[フィリピン] POGOの退去でPEZA認可オフィスはどうなる?

2020/10/12

[フィリピン] POGOの退去でPEZA認可オフィスはどうなる?


フィリピンのオフィス市場、レジデンシャル市場を盛り上げてきたオンラインカジノ業者(POGO)ですが、新型コロナウィルス(Covid-19)の感染拡大を受けて減速気味です。総合不動産サービス会社コリアーズの記事をご紹介していきます。


オンラインカジノ業者(フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO))がフィリピン市場に現れた2016年以来、130万㎡ものオフィススペース取引が行われ、メトロマニラのオフィス在庫の11%を占めるまでに成長しました。


そもそもPOGOとは、オンラインのギャンブルサービスを外国人向けに提供する企業を指します。ポーカー、ブラックジャックや、ルーレットなどですが、インターネットを通じて、スクリーンに現れるバーチャルディーラーによって行われます。そのギャンブルの多くが中国人プレイヤーを相手としているため、POGOおよびPOGO関連サービスで働く中国人従業員はその数を増やし、オフィス、レジデンシャル市場をけん引してきました。POGOがフィリピンに現れたのは、2003年頃ですが、実際にフィリピン政府がフィリピンゲーミング公社(PAGCOR)を通じて取り締まりを強化したのは2016年です。


成長するPOGOに、メトロマニラのあちこちで、PEZA(フィリピン経済特区庁)認可ビルも、PEZA認可外ビルも力強いPOGOの需要を歓迎しました。もっともPOGOのオフィスが集中するのは、ベイエリア、マカティ、アラバン、ケソンシティ、そしてオルティガスです。これらの地域では、4年間の間に平均賃料が10%から、多いところで50%近く上昇しました。コリアーズの情報によると、34万㎡、すなわちPOGOの取引の27%がPEZA認可ビルで、これによりビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)企業の拡大が幾分抑えられる形になりました。


▼2016年以降のPOGO関連取引のうちPEZA認可スペースの占める割合(出所:Colliers)
紺色:2016年以降のPOGO取引、水色:POGO関連PEZA認可スペース

左から、ベイエリア、マカティ周辺、アラバン、ケソンシティ、オルティガス周辺、マカティCBD、オルティガスCBD、その他、マッキンリー、BGC


新型コロナウィルス(Covid-19)の感染拡大封じ込めのために、2020年3月中旬にメトロマニラでロックダウンが始まって以来、コリアーズによると、POGO関連のスペース約123,000㎡が市場に戻っているようです。従業員の移動に影響を与える渡航制限、隔離期間中の営業継続のための納税義務、そして中国のオンラインカジノ取締りなどが、POGOの縮小の主な要因となっているようです。2020年8月時点で空きの出たスペースを元に、コリアーズはメトロマニラのオフィス空室率が2020年末までに7.0%に達すると予想しています(2020年後半期に完成する新築オフィスは含んでいない)。


▼PEZA認可ビルに占めるPOGOが占有するスペース(出所:Colliers)
水色:PEZA認可ビルを退去したPOGO、グレー:PEZA認可ビルに残っているPOGO、紺色:2022年まで残っているPEZA認可スペース供給


2016年以降、PEZA認可のオフィスビルが不足していること、さらに2019年6月に、メトロマニラに新規のPEZAゾーンの認可を禁止する行政命第18号が発行されたことで、賃料は人工的に上昇しました。しかし、POGOがPEZA認可スペースを手放したことで、PEZA認可スペースに54,000㎡ほどの余裕ができ、Covid-19パンデミックに加わって賃料にさらに下向きの圧力をかけています。


建物ごとの賃貸可能面積は、1,000㎡~33,000㎡までと様々で、完全に内装がされた状態で現状有姿の引渡しとなります。これらのスペースは、アラバン、ケソンシティ、オルティガスなどで見られます。コリアーズは、フィリピンにおけるPOGOの規模が今後も減少を続ける場合、現在POGOが契約しているオフィススペースが、PEZA認可スペースのうち294,000㎡ほどあります(POGO以外の退去も含む)ので、BPO企業が移転先として、または一時的なオフィス需要のために利用する機会ができそうだと述べていますす。


(出所:ColliersEsquireThe DiplomatPAGCOR

(トップ画像:Photo by Macau Photo Agency on Unsplash