[フィリピン] 2021年までに上場済みのREITはここ!商業不動産ポートフォリオ拡大

2022/02/01


2021年までに、フィリピンでは5社のREITがデビューを果たしました。その特徴やポートフォリオをまとめてみましたので、詳しく見ていきましょう。



アヤラランドREIT(AREIT)


2020年7月27日上場で、新規株式公開(IPO)の価格は1株当たり27ペソ(約59.1円)でした。AREITのポートフォリオの当初の評価額は136億ペソ(約298億円)で、アヤラ・ノース・エクスチェンジマッキンリー・エクスチェンジ、ソラリス・ワンで構成されていました。上場以降、AREITは追加の物件を取得しており、代表的なものに、ザ・サーティエス・コーポレート・センター(パシグシティ)、ラグーナ・テクノパーク内の土地区画、およびテレパフォーマンス・セブなどがあります。



さらに、2021年10月、実業家ハイメ・ソベル・デ・アヤラ氏と一家が率いるアヤラランドは、オフィスとリテール物件155億ペソ相当を、AREITに譲渡しました。



今回譲渡された資産は、総賃貸可能面積205,000平米で、AREITのポートフォリオを60%拡大し549,000平米にまで引き上げます。これらの物件は、メトロマニラ、首都の南にあるラグーナ州、フィリピン中央部のバコロド市に位置しており、2021年第4四半期から、AREITの賃料収入に貢献しています。



これらの物件の支払として、AREITは4億8,330万の新株を、一株当たり32ペソ(約72円)でアヤラランドに発行します。これにより、アヤラランドのAREITにおける持株比率は50.1%から66%に上昇します。アヤラランドは、「商業資産の取り込みは、アヤラランドがAREITのスポンサーとして、より大きく、より多様化したポートフォリオを形成するというAREITの成長計画を支援するためのアヤラランドのコミットメントの一部です。」とアヤラランドは説明しています。



アヤラランドからAREITに譲渡された商業不動産でも最大はケソン市のヴェルティス・ノース(Vertis North)です。3つのオフィスタワーから構成され、オフィスタワーの総賃貸可能面積は合計で125,507平米、低層(ポディウム)部のリテール面積は39,305平米です。現在97%が埋まっているオフィスタワーには、グーグル・サービシーズ・フィリピン(Google Services Philippines)をはじめ、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)企業が数多く入居しています。



さらにアヤラランドからAREITに譲渡された物件には、アヤラランドがラグーナ州のサンタロサに開発したレジデンシャルおよび商業不動産を含むエコタウン「ニュヴァリ(Nuvali)」のエヴォテック・ビルディング(Evotech Building)2棟があります。オフィスタワーの総賃貸可能面積は23,723平米で、現在稼働率は100%です。IBMビジネスサービス社などが入っています。



AREITに譲渡された物件には他に、フィリピン中央部の西ネグロス州のバコロド・キャピトル・コーポレート・センターアヤラ・ノースポイント・テクノハブ、マカティCBDとマニラ南部のアラバンにそれぞれオフィスビル1棟ずつがあります。



フィリピン初のREITとなったAREITの株式は、2020年8月の市場デビューから48%値上がりしています。



▶過去1年の株価の推移


(出所:Forbesフィリピン証券取引所




ダブルドラゴンREIT(DDMPR)


2021年3月19日上場で、IPO価格は、1株当たり2.25ペソ(約4.9円)でした。ダブルドラゴンREITのポートフォリオには、以下のようなものがあります。



ダブルドラゴン・プラザ(総賃貸可能面積:139,240平米):2017年営業開始の11階建てのタワー4棟で、1階にはリテール、2~3階は駐車場、5~11階はBPOのオフィスとなっています。1階のリテール面積は約11,377平米で、飲食、基本的サービス、スーパー、フードホールが入ります。


ダブルドラゴン・センター・イースト(総賃貸可能面積16,197平米):2019年営業開始の11階建てのタワーで、1階にはリテール、地下と2階は駐車場、3~11階はオフィスです。1階のリテール面積は約1,073平米で、飲食と銀行が入っています。

ダブルドラゴン・センター・ウェスト(総賃貸可能面積:16,815平米):2019年営業開始の11階建てのタワーで、1階にリテール、地下と2階に駐車場、3~11階がオフィスとなっています。



それ以外に、DDメリディアン・パークが建っているフリーホールドの土地(47,474平米)も所有しています。DDメリディアン・パークは、ダブルドラゴン・タワー、アスコット・DDメリディアン・パークを含む、一流の商業不動産が含まれています。



ダブルドラゴン・タワー(総賃貸可能面積:37,958平米):ベイエリアとパサイ市を眺めるDDメリディアン・パークに開発中の11階建ての建物です。8フロアがオフィス用で、2フロアがリテール、レストラン、その他エンタメ用(2,786平米)となっています。

アスコット・DDメリディアン・パーク:DDメリディアン・パークの第4期となる、高級サービスレジデンスであるアスコット・DDメリディアン・パークは、現在建設が進められており、2022年中に完了予定です。



さらに、ダブルドラゴン・プロパティーズとファストフードチェーンのジョリビー・フーズ(JFC)は、2022年内に国内「初&最大」の工業REITの立ち上げを計画しています。



REITの上場は、ダブルドラゴンの工業リース部門である「セントラル・ハブ・インダストリアル・センターズ社」を通して行われ、ポートフォリオには、倉庫、売店、冷蔵・冷凍設備、物流配送センターなどのための工業倉庫コンプレックスが含まれています。



▶過去1年の株価の推移


(出所:DDMPRBusiness World Onlineフィリピン証券取引所




フィリンベストREIT(FILRT)


2021年8月12日上場で、IPO価格は1株当たり7ペソ(約17.5円)でした。ポートフォリオには17棟の建物が含まれ、うち16棟はアラバンのノースゲート・サイバーゾンに、1棟はセブITパークのリテール店舗付きオフィスタワーです。



フィリンベストは2021年11月18日声明を発表し、セブ市のフィリンベスト・セブ・サイバーゾーン・タワー2、マカティ市のフィリンベスト・アクシスタワー2PBコム・タワーを、1年~1年半の間にREITに取りこみ、総賃貸可能面積を300,000平米超から403,000平米にまで引き上げる方針です。



▶過去1年の株価の推移


(出所:Business World Onlineフィリピン証券取引所




ロビンソンズランド・コマーシャルREIT(RLR)


2021年9月14日上場で、IPOの価格は1株当たり6.45ペソ(約14.1円)でした。最終提示価格ベースでは、国内最大規模のREITとなり、時価総額は642億ペソ(約1,406億円)です。マカティ、ボニファシオ・グローバル・シティ、オルティガス、ケソンシティ、メトロセブ、メトロダバオ、ナガ、タルラックなどの主要な都市やCBDにプレゼンスがあり、最も「地理的に多様な」ポートフォリオを誇っており、14棟の商業不動産物件、賃貸可能オフィス面積425,000平米で構成されています。



RLRは、さらに今後1年半で、40,000から100,000平米をREITに取り込む計画です。スポンサーであるロビンソンズランドは、以前に、今後RCRに取り込む可能性のある不動産は、オフィス事業のポートフォリオ単体で422,000平米になると述べています。



RCRの3か年投資計画では、RCRは、メトロマニラおよび主要地方商業ハブの中心業務地区(CBD)にあるグレードAの資産に注力していくことにしています。



RCRの主な戦略としては、収益を生む商業不動産で、主にオフィス用として賃貸されている資産の多様なポートフォリオに投資していくことです。



▶過去1年の株価の推移


(出所:Philstarフィリピン証券取引所




メガワールドREIT(MREIT)


上場は2021年9月30日に予定されていましたが、予想を上回る需要により、10月1日に変更されました。MREITのIPO価格は1株当たり16.1ペソ(約35.3円)でした。物件評価額は556億ペソ(約1,218億円)で、224,430平米の賃貸可能スペースで構成されています。MREITのケヴィン・タン社長は、同社のポートフォリオのテナントのほとんどはビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)企業だとコメントしています。



2021年11月16日の声明で、MREITは、総賃貸可能面積を25%増加させ、224,431平米から280,131平米に引き上げる物件の取得を行うことを発表しています。取得は、2022年末までに終了させ、2023年1月にはREITの収益に貢献させることができそうです。



取得しようとしている物件には、イロイロ・ビジネス・パークのツー・テクノプレイス(Two Techno Place)、スリー・テクノプレイス(Three Techno Place)、ワン・グローバル・センター(One Global Center)、タギッグ市のフォート・ボニファシオにあるマッキンリー・ヒルのワールド・ファイナンス・プラザ(World Finance Plaza)があります。これらの取得の対価は91億ペソ(約206億円)、MREITの不動産価値は19%増えて585億ペソ(約1,325億円)となります。MREITによると、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)企業のおかげで、これらの物件の平均稼働率は99%だということです。


▶過去1年の株価の推移


(出所:MREITフィリピン証券取引所

(画像:Photo by Alexes Gerard on Unsplash