[シンガポール] S-REIT金利上昇に対してヘッジ

2022/03/30


シンガポールの不動産投資信託(S-REIT)のベンチマークとなるiEdge S-Reitインデックスは、地政学的な緊張、マクロ経済の不確定性、そして利上げの期待が高まる中、2022年に入って総収益率が3%下落しました。



下落はしたものの、世界的にみるとiEdge S-Reitインデックスは、最も守備的(ディフェンシブ)なREITインデックスのひとつです。
FTSE EPRA Nareit Developedインデックスは、同期間に7%下落しました。



REIT業界にとって、金利は利回り価格差や借入コストに影響を与えることから、常に重要な要素です。



S-REITは、金利リスクへの暴露を積極的に管理しています。



平均して、75%近くのS-REITの現在の負債は、直接固定金利で組まれているか、変動金利を固定金利に金利スワップしてヘッジがされています。



S-REITは現在、平均してギアリング比率(自己資本に対する負債の割合)が37.4%となっており、規制上の上限である50%を十分下回っています。



つまり、資本を多く必要とするような取得を行う際に、業界全体で約246億シンガポールドル(約2.2兆円)の負債の余地を残していることになります。



Business Timesによると、ギアリング比率が低いS-Reitトップ5は次の通りです。



Sasseur Reit(Sasseur Reit)

Digital Core Reit(DigiCore Reit)

SPH Reit(SPHREIT)

IReit Global(IREIT Global)

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Lendlease Global Commercial Reit(Lendlease Reit)



Sasseur Reitは、2021年12月31日時点のギアリング比率を26.1%と報告しており、S-REITの中で最も低いレベルです。



Sasseur Reitは、これについて、ポートフォリオの堅調なファンダメンタルズと慎重はキャピタルマネジメントを表しており、今後の資産取得のオポチュニティを求めて、負債の余地を拡大させることにつながっていると説明しています。



2021年12月31日時点の負債の平均満期は1.2年で、負債の満期や金額をばらしてリスク削減をすべく借り換えについても積極的に検討しているようです。



Sasseur Reitの2021年期の持分(ユニット)あたりの分配金は7.104シンガポールセントで、前年同期比で8.5%増加しました。Sasseur Reitが持つ中国の4つのアウトレットは、2021年度、42億人民元(約814億円)近い売上を計上し、前年同期比で12.3%増加しました。



さらに、同社が保有するアウトレットのある都市ではおける力強い消費トレンドが見られており、テナントと協力して積極的なプロモーション活動を行うことで、売上の増加につながったということです。



2021年に上場したDigital Core Reitは、データセンターを専門とするREITで、新規株式公開(IPO)時のポートフォリオには、米国およびカナダのデータセンター10棟が含まれていました。



Digital Core Reitは、IPO時点のギアリング比率を27.0%と報告しており、大規模な成長を加速するための十分な借り入れの余裕とポテンシャルがあると述べています。



2021年度の財務報告で、SPH Reitは、ギアリング比率を30.3%と報告しています。2021年8月31日時点では、リボルビング信用枠2億2,500万シンガポールドル(約204億円)が未使用となっており、十分な負債の余裕があり必要に応じて追加の流動性が確保できるようになっています。



同社は、2021年度に借入金の借り換えを行い、2020年度の2.66%から平均1.84%へと金利コストを下げています。2021年11月30日時点の同社の平均借入コストは1.68%となっており、期間の加重平均は2.7年です。




(出所:Business TimesSingapore Stock Exchange