2022/05/16
マレーシア・クアラルンプールを拠点とする、MIDFリサーチによると、建設資材コストの上昇を受けて、不動産デベロッパー各社のマージンは、短期的に圧縮される可能性があります。
石油製品価格がセメントや鋼といった建設資材のコストを押し上げました。
原材料コストの上昇は、不動産デベロッパーにとってさらなるコスト増につながります。
MIDFリサーチは、「不動産デベロッパーは、高い建設資材コストを、不動産価格を若干値上げすることで、一部不動産バイヤーに転嫁するだろうと考える一方で、不動産デベロッパーのマージンも短期的にはやや圧迫された状態となるとみています。現在の低迷する不動産市場を考えて、コスト増を全部不動産バイヤーに転嫁できないだろうからです。」と述べています。
マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)のデータによると、2022年3月の、不動産購入のためのローン申し込みは、449億リンギット(前年同期比0.1%増)となりました。前月の2月は、9.2%増でした。
一方で、この449億リンギットは、前月比では56.8%となっています。これは、2月のベースが低いこと、日数が少ないことが背景にあります。
2022年第1四半期の不動産購入のためのローン申し込みは1,081億リンギットとなり、前年同期比で4.06%増でした。
経済の再開を受けて不動産の需要が高まったことで、不動産ローンの申し込みが増えました。
2022年2月に9%の伸びを見せたのちに、3月の不動産購入のためのローン承認額は164億リンギット(前年同期比17.8%増)に増えました。
2022年第1四半期では、19.4%増加して424億リンギットでした。
ローン承認額の増加は、主に、ローン申し込みが多かったことに加えて、ローンの承認率が2021年第1四半期は34%だったのが、2022年第1四半期は39%に増えたことも関係しているようです。
「全体として、承認されたローンの額が多いということは、不動産デベロッパーにとって2022年の新築物件販売の見通しは明るいといえるでしょう。」
MIDFによると、2022年3月のローン申し込みおよび承認額が増えたことは、不動産需要が回復途上にあることを示しており、経済の再開に伴い新築不動産販売がやや改善するという同社の予測とも方向性が合致しています。
「しかし、2022年、不動産デベロッパーは、原材料費の高騰によりコスト増の圧力に直面するとみていますので、不動産業界について「ニュートラル(Neutral)」の格付けを維持することにしています。」
MIDFが「バイ(Buy)」の格付けを付けたのは、マーシン・グループ(Mah Sing Group Bhd)とIOIプロパティーズ・グループ(IOI Properties Group)です。
MIDFは、マーシン・グループについて、建設工事の段階に合わせた支払受領が進むことに加えて、手袋製造部門の寄与もあり、2022年の採算性は高いと強気な予測です。
また、アフォーダブル部門の住宅を建築する戦略を取ることで、2022年の新築不動産販売も好調だと予測しています。
マーシンは、2022年度の新築不動産販売目標として、20億リンギットを置いています。発売物件の総額は24億リンギットです。
MIDFは、IOIプロパティーズ・グループについても前向きな見方をしています。直近の純有形資産(Net Tangible Asset)に対して72%割り引いた一株3.60リンギットで取引されているからです。
経済活動の回復と外国人旅行者の入国受け入れ再開により、投資物件はもちろん、ホテル・レジャー部門の収益も回復してくるとみられています。
中国および国内の開発物件により、グループの新築物件販売の先行きは明るそうです。
(出所:New Straits Times)
(画像:Photo by zanck FL on Unsplash )
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