[フィリピン] コロナ禍でも伸びる住宅価格

フィリピン中央銀行が2020年9月末に発表したレジデンシャル不動産価格インデックスで、コロナ禍のロックダウンの中、誰もが下がると予想していた住宅価格が急速に成長していることが分かりました。

[フィリピン] コロナ禍でも伸びる住宅価格

フィリピン中央銀行が2020年9月末に発表したレジデンシャル不動産価格インデックスで、コロナ禍のロックダウンの中、誰もが下がると予想していた住宅価格が急速に成長していることが分かりました。


全体でなんと前年同期比27.1%と、不動産市場のレジリエンス(回復力)を見せ、スランプを予想していたアナリストを驚かしました。この予期しない結果は、コロナで大打撃を受けた経済の将来のリバウンドを示す良い予兆となりそうです。


▼エリア別・住宅価格上昇率(対前年同期)(出所:フィリピン中央銀行)


オンラインニュース「Philstar」によると、フィリピン・ユニオン銀行のチーフエコノミスト、ルベン・カルロ・アスンシオン氏は、景気の後退局面では住宅需要が抑え込まれるため、現在の状況と合わないとして、「珍しい上昇だ」とコメントしています。

通常外国人バイヤーが好むハイエンドプロジェクトの需要が、住宅価格の上昇に大きく貢献しました。フィリピン中央銀行は、各銀行からの情報として、2020年第2四半期の住宅価格の上昇について、①ハイエンドプロジェクトの需要増により平米あたりの平均価格が上昇、②建設資材、人件費、その他の間接コストの上昇を理由として挙げています。


住宅タイプ別に上昇率を見ていくと、コンドミニアムユニットが最も早いペースで価格を上げ、2020年6月末時点で前年同期比30.1%となりました。さらに、一戸建て住宅も24.1%と、2015年以来最高レベルとなりました。タウンハウスは10.8%、デュプレックスはほぼ前年同期並みの0.8%となっています。


▼住宅タイプ別・住宅価格上昇率(対前年同期)(出所:フィリピン中央銀行)

総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンのジョーイ・ボンドック氏は、「おそらくバイヤーはより大きいスペースでより密の少ないエリアを求めている」として、ロックダウン中にはその傾向が見られ、ビーチ沿いの物件を求める動きも見られたと述べています。


フィリピン・アイランド銀行のリードエコノミスト、エミリオ・ネリ氏は、利下げなど中央銀行の積極的な金融緩和策により金融システムに流動性が増し、コロナ禍の厳しい時代にも不動産を支える結果になったのではとコメントしています。


次に、エリア別に見ていきます。コロナウィルスの感染拡大抑制のために厳しいロックダウンが敷かれたメトロマニラでも、一戸建て(70%)、コンドミニアム(36.4%)の価格上昇にけん引されて、住宅価格は全体で34.9%上昇しました。


▼メトロマニラ:住宅タイプ別・住宅価格上昇率(対前年同期)(出所:フィリピン中央銀行)


「資金に余裕のある投資家が、オルタナティブな選択肢として、もしくは通常に戻った時の賃貸/転売収益を期待して、コンドミニアムを大量購入したのでしょう。」とING銀行のシニアエコノミスト、ニコラス・マパ氏は、PhilstarのEメールでの問い合わせに答えています。


メトロマニラ以外の地域の住宅価格の上昇率は18.1%と、メトロマニラと比較すると幾分ゆるやかなペースで上昇しました。その中でも一戸建ての上昇率が最も高く、前年同期比21.1%でした。マパ氏はこれについて、「市内のロックダウンを避け、より大きなスペースを求めて、市外に住宅を購入しようとする人が増えたのだろう」と説明しています。


▼メトロマニラ外:住宅タイプ別・住宅価格上昇率(対前年同期)(出所:フィリピン中央銀行)


コリアーズのボンドック氏は、失業率が低下してきていることと、海外で働くフィリピン人労働者からの送金額が回復してきていることが、フィリピン国内のレジデンシャル市場にポジティブな影響を与えているのではと考えています。一方で、ING銀行のマパ氏は、近年の不動産業界を支えてきたオンラインカジノ業者(POGO)の閉鎖のニュースを受けて悲観的な見方をしています。マパ氏は今後、POGOを含め企業が閉鎖をするつれ賃料収入が減少し、景気後退が不動産価格にも反映されてくるのではないかと見ています。

第2四半期のほとんどの期間、メトロマニラはロックダウンを続けていたため、銀行が行う住宅ローンは前年同期比55.2%減となりました。


住宅タイプ別では、住宅ローンのうち62.7%がコンドミニアム購入、続いて一戸建て(32.1%)、そしてタウンハウス(4.8%)でした。

海外からの送金額は、パンデミックによりいったん減少を見せましたが、2020年7月には前年同期比7.8%増の27.83億ペソを記録、6月から2か月連続の上昇となりました。

2020年1月からの累計では、送金額は2.4%減の168.02億ペソとなっています。フィリピン中央銀行は、今年の送金額は、コロナウィルスにより5%減となると予想しています。

2020年7月の失業率は10%と、4月の過去最高17.7%からは下がってきていますが、前年同期の5.4%からは依然として高い状態です。

2020年8月、中央銀行は、住宅セクターへの流動性の追加とコロナ禍における景気の刺激を目的として、大手銀行の住宅ローン上限を20%から25%へと緩和しています。

(出所:PhilstarBusiness World Online

(トップ画像:Lyman Gerona on Unsplash