[ベトナム] 資材コスト上昇で建設遅れの可能性も

建設資材価格の高騰が、ベトナムの不動産プロジェクトに影響を及ぼしており、進捗が遅れたり、不動産価格をさらに吊り上げたりする形となっています。

建設資材価格の著しい高まりにより、建設業者とデベロッパーとの間の契約に影響を及ぼし、建設・不動産業界が揺れています。

▼価格上昇の例

出所：Ministry of Construction, VIR

2021年初より、鉄鋼価格は高騰し、現在ではトンあたり1,800万ドン（約86,930円）となっており、2020年末の時価から40～50％高くなっています。

わずか10日間ほどで、価格を6倍に上げた鉄鋼業者もあったようです。一方で、セメントの価格もトンあたり3万～5万ドン（約144～240円）ほど上昇、砂の価格はほぼ2倍近くになっています。

建設コストの上昇を受け、多くの投資家は、プロジェクトを遅らせ、商品価格を調整したいと話しています。

DKRAベトナムのR＆D部門のディレクター、グエン・ホアン氏は、建設資材のコスト上昇は確実に、実施中の不動産プロジェクトはもちろん、建設業者、投資家ともに影響を及ぼすだろうと述べています。

「コスト増加は当初の収益になるべき部分を犠牲にしますので、プロジェクトの建設の進みが遅れたり、デベロッパーと建設業者が条件の再協議に入らざるを得なくなります。」とホアン氏は述べ、今年末にかけて市場の供給量減少にも働くだろうと話しています。

プロジェクトの中には、価格が落ち着くまで建設を一旦停止するものも出てくるかもしれません。しかし、これでは建設の進捗に遅れが生じ、買い手にもマイナスの影響を与えかねません。

サンシャイン・グループが手掛けるサンシャイン・シティ・サイゴンなど、プロジェクトの進捗が遅く、デベロッパーと買い手の間に係争が発生するケースも出てきており、買い手が頭金の返金を求めています。

一方で、フレイザーズ・プロパティ・ベトナム（Frasers Property Vietnam）のCEO、リム・フア・チョン氏は、資材価格の上昇は、一般的に、プロジェクトの採算性、企画に影響し、最悪のケースだと、建設や引き渡しの遅れにつながる、と述べています。

「急激で予期できないような価格高騰があると、建設を進めるための資材を購入するだけの十分な資金を持ち合わせていない建設業者に影響を及ぼします。」とフア・チョン氏は言います。一方で、高騰は次第に安定しインフレの範囲内に収まってくるだろうと付け加えています。フア・チョン氏の予測は、2021年後半期には鉄鋼価格も軟化してくるだろうというS＆P社の最近の調査でも裏打ちされています。

同時に、DKRAのホアン氏は、デベロッパーの中には、安価な建築資材に切り替えるなどの、コスト節約/収益確保策に出てくるものもいるかもしれないと警告しています。

ベトナム不動産業者協会（Vietnam Association of Realtors）によると、アパートメントの価格は、資材価格を理由に10～15％上昇する可能性があると言います。同協会の当初の予測では、価格上昇は4～6％程度でした。

DKRAのホアン氏は、デベロッパーや建設業者に対して、建設資材の価格上昇に対応するためにバックアップ予算などを活用することを提案しています。

「替えがきかない建設資材の調達を分散し、建設の品質を確保しつつも、適切な選択肢を見つけていくべきです。」とホアン氏は説明しています。

フレイザーズ・プロパティのフア・チョン氏は、「投資家もデベロッパーも、プロジェクトの企画、開発そして管理のためにその専門知識と経験をフル活用して、タイムリーなプロジェクト実施にむけて建設業者と緊密な連携を取っていくべきです。」と語ります。

「また、経済ショックや悪い市況を乗り切るために、デベロッパーのバランスシートが健全で、十分な手元資金があることも重要です。」

同時に、フア・チョン氏は、現在の建設資材の高騰は一時的なものだと見ています。「上昇する地価とプロジェクト承認の遅れの方が、ベトナム不動産市場にありがちな大きな問題として残るでしょう。」として、外国デベロッパーとして、政策立案者に対して、より透明性の高い承認プロセスの確立に力を入れていってほしいと述べました。

（出所：Vietnam Investment Review）

（画像：Photo by Dang Cong on Unsplash）