[マレーシア] 不動産処分時のRPGT免税で中古市場の活発化に期待

2022/02/18


マレーシアの不動産譲渡益税(Real Property Gains Tax (RPGT))が、6年以上所有する物件の処分について撤廃されました。長期間不動産を保有しておりアップグレードを考えている人や子どもが巣立って住み替えを考える人には特に朗報です。



不動産サービス会社、ナイトフランク・マレーシアのキース・オーイ氏は、これが中古市場を中心とした市場の活発化につながると見ています。



オーイ氏によると、ナイトフランクは、レジデンシャル市場がCovid-19パンデミックにより自己調整過程が続くと予想しています。



「短中期的には、新しい変異株の出現がダウンサイドリスクとなっているので、不動産業の成長を復活させ、維持するためには、より直接的な措置が必要なのかもしれません。」



オーイ氏は、2022年前半期のレジデンシャル不動産市場の見通しは、適切な商品ポジショニングと、複数の景気刺激策のもとでの様々な不動産関連インセンティブ/取り組みに支えられて、慎重ながらも楽観的だと言います。



今年の市場の取引の活発化に貢献する他の要素としては、デベロッパー主導の販売キャンペーンや、現在の低金利環境があります。



オーイ氏は、ワクチン接種の取り組みが成功し、マレーシアの「ニューノーマル」がパンデミックから2年にして確立されてきたと述べています。



2021年6月中旬に発表された4段階での国家回復計画(National Recovery Plan)では、経済・社会活動が徐々に再開され、ワクチン接種済みの人には州や国境をまたいだ渡航制限も緩和されました。



オーイ氏によると、パンデミックにより、アクセスのよい郊外の既存および新興住宅地の一軒家を中心として、レジデンシャル物件の需要が高まりました。こういった地域では、住宅価格も手頃でより競争が激しくなっています。パンデミック後、ハイブリッド型の働き方へのシフトが予想される中、住宅購入を考える人にとって、広くて機能や快適性を重視した居住空間が理想的なのです。




■クアラルンプール


ナイトフランク・マレーシアが発表した「不動産ハイライト2021年後半期(2H2021)」では、2021年後半期には竣工や販売開始はほとんどなかったと書かれています。これは、Covid-19の感染拡大を抑えるための措置により、建設工事、プロジェクト引き渡し、不動産取引の締結が遅れたためです。



クアラルンプールのハイエンドコンドミニアム市場では、目立った竣工は1件しかありませんでした。199戸のアスコット・レジデンスで、これにより2021年後半期の供給量は66,128戸となりました。



一方で、クアラルンプールのハイエンドレジデンシャルの平均取引価格は、0.6%減と比較的安定的でした。



オーイ氏は、一戸建てを中心としたプライマリー市場の価格は2022年を通して徐々に上がってくると予想しています。より明るい見通しを背景に、不動産市場が広く回復し始めると予想されているからです。



KLシティ、アンパン・ヒリル/ウタント、バンサーのハイエンド高層プロジェクトの平均販売価格は、サブマーケットレベルではわずかに下がり、ダマンサラ・ハイツやケニー・ヒルズなどではプラスを維持しました。モントキアラの平均取引価格は安定的でした。



今後は、国境が徐々に再開されるにつれて、賃貸市場も持ち直してくると見られています。最初に再開したのはワクチン渡航レーン(VTL)を通じたシンガポールとマレーシアの間の移動で、隔離が必須でなくなりました。出張者や投資家の短期・長期の渡航が容易になります。




■ジョホール


ジョホールバルのレジデンシャル市場について、ナイトフランク・ジョホールのダイレクター、デビー・チョイ氏は、高層レジデンシャルはまちまち、一方で一戸建てのトレンドおよび需要は引き続き回復力を保っていると述べています。



チョイ氏は、土地の取得を進めるデベロッパー各社は、一戸建ての開発に重きを置いて、適当なロケーションを探していると述べています。今後は、一戸建ての発売が増えそうです。



中古市場については、ジョホールバル市内および周辺エリア、およびイスカンダル・プテリエリアの高層レジデンシャルの販売価格が、2021年前半期よりわずかに下がりました。




■サバ


サバ州について、ナイトフランク・サバのエグゼクティブ・ダイレクター、アレクセル・チェン氏は、コタキナバルのレジデンシャル全体でオーバーハングの数値は前年同期と比較して大きく増加したと述べています。2020年第3四半期は267戸でしたが、2021年は1,205戸となりました。



オーバーハング状態のユニットのうち、97%をコンドミニアム/アパートメントが占めました。販売中のプロジェクトの新フェーズで竣工済みのユニットが増えたことが主な要因です。



「現在の厳しい状況の中、市場心理もより慎重になっているので、プライマリー市場のオーバーハング状態の高層物件の成約率は減速するとみています。しかし、近年、新規の販売はあまりなかったので、ロケーションが良く価格が手ごろな物件、特に一戸建ては、住宅購入を考えている人の関心を寄せているようです。」とチェン氏は話しています。



今後は、発売が無期限に延期となることはなさそうです。チェン氏は、「市場の状況が改善すれば、徐々に繰延需要が高まり、新規供給も増えるでしょう。」とコメントしています。




■ペナン


ペナンのレジデンシャル市場は回復し、2021年第3四半期、取引量、取引額ともに増加しました。



ナイトフランク・ペナンのエグゼクティブ・ダイレクター、マーク・ソー氏によると、州政府は、ペナン持ち家キャンペーンを2022年6月末まで延期し、新規開発物件にはすべて光ファイバーを設置するなど、住宅購入を増加させる試みを続けており、レジデンシャル市場はさらに改善しそうです。




(出所:New Straits Times

(画像:Photo by Johen Redman on Unsplash )