[フィリピン] 景気回復とともに住宅価格も上昇

2022/01/18


2021年第3四半期、フィリピンの住宅価格は、2四半期連続で下落したのちに立ち直りを見せました。2021年12月末に、フィリピン中央銀行レジデンシャル不動産価格インデックス(RREPI)を発表、パンデミックからの景気回復に向けた良い兆候だととらえられています。



中央銀行が発表したデータによると、レジデンシャル不動産価格インデックス(RREPI)は、1月~9月期、対前年同期で6.3%上昇しました。対前四半期では、0.7%とわずかに上昇しました。



RREPIの数値は、各銀行から上がってくる実際の住宅ローン情報に基づいています。最新の数値は、2四半期連続の下落からの逆転となりました。中央銀行は、「景気回復の予兆が見られる中で、レジデンシャル不動産の消費者需要が高まったこと」を原因として挙げています。



マニラにあるING銀行の上級エコノミスト、ニコラス・マパ氏は、BSPの見解に同意しつつ、今回の住宅価格の上昇は「健全」なものだとコメントしています。「不動産バブルへの懸念は、通常は数か月連続の急激な上昇にかかるもので、今のところ和らぐでしょう。」



過去最低レベルの金利もあって、新規でレジデンシャル物件を購入するためのローンは、第3四半期に対前年同期で51.5%に膨れ上がりました。住宅タイプ別に見ていくと、コンドミニアムが対前年同期で13.6%と、4四半期連続の下落から一転、タウンハウス価格も37.1%上昇しました。



▼物件タイプ別の上昇率(前年同期比)(出所:フィリピン中央銀行を元にPropertyAccess作成)



これらの上昇が、一戸建てとデュプレックスの不振と相殺された形になっています。一戸建ては4.2%、デュプレックスは0.2%下落しました。



不動産の価格上昇は、国内全土で起こりました。メトロマニラでは、住宅価格が対前年同期で11.4%上昇、首都圏以外では4.9%上昇しました。



サンライフ・インベストメント・アンド・トラスト社(Sun Life Investment Management and Trust Corp)のチーフ投資オフィサー、マイケル・エンリケス氏は、パンデミックの不確実性にもかかわらず、レジデンシャル不動産市場は、「中所得から高所得セグメントを中心に、回復力を持ち続けた」と表現しています。



「海外のフィリピン人労働者には大きな混乱はありません。いくつかの開発物件では価格調整が起こっており、不動産会社は支払スキームをより柔軟にしています。」



しかし、フィリピンアイランズ銀行のリードエコノミスト、ジュン・ネリ氏は、上昇する価格は「特に値ごろ感」に対する懸念の原因ではないかとコメントしています。



「POGO(フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者)の需要は、パンデミックが始まってから顕著な減速を見せており、意味のある価格デフレとなったはずです。皮肉なことに、不動産価格は上昇を続けています。」と、ネリ氏は、政府が納税していないPOGOに対して税金の支払を義務付けたことで、パンデミックが始まってから、POGOが一気に国外に引き上げたことを指して述べています。



「行き過ぎた金融緩和(例:マイナス金利)も一因でしょう。金融の安定のためには、金融政策理事会(Monetary Board)は、緊急的な政策の一部、特に長引く実質マイナス金利を解消していくことでしょう」と、ネリ氏は話しています。



(出所:Philstarフィリピン中央銀行

(画像:Photo by Frank Lloyd de la Cruz on Unsplash )