろうと予想しています。DOTは国内観光キャンペーンとアジア域内のCovid-19を抑え込んだ国との「トラベルコリドー(自主隔離を必要としない措置)」の実施を積極的に進めており、それらの活動が回復に効いてくるとみられています。


ホテル事業者は他の賃貸モデルについても検討していくべき

コリアーズは、ホテル事業者に対して、よりアジャイル(機敏)に、他の賃貸モデルの可能性も検討し、ホテル内のスペースをコリビングやフレキシブルワークスペースに転換するべきだと提言しています。また、今回のパンデミックにより、現代的なテクノロジー(鍵なしチェックイン、スマートルーム制御や24時間モバイル接続など)を活用してカスタマーエクスペリエンスの向上につながるような革新的なサービスを展開していく必要性があることを浮き彫りにしたとも指摘しています。


■物流

デベロッパーは物流のオポチュニティをつかむべき

消費者がオンラインショッピングに移行する動きが進むにつれ、コリアーズは、小売業者の間でEコマースサイトと実店舗を融合させていくオムニチャネル化の動きが進むのではないかと予想しています。モール事業者および小売業者は、物流会社や倉庫デベロッパーとの提携関係を強化して、エンドユーザーまで商品を確実に届けられるような動きも進むでしょう。


コリアーズは、倉庫の健全な需要レベルが家庭の支出にけん引された経済に支えられていくと予想しています。国内の倉庫投資の増加にも現れているように、より多くのデベロッパーが物流業界の成長可能性を利用していくだろうとも述べています。フィリピン統計局(PSA)のデータによると、2020年前半期の外国投資承認額のうち、過去最高の33%(148億ペソ)が輸送・倉庫関連でした。


コリアーズはまた、デベロッパー各社に対して、倉庫の近代化、低温貯蔵倉庫の建設、コワーキング/フレキシブル倉庫の開拓、空いたモールやオフィススペースをフルフィルメントセンター(通信販売で注文を受けた商品の発送センター)への転換などにより、オポチュニティの最大化に務めるべきだと提言しています。デベロッパーの中には、すでに店舗スペースをマイクロ倉庫に転換する計画を発表している会社もあるようです。このような施設への需要は、Eコマースに移行するテナントにけん引されるでしょう。このような施設を構えるロケーションの候補としては、ケソンシティ、マニラ、パシッグ、マカティ、パサイ、モンティンルパ、マリキナなどがあります。


コリアーズは、パンパンガ州の倉庫供給として約73,600平米、カヴィテ-ラグーナ-バタンガス(CALABA)回廊は約816,100平米と予測しています。供給量の半分以上(825,800平米)は依然としてメトロマニラにあります。2020年第4四半期には、賃貸可能倉庫スペース約179,800平米がメトロマニラ内にあるということです。


■メトロマニラ以外の地域

◎ダバオ

ダバオはレジデンシャルハブとしての地位を継続

コリアーズはまた、ダバオ市について、その競争力の高さから、ミンダナオでも好まれるレジデンシャルハブとなっていることにも触れています。同社は、ドゥテルテ大統領の任期が終了しても、不動産投資ハブとしての魅力を継続するだろうと述べています。


2017年から2019年のダバオ市内の高層プロジェクト成約件数は、年間平均5,300戸に達し、2014年から2016年の2,500戸の2倍超となりました。2020年前半期には、中所得セグメントのプロジェクトが、売上の60%を占めています。コリアーズは、パンデミックの封じ込めに成功すれば、この中所得セグメントが2021年の成約件数の回復に一部貢献することになりそうだとみています。


コリアーズはまた、2020年のオフィス賃貸活動は減少方向になったものの、2021年の回復は、従来企業およびアウトソーシング企業からの需要に支えられそうだと述べています。というのも、ダバオは、才能ある人材が豊富にあることから、有望なアウトソーシングハブの地位をさらに固めていきそうだからです。オフィススペース成約が改善するにつれ、2021年以降はレジデンシャルユニットの成約件数も回復してくることが予想されています。コリアーズは、今後数年間で、高層、低層に関わらず、タウンシップ内のレジデンシャルプロジェクトを求めるバイヤーが増えてくると予想しています。2021年から2022年の供給のうち約25%が、こういった総合的なコミュニティ内のものだということです。


◎セブ

セブのオフィス空室率のピークは2021年

2021年、コリアーズは、オフィススペースの閉鎖やサイズダウンを図るアウトソーシング企業や第二外国語としての英語(ESL)サービス事業者などが退去することでより多くの空きスペースができ、メトロセブのオフィス空室率は18%ほどに上ると予想しています。しかし、セブITパーク、ビジネスパークなどの主要ハブでは、市場心理が回復すれば、急速なペースで回復が進むだろうと述べています。


コリアーズはまた、メトロセブの新築オフィススペースの完成が206%増の114,100平米になると予想しています。これには、2020年に繰り越しが決まったオフィススペースも含まれています。コリアーズは、2021年まで賃料引き下げの圧力が続くと予想していますが、アウトソーシング企業を中心としたテナント企業が集まってきていることから、セブITパーク、ビジネスパーク、およびその周辺エリアといった主要ビジネス地区では、賃料がより速いペースで回復してくるだろうとも述べています。


倉庫設備への需要はEコマースにシフトするテナントにけん引される

ソロンズ・サービシーズ・グローバル化インデックス2020の結果に基づくと、セブは世界のアウトソーシング先の競争力で15位につけています。フィリピンの都市でトップ100入りしたのは、メトロマニラとセブのみでした。アウトソーシング企業はメトロマニラ以外のロケーションの可能性を探っていることから、メトロセブの競争力および生存可能性は今後も保たれるでしょう。これにより、メトロセブが市場心理が回復すればより多くのアウトソーシング企業を誘致することにつながり、2021年以降のオフィス賃貸のペースを高めることに役立ちそうです。



メトロマニラ外のレジデンシャルハブとして最も競争力のあるセブ

不動産投資先の中でも、2021年力強い回復を見せるとみられているのがセブです。過去数年間に、大規模なレジデンシャル、オフィス、リテールおよびホテル開発で、セブのスカイラインは変貌を遂げてきました。セブの不動産ブームは、メトロマニラより割安に、都会のペースのビジネスライフスタイルを送る選択肢を与えてくれます。


セブの不動産業界には、地方デベロッパーだけでなく、全国規模のデベロッパーも積極的に参加しています。特にセブのレジデンシャル市場はこれが顕著です。総合的なコミュニティ、高級リゾート試行のコンドミニアム開発などの需要の高まりを、大手企業の参入が補完しています。一方で、土地付き住宅や土地のみのプロジェクトへの需要も安定的に推移しています。
 

メトロセブ内の年間発売戸数は、2013年から2019年にかけて6,900戸に達し、年間の成約件数は6,300戸となっています。新規供給も2019年には過去最高の10,455戸に達し、それを負うように同年の成約件数も過去最高の9,526戸となっています。


2020年第2四半期の時点で、セブのコンドミニアムプロジェクトは在庫の90%が売れました。土地付き住宅市場では、2011年から2019年にかけて年間3,550戸がセブで発売された一方で、年間3,600戸が売れています。


コリアーズは、今後数年のセブのレジデンシャル市場の競争力は、メトロマニラを拠点とする企業の事業継続計画、総合的なコミュニティ開発、および公共インフラプロジェクトに主に依存することになりそうだと述べています。


(出所:Business Inquirer
(トップ画像:Photo by xavier summer on Unsplash )


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(前半)2021年フィリピン不動産見通し - 2021年の景気回復とともに