2021/08/03
[マレーシア] パンデミックの時代REITが堅実
Covid-19との戦いが続く中、価格変動の少ないマレーシアの不動産投資信託(REIT)は、多くの投資家にとって理想的な代替案だと見られています。
アルファREITマネジャーズのステュアート・ラブーイ氏は、REITはマレーシアの「不動産の中でも一番いい部分」であり、国内でも最高のアセットマネジャーによって管理されていると述べています。
「価格が弱まっている今、検討に値するアセットクラスです。市場が戻ってきたら、回復への道のりをリードするでしょう。」
「マレーシアREITセクターの業績は、REITが究極の防御的な選択肢である、という事実を指し示しています。市場における価格は、回復してくることを知っていて、今でも配当を払い続けていることを評価する投資家の自信感を表しています。」
REITは、総利益の少なくとも90%を、毎年投資家、つまりユニットホルダーに分配することを条件として、免税となっています。
全国的なワクチン接種プログラムが加速していることを背景に、ラブーイ氏は、国内のREITの業績は、今年の第4四半期にはパンデミック前のレベルに到達するだろうと述べています。
「全国的に行われれているワクチン接種プログラムが着々と進行しており、計画通りに進めば、集団免疫を付けて、経済が再開することで、第4四半期には力強い回復を遂げるでしょう。」
ラブーイ氏は、工業部門がその中でも好調だと言います。Eコマース用のスペース需要が高まっていることに加えて、クランバレー(クアラルンプールを中心とする首都圏)における新しい工業プロジェクトが複数立ち上がるからです。
「リテールやオフィススペースに資金を投入する投資家に倉庫があまり人気がなかったのはそんなに前のことではありません。しかし、今は状況が大きく違います。今では、各自治体がたくさんのリテールスペースを抱えてしまって、物流部門が迅速に倉庫を建設できないようです。」
オンラインでの小売が伸びるにつれて、ラブーイ氏は、倉庫業に必要となってくる人材も変わっていると言います。ロボットエンジニアやデータサイエンティストです。「倉庫は効率を上げるべく、巨大な技術研究拠点と化したのです。」
ラブーイ氏の見解では、マレーシアが飽和点に達するまでには長い道のりがあると言います。
ロックダウンの影響について、ラブーイ氏は、REITの中にも他よりも影響を受けたものがあると述べています。
「工業および教育部門に加えて、ロックダウンが無期限に継続すれば、リテール、オフィス、そしてホスピタリティREITにも壊滅的な影響があります。」
「倒産や失業が増えており、消費者の信頼感や消費そのものに影響してくるでしょう。」
リテール部門については、ラブーイ氏は、本当の問題は、テナントのビジネスが成り立たなくなった時に表れる、と指摘します。モールがパンデミック前のレベルの稼働率を取り戻すのには時間がかかるだろうとも付け加えています。「国内経済を再開するために、代替の戦略を練る必要があります。」
アムインベストメント銀行(AmInvestment Bank)は、最近発表したレポートの中で、経済が段階的に再開するにつれて、REITも2021年下半期に向けて概ね回復の道筋をたどるだろうと述べています。
「政府の国家回復計画(National Recovery Plan)によると、国の経済は11月か12月には完全に再開される見通しです。これは、人々の支出が増える年末のホリデー時期にちょうどいいタイミングです。」
「これは、年末までに国内の客足が完全に戻る、あるいは過去のピークを越えるかもしれない、という当社の予測とも合致しています。海外への渡航に関する新しい規制が明確になるまでは国内旅行がメインとなるでしょう。」
さらに、アムインベストメント銀行は、2021年下半期のリテール販売の回復は、ロックダウン後の繰延需要によって加熱するだろうとも見ています。
これは、昨年、最初のロックダウンが解除された後に起こったことと同じです。
「過去にも、ロックダウンが解除された後、当社がモニタリングしていたモールでは、客足当たりの平均販売額が高まりました。」
「利益見通しとREITの関連リスクは、昨年と比べるとかなり良くなっています。国内外でワクチン接種が進んでいるおかげです。」
DBSグループ・リサーチは、一方で、ロックダウンによるオフィス部門への影響は、制御できる範囲内だと述べています。オフィスリースは長期契約で賃料が与える損失は、リテール部門ほど深刻ではないというものです。
「過去のロックダウンからも見てわかるように、オフィス部門の賃料収入の下落は最小限にとどまりました。」
「オフィス文化には変化が訪れると思いますが、オフィスがビジネスを行う主な場所になる、ということには変わりがないでしょう。」
国家不動産情報センター(National Property Information Centre)の統計に触れて、DBSグループ・リサーチは、クランバレーの稼働率は75%以上を保っていると述べています。しかし、追加のスペースが加わったことで、最近のピークであった79%からは少し下がっています。
さらに、市場リサーチ会社Ipsosのリサーチについて、DBSグループ・リサーチは、調査対象となった28か国のうち、在宅勤務を行うマレーシア人の不安レベルが最高であったとも述べています。
「在宅勤務は、柔軟性があるものの、ワークライフバランスを取って、家族サービスをしたり、仕事のための環境を整えたりするのが困難だったりします。」
「リサーチの中で、63%の人がワークライフバランスを取るのが難しいと答え、62%が仕事をする環境が家の中に整っていない、と答えています。」
「パンデミック内に仕事を滞りなく進めるためにインターネットやコンピューターに投資をせざるを得なかった人が多くいました。」
一方で、ラブーイ氏は、ワクチン接種が進み、国内経済が今年12月までに完全に再開できれば、国内REIT部門は、2021年後半までには力強くリバウンドし、2022年の第1四半期までにはブームが起こると考えています。
「その動きは、世界を見ればわかります。早々に国民のワクチン接種を進めた国々は、すでに力強い成長を見せています。消費者が市場に押し寄せているからです。需要が高まるにつれて雇用も回復し、来年までにはこのパンデミックの影響の終わりを見ることができるかもしれません。」
▼2020年のセクター別REIT実績(出所:The Star)
(出所:The Star)
(画像:Photo by Tierra Mallorca on Unsplash)
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