2022/09/12
総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンは、フィリピン不動産は回復モードにあると述べています。ただし、急速なインフレと利上げがその成長を減速させそうです。
多くの企業がオペレーションを再開し、拡大をする中、フィリピン経済は回復を続けています。この動きは、安定的な雇用にも支えられています。コリアーズ・フィリピンは、不動産市場もこの成長の波にうまく乗れそうだと述べています。
オフィス不動産は、メトロマニラ内外で取引件数が伸びています。マニラ首都圏では、正味成約面積が2四半期連続でプラスとなり、2022年前半期の実績では、コンドミニアムのプレセールおよび成約件数にも改善が見られます。消費者が、支出や渡航に自信を取り戻しつつあることが、モールのスペース成約、リテール賃料、ホテル稼働率などの改善として表れています。コリアーズ・フィリピンは、不動産も経済も回復モードにあり、デベロッパー各社はメトロマニラ外の主要な成長エリアにも力を入れるべきだと述べています。
持続的なGDP成長率
2022年第2四半期のフィリピン経済は7.4%拡大しました。2022年第1四半期の8.2%、1年前の12.1%からは減速しました。2022年1月から6月のGDP成長率は7.8%となり、政府の見直し後の2022年の成長目標である6.5%から7.5%を超えました。フィリピン経済の約70%を占める個人消費は、物価の上昇が消費者支出を抑えるかたちとなり、第1四半期の10.1%成長から、第2四半期は8.6%と減速しました。
続くインフレ
2022年7月、フィリピンのインフレ率は6.4%に上昇し、2018年10月以来の高値となりました。予想よりも高い水準で推移する物価上昇率により、中央銀行は2022年のインフレ率予測を当初の予測4.6%から引き上げて5%とし、利上げを行いました。高まるインフレにより、世帯消費に依存するフィリピン経済の成長を抑えることになりそうだ、とコリアーズは述べています。
オフィス不動産:リース活動徐々に回復
コリアーズによると、2022年第2四半期末時点のメトロマニラのオフィス市場のリース活動は持続的で、2022年前半期では、325,100平米のオフィス取引がありました。1年前の200,700平米から62%増となっています。オフィススペース成約を支えたのは、従来型企業とアウトソーシング企業でした。
また、2022年第2四半期には、146,700平米の新築オフィススペースが竣工を迎えました。2023年から2026年で、コリアーズは年間543,300平米のオフィススペースの完成を予想しています。フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者(POGO)が急増する前の2014年から2016年、年間の供給量は450,000~550,000平米でしたので、この頃の年間供給量に戻りつつあります。POGOが全盛期だった2017年から2019年は、年間のオフィススペース供給量は983,900平米でした。
一方で、空室率は上昇しました。2022年第2四半期の空室率は、第1四半期の17.3%から上昇して17.7%となりました。しかし、コリアーズは、第2四半期の新規供給が146,700平米となり、第1四半期の306,100平米から半分になったこと、さらに第2四半期のオフィス取引件数が第1四半期と比較して多かったこともあって、大幅な空室率の上昇には繋がらなかったと説明しています。また、コリアーズは、2022年末までに、オフィス空室率は、2021年の15.7%から上がって、18.2%に達しそうだとも予測しています。2022年の正味成約面積は、2021年の-273,200平米から一転して350,000平米と予想されています。
2022年第2四半期、マニラ首都圏の平均賃料は、前四半期比で2.6%下落しましたが、第1四半期の3.1%減からはペースを落としました。コリアーズは、2022年の賃料は約7%下落し、2023年から回復を始めると予想しています。
レジデンシャル不動産:プレセール需要復活
コリアーズによると、2022年前半期のレジデンシャル不動産の竣工数は1,290戸と、前年同期比で80%減となりました。2022年後半期には、供給が持ち直して8,800戸ほどが完成するとみられています。ベイエリアの供給量が、2022年の新規供給の約60%を占めています。
一方で、メトロマニラのコンドミニアムのプレセールによる販売件数は、2022年第2四半期に5,500戸に達し、前四半期の3,100戸から増加しました。プレセールの販売開始戸数は6,970戸で、前四半期比で428%増加しました。コリアーズは、2022年の成約件数は、2021年を超えてくると予想しています。
2022年第2四半期、セカンダリー市場の賃料は前四半期比で0.4%と微増し、8四半期連続の下落からわずかに持ち直しました。一方で、価格は前四半期比で0.8%増加しました。
コリアーズは、消費者および企業の心理が改善し、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)からの送金額が持続することで、2022年の残りの期間の不動産需要を支えるとみています。しかし、建設資材の価格高騰と圧迫された利回りが、2022年の残りの期間のメトロマニラのコンドミニアム販売開始を阻みそうです。
ホテル不動産:リベンジ旅行はじまる
観光局(Department of Tourism)のデータによると、2022年前半期終了時点で、フィリピンを訪れた外国人は814,144人となり、2021年前半期の外国人訪問者数58,177人から1,300%増となりました。入国制限が緩和されたことで、外国人訪問者数が増加しました。2022年末までに、観光局は、外国人訪問者数が200万人に達すると予想しています。
国の経済に占める観光業の割合もやや改善し、2020年の5.1%から2021年は5.2%となりました。国内観光が回復を支えています。フィリピン統計局のデータによると、2021年の国内旅行数は3,730万件と、2020年の2,700万件を超えました。
マニラ首都圏の平均ホテル稼働率は、2021年後半期の44%から2022年前半期は47%に上昇しました。コリアーズはこの要因として、出張が徐々に戻っていること、国内旅行者がレジャーにお金を使う傾向が増えていることに加え、ステイケーションの需要増、外国からの旅行者増などを挙げています。
コリアーズは、2022年末までには、50%超に浮上するだろうと予測しています。休暇関連支出や海外で働くフィリピン人の帰国などに支えられそうです。
2022年前半期、コリアーズによると、834室のホテル客室が完成しました。2022年末までには、約1,830室が完成見込みで、これには、、レッド・プラネット・ホテル・ザ・フォート(Red Planet Hotel The Fort)の245室、ランソンズ・プレイス・ホテル(Lansons Place Hotel)の250室が含まれています。2022年から2024年の年間ホテル供給は2,650室で、うち約36%が外国ブランドのものとなりそうだとコリアーズは述べています。
(出所:Colliers Philippines)
(画像:UnsplashのJC Gellidonが撮影した写真)
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