[マレーシア] ポジティブな市場心理がクランバレー市場を活性化(KL・セランゴールオフィス市場)

2023/04/06


不動産サービス会社ナイトフランク・マレーシアによると、クアラルンプール郊外とスランゴールのオフィスで稼働率に若干の下落があったものの、クランバレーの2022年第4四半期のオフィス市場は全体として安定的でした。



2022年第4四半期のオフィス供給は、クアラルンプール郊外のモントキアラでMETコーポレートタワーズ(The MET Corporate Towers)が、スランゴールではペタリン・ジャヤのエンパイア・シティ(Empire City)が加わったことで、稼働率がそれぞれ1.9%、1.1%とわずかに下落しました。



METコーポレート・タワーズは、モントキアラでは初となる区分所有のプレミアグレードのオフィスビルで、約80平米から約1,496平米の執務スペースを提供しています。マレーシア最大のコンベンションセンターである「マレーシア・インターナショナル・トレード・アンド・エキシビションセンター(MITEC)」直結で、将来完成するMRTの駅からは徒歩5分です。また、ビジネスセンター、ジム、ガラス張りのファンクションホールや講堂などの設備があります。



一方で、エンパイア・シティ・ダマンサラという総合開発の一部となるHCKタワーは、38階建てのグレードAライフスタイル&ビジネスタワーで、23万平米超の面積を誇る4フロアのリテールモールの上にあり、地下3フロアには屋根付きの駐車スペースを備えています。HCKタワーの周りには、ショッピングモール、商業ハブ、大手企業などが立ち並び、主要高速道路(ダマンサラ-プチョン高速道路、新クランバレー高速道路、スプリント高速道路、ペンチャラ・リンク接続道路、最近完成したダマンサラ-シャーアラム高架高速道路)でのアクセスが便利です。



ナイトフランクのデータによると、クアラルンプール市内の現在のオフィススペース供給は推定539万平米、続いてクアラルンプール郊外が278万平米、スランゴールが241万平米、合計1,058万平米となっています。



一方で、2023年2024年に完成予定の建設中オフィススペースは、クアラルンプール市内が約27万平米、クアラルンプール郊外が約20万平米、スランゴールが約14万平米、合計約61万平米となっています。



全体として、クアラルンプールおよびスランゴールのオフィスの成約率はプラスで、オフィス部門におけるポジティブな心理を示しています。



2022年第3四半期から第4四半期にかけてのオフィス賃料も全体として横這いでしたが、クアラルンプール郊外でわずかに上昇がみられたということです。



新CBD(76.3リンギット/平米)、旧CBD(48.1リンギット/平米)、KLCC周辺(42.0リンギット/平米)と2022年第3四半期から賃料は変化ありませんでしたが、唯一、モントキアラ・ドゥタマスエリアのタマン・トゥン・Drイスマイルのみ、前期比3.1%増の54.1リンギット/平米となりました。クアラルンプール郊外と同様、スランゴールのシャーアラムのみ賃料がわずかに上昇、一方で、ペタリン・ジャヤのオフィス賃料はやや減少となりました。



クランバレーのオフィス市場は、オフィススペースの追加と目立ったオフィス需要のけん引者がいないことから、中期的に厳しい状態となりそうです。



世界的にテック関連企業の一時解雇が進んでいることで、大手テック企業のオフィススペース拡大の動きは減速しています。テック業界は大きな業界ですが、全体としてオフィス市場の動きは依然としてダイナミックで、この機会を利用して中小企業が拡大の可能性を探っています。



質への逃避も続いています。多国籍企業は、ESG(環境、社会、ガバナンス)の認知が高まったことで、グレードAかつグリーンなビルにオフィスを構える傾向にあります。



各企業がサスティナビリティ目標を達成しようとする中、グリーン認証のあるビルはますます重要になってきています。



2023年、2024年とオフィススペースの新規供給が見込まれているものの、コワーキングサービス、消費財、医療関連の企業は引き続きオフィス市場において活発な動きを見せており、中期的に成約率や稼働率に貢献すると見られています。



ナイトフランクによると、主にコワーキング事業者、製薬会社、保険会社、FMCG(日曜消費財)企業が、不動産ニーズを評価し、統合するか、拡大するかの判断をしているようです。




(出所:The Edge Markets

(画像:UnsplashのNour Betarが撮影した写真)