[フィリピン] 第1四半期の成長率力強く

2022/05/11


フィリピン経済は、年初のオミクロン株による感染者急増にも耐え、第1四半期も成長を維持しそうです。エコノミストの予想では、前年同期比で5.5%から高いもので8.3%となっています。



5月12日に発表される第1四半期終了時点の国内総生産(GDP)を前に、フィリピンを見ているエコノミストたちは、多額の負債に財政赤字、消費者支出を冷え込ませる可能性のあるインフレに加えて、大統領選もあり、フィリピンの今年の景気回復に向けた勢いを減速させる可能性があると指摘しています。



5月8日、社会経済企画庁のカール・ケンドリック・チュア長官は、フィリピン経済が今年パンデミック前のレベルに戻るだろうと話しています。



国家経済開発庁の長官でもあるチュア氏は、すでに第1四半期のGDPがパンデミック前のレベルに戻ったかという問いかけに対しては、フィリピン統計局の正式なレポートを待つとしました。




急騰する物価


現地ニュース「Inquirer」が集めた18の第1四半期のGDP成長率予測のうち、フィリピンアイランド銀行のエミリオ・ネリJr.氏が最も高い8.3%の予想でした。



しかし、ネリ氏は、ロシアのウクライナ侵攻によりもたらされた「貿易ショックと高騰する物価が需要に与える影響」により、特に石油価格が1バレルあたり100ドル近くに留まるのであれば、2022年通年の成長予測は、前回の7~7.5%から下がって、6~6.5%程度になるだろうと述べています。




経済の再開進む


フィリピン政府は、厳しいパンデミック対策を緩和し、大規模接種を加速させることで、さらなる経済の再開を背景として、今年の成長率目標を7~9%に置いています。しかし、Inquirerが調査したエコノミストの多くは、2022年の実際の成長率は、目標を下回る可能性があると述べています。最も厳しい予測をしたのは、経済リサーチ・コンサルティングを行うパンテオン・マクロエコノミクスのミゲル・チャンコ氏の4.5%でした。



最も楽観的な予測となったキャピタル・エコノミクスのアレクス・ホームズ氏の予想7.5%でさえも、政府の目標レンジの下限に近い数値です。「私たちのトレンドの上を行く今年の7.5%予測でさえも、パンデミックがなかったら今年末に達成したであろうGDPから13%低くなる予想と一致します。」とロンドンを拠点とするシンクタンクのキャピタル・エコノミクスは5月6日のレポートで述べています。



2022年第1四半期のGDP成長率の予測は、エコノミストによってかなりばらつきが見られました。(以下、前年同期比)

7.6%:アテネオ・デ・マニラ大学 ペルシバル・ペニャ-レイェス氏

7.4%:フィリピンナショナルバンク アルビン・ジョセフ・アロゴ氏

7.2%:ゴールドマンサックス・エコノミクス・リサーチ

7.0%:レジーナ・キャピタル ルイス・ジェラルド氏、リサール商業銀行 マイケル・リカフォルト氏、セキュリティ銀行 ロバート・ダン・ロセス氏、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス ラジーヴ・ビスワス氏

6.9%:サンライフ・ファイナンシャル パトリック・エラ氏

6.7%:キャピタル・エコノミクス アレクス・ホームズ氏 

6.5%:BDOユニバンク ジョナサン・ラベラス氏 

6.3%:チャイナバンク ドミニ・ベラスケス氏、オックスフォード・エコノミクス マコト・ツチヤ氏 

6.2%:DBS ハン・テン・チュア氏 

6.1%:HSBCグローバル・リサーチ、ING ニコラス・アントニオ・マパ氏 

5.9%:パンテオン・マクロエコノミクス ミゲル・チャンコ氏



フィリピン・ユニオンバンクのルベン・カルロ・アスンシオン氏が、第1四半期としては最も厳しい前年同期比5.5%を予測しています。しかし、フィリピンが戦後最悪の不況を経験し、Covid-19隔離措置が長引いたことで2021年第1四半期にまでもつれこんだ1年前のGDP縮小を考えると、それでも「十分強固だ」と語ります。



ペニャ-レイェス氏は、通年の成長目標7~9%を「達成するのは難しいかもしれない」と話します。



ペニャ-レイェス氏は、「先進国はパンデミックへの適応を始める中、長引く港湾の混雑やサプライチェーンの混乱が、生産高の伸びへつながることを阻んでいます。これらがインフレを加速させ、多くの発展途上国では、平均の二倍超になっています。中央銀行はインフレ対策として利上げを行うことで金融政策を引き締めなくてはなりません。」



「すでに原油価格の高騰とそれによるインフレ加速など向かい風をすでに感じています。6月までに、BSP(フィリピン中央銀行)は利上げを行うでしょう。ペソは1年前と比べて10%ほど弱くなっています。食料を含め、国は輸入に頼っているので、物価上昇は私たちの経済にも入り込んでくるでしょう。」とペニャ-レイェス氏は加えています。




(出所:Business Inquirer

(画像:Photo by JR Padlan on Unsplash )