[フィリピン] 経済の主要セグメントとしての不動産

2023/05/11


フィリピンの不動産セクターは非常に循環的で、拡大期、過剰建設期、そしてその後の暴落や価格調整期を迎える可能性があります。2017年から2019年にかけては、コンドミニアムに対する積極的な需要により補完される形で、マニラ首都圏全体でオフィススペースの成約が大幅に進み、不動産セクターのセクターの強みが強調されました。



そう指摘するのは、総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンです。不動産セクターは、フィリピン経済の重要なセグメントの一つであり、フィリピンにとって好材料となる大きな乗数効果をもたらすと述べています。



不動産セクターの主要な柱は、オフィス、住宅、ホテル、小売、工業などのサブセグメントです。コリアーズは、アジア太平洋地域の主要な不動産投資先としてフィリピンの地位を高め、海外の不動産投資家の目に留まり続けるために、これらのサブセクターに外国からの投資を呼び込むことが重要であると指摘しています。



パンデミック以前、フィリピンは徐々に域内の不動産投資先の一つとして位置付けられるようになってきており、外資系不動産会社と現地デベロッパーが提携して、オフィス、住宅、小売、さらにはタウンシップなどのプロジェクトを建設するケースが増えていました。



コリアーズは、国際的なパートナーシップがフィリピン不動産業界の競争力を高めるためには欠かせないと言います。国内外のブランドが増えることで競争が激化し、最終的にはフィリピンの投資家やエンドユーザーに利益をもたらすことになるはずだからです。



しかし、パンデミックにより、大きな投資判断には待ったがかかりました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための行動制限などで、行われるはずだったデューデリジェンスは延期または中止となりました。



コリアーズは、こうした2020年、2021年の大きな混乱を経て、フィリピンはようやく回復しつつあるとして、短・中期的にフィリピン不動産市場がアジア太平洋地域の中でも魅力あふれる投資先となるための重要な要素を挙げています。



1.インフラネットワークの改善とBPO


現マルコスJr.政権による大規模なインフラ支出は、不動産セクター全般に恩恵をもたらすはずだとコリアーズは指摘します。Philstarによると、2022年のフィリピンのインフラ支出は、国内総生産(GDP)の5.8%に相当し、今年については、マルコスJr.政権下の目標であるGDPの5~6%に沿って、GDPの5%相当のインフラ支出が計画されています。



コリアーズは、このような公共事業への支出の増加が、マニラ首都圏以外のサテライトコミュニティの継続的な開発を支えていると見ています。



これらのインテグレーテッド・コミュニティとも呼ばれる統合型コミュニティは、複合施設として開発されているため、単体のプロジェクトよりも優れた価値を提案することができます。そのため、コリアーズは、統合型タウンシップが投資家にとってより魅力的な選択肢となると考えています。



また、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)のテナントも、生活環境・労働環境が整った統合型コミュニティ集まってくるでしょう。



コリアーズは、今後、フィリピンがより多くの外国企業を誘致し、大手外資系デベロッパーとフィリピンの不動産会社のジョイントベンチャーによる、マスタープランに基づくコミュニティ開発案件が増えるだろうと予測しています。



2.上振れ景気


フィリピン経済は、2022年に過去40年以上で最も速い成長ペースを記録しました。これは、過去数十年間、国の好不況のサイクルを反映してきた不動産市場にとって明るい兆しです。



▶フィリピンの実質GDP成長率推移(出所:Philippines Statistics Authorityのデータをもとに作成)


この景気拡大は、2023年のオフィススペースの純増と、マニラ首都圏の中古住宅市場および中古住宅市場の継続的な回復を支えるはずだとコリアーズは述べています。



また、製造業への投資誘致に向けた国家政府の積極的な姿勢により、全国的に工業用スペースの成約も進むだろうと予想しています。



個人消費主導の経済成長は、小売業やホテルの需要にも拍車をかけるでしょう。コリアーズは、デベロッパー各社に対して、持続的な成長に対応するため、マニラ首都圏以外の主要成長地域(パンパンガ、ブラカン、ターラック、カビテ、ラグナ、セブ、バコロド、イロイロ、ダバオ、カガヤン・デ・オロなど)でのプロジェクトをさらに充実させるべきだと提言しています。



今後フィリピンに必要なものは?


フィリピンのマクロ経済の見通しは明るく、コリアーズは、フィリピンが外資系不動産会社の注目の的であることは間違いないと自信を見せています。一方、政府は、事業登録プロセスの改善、汚職の抑制、インフラ整備の継続、労働者のスキルアップなどの改革を実施することで、フィリピンの魅力を維持する努力をしなくてはならないとも指摘しています。



これらの改革実施は、フィリピンが外国人投資家の投資レーダーから外れないようにするために極めて重要であり、フィリピンのビジネスは外国人に開かれているという明確なメッセージを発信すべきだと強調しています。




(出所:Business World Online、Philippines Statistics Authority)