2020/06/11
[フィリピン] 不動産業界、オンラインカジノ業者の閉鎖に備える
フィリピン不動産業界は、新型コロナウィルス(Covid-19)流行の影響で、オフショア・ゲーミング会社やそのサービスプロバイダの中には閉鎖するものが出てくるという可能性に備えています。
オンラインニュースThe Starによると、リーチュウ・プロパティ・コンサルタンツの社長兼CEOであり不動産アナリストのデイヴィッド・リーチュウ氏は、厳しいビジネス環境の中、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータまたはPOGO(ポゴ)と呼ばれる、オンラインカジノ業者や、それらの業者を支えるサービスプロバイダが閉鎖すると、オフィス、レジデンシャルともに大幅に減益となるリスクがあるとコメントしています。
リーチュウ氏は、「不動産市場にとって最悪の事態となりそうだ」と述べています。
リーチュウ氏によると、追加の税負担が発生する今、POGOにとってフィリピンはもはや有意ではなくなり、他の場所へ移動する可能性があるといいます。POGOは、政府の税収を増やしゲーミング収益持分に貢献しただけでなく、不動産、自動車、観光、ホテルその他の関連産業も促進してきました。
現在、国内のオフィス面積の170万平米、レジデンシャルの200万平米をPOGOが占めています。
隔離措置実施期間の部分的なビジネス再開の前提条件として、内国歳入庁(BIR)は、すべてのPOGOに対して、2019年のフランチャイズ税、2020年1月~4月の源泉徴収税、ならびに2019年の法人税の納税証明を提示するように求める通達を出しています。
さらに、過年度の税の滞納分を支払うことを約束する公証済みの保証書の提出も求めています。
内国歳入庁アーネル・グバラ副長官の話では、今のところ、内国歳入庁が出したこれらの要件を満たすことができたPOGOはない、つまり事業は再開できているPOGOはいないとのことです。
POGOが去ると代わりを見つけるのは難しいとの見方をする不動産会社もある一方で、適応する準備ができている会社もあります。
国内最大のオフィス経営者を名乗る、実業家アンドリュー・タン氏が率いるメガワールド社は、POGOの再開に期待を寄せています。
「POGOは政府の歳入に貢献しています。POGOをよりよく、あるいは適切に規制できれば、このまま彼らのフィリピンでの成長を認めるべきです。これからも歳入のよい貢献者となりうるわけですから、政府にとってはタダで入ってくるお金のようなものです。」とタン氏はフィリピンのニュースチャンネルABS-CBN(エイビーエス シービーエヌ)の最近のインタビューで答えています。
一方、別の上場不動産会社の役員は、POGOが去ればレジデンシャルセクターが最も打撃を受けるとコメントしています。
「オフィスセクターは賃料1年前払いですが、レジデンシャルコンドミニアムの貸主は、長期のデポジットがないので苦しいでしょう。だからといって、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の従業員がその穴を埋めることはできません。BPOの従業員はフィリピン人ですから、帰る家があるので、レジデンシャルスペースを賃貸する必要がないのです。」と話しています。
シー・グループの不動産部門SMプライム・ホールディングスは、POGOが閉鎖を余儀なくされた場合に残されたオフィススペースをBPO企業が埋めるのは容易ではないと考えています。
SMプライムのジェフリー・リム社長は、「BPOは、フィリピン経済区庁(PEZA)の認証が必要ですが、POGOが入っているビルの多くにはその認証がありません。よって、POGOが残したスペースをBPOが吸収できるように経済区庁がインセンティブを与えない限りは、それらのオフィスビルにおいて、BPOがPOGOに取って代わることはないでしょう。」
(出所:Philstar)
(トップ画像:Photo by Carl Raw on Unsplash)
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