[フィリピン] ゆっくりだが着実に戻りつつあるPOGO

2022/07/04


過去2年間で初めて、フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者(POGO)業界が、ゆっくりではありますが戻りつつあり、しばらく借り手のいなかったオフィスやレジデンシャル物件の契約を始めているようです。



不動産コンサルティング会社 リーチュウ・プロパティ・コンサルタンツ(Leechiu Property Consultants)のデイヴィッド・リーチュウ氏は、2021年12月半ばより2022年2月まで、オミクロン変異株によるCovid-19感染者数が再増加したものの、今年の1月から5月までの5か月間で、276,000平米の新規オフィス賃貸を記録したと述べています。


リーチュウ氏は、2022年第2四半期のオフィス不動産需要は、2020年1月以来最高になると見込んでいます。


「回復への道筋をたどっているようですね。オミクロン2によって、方向性が変わることはなさそうです。この伸びが止まったとしても、ごく一時的なものでしょう。人々が回復するにつれて、この上向きの需要は継続するものと見られます。市場心理は、完全にテナント市場の見方から変わって来ています。」とリーチュウ氏は述べています。


オフィススペース需要のほとんどは、情報技術・ビジネス・プロセス・マネジメント(IT-BPM)業界からのものでした。IT-BPM業界は、財務的なインセンティブを継続して受けるためには、オフィス勤務に戻るようにと政府から指示を受けています。


4月から5月までの間だけで、リーチュウ・プロパティ・コンサルタンツは、21,000平米のオフィススペースがPOGOによって成約されたと推定しています。


最後に新規でPOGOのオフィス賃貸取引があったのは、政府がCovid-19の国内感染拡大を抑え込むために厳しいロックダウンを行う前の2020年の第1四半期です。


ピーク時、POGO業界は、主要なオフィス所有者のパンデミック前のポートフォリオの10~15%を占めていました。POGOが雇用するのは、主に中国本土の労働者です。これらの労働者たちは、レジデンスを賃貸し、消費者支出にも貢献しました。


過去2年間で、POGOが退去したフィリピン国内のオフィススペースは500,000平米に上ります。この退去を加速させたのは、フィリピン国内の税制変更、中国のオンラインカジノに対する取り締まり強化、そしてロックダウンの開始に伴い国境を超える渡航の制限が重なったことです。


しかし、最近になって、渡航制限が緩和され、中国国籍の人々が戻りつつあります。


「これは非常に有望です。まだそんなに数はありませんが、徐々に戻ってきて、寮として使うスペースを契約し始めているようです。」とリーチュウ氏は述べています。


POGOの中には、パンデミックの期間オフィススペースから立ち退いたものの、賃料だけは払い続け、今になってまた入居しようとしている事業者もあるようです。


「事業者の中には、家賃滞納した者もいますが、それでも戻ってきています。誰も元のオフィススペースを賃貸する人がいなかったので、元の場所をまた取り戻したのです。」とリーチュウ氏は話しています。家主はオフィススペースを早く埋めたいので、家賃滞納に対して柔軟に対応しているようです。


POGO法が2021年に制定され、すべてのオフショア・ゲーミング・ライセンス事業者は、総ゲーミング収益(gross gaming revenue)、つまりゲーミング事業から得られた収入に対して、5%のゲーミング税を支払わなければなりません。


また、POGOライセンス事業者およびそのサービス事業者に雇用された外国人は、総所得に対して25%の最終源泉税(final withholding tax)を支払わなくてはなりません。これには、当該個人の課税対象月の最低最終源泉税が12,500ペソ(約30,600円)を下回らないことが条件となります。また、この新しい法律では、POGOライセンス事業者およびサービス事業者の従業員に対して、納税者番号(TIN)の取得を求めています。


「この税制の下で事業を行いたいPOGO事業者もいれば、これを高すぎると感じる事業者もいるようです。しかし、労働者の観点でいうと、同化できるという点で、POGOはフィリピンを気に入っていると思います。」とリーチュウ氏は述べています。


POGOが以前と同じような規模で戻ってくる可能性はあるか、という質問に対しては、リーチュウ氏は、必ずとは言えないが、「十分に」起こりうる、と話しています。


「もちろん、今回の政権はかなり親中派ですが、だからといって反米だというわけではありません。私は、新しい政権は、西洋と東洋の間でのバランスを保とうとしているのだと思います。そして、それはフィリピンに来る中国人投資家にとっていいことだと思いますし、その中にはPOGO業界も含まれると考えています。」とリーチュウ氏はコメントしています。



(出所:Business Inquirer