[シンガポール] 新しい投資過熱抑制策を発表、追加印紙税率引き上げなど12月16日~

2021/12/16


シンガポール政府は、2021年12月15日、個人住宅とHDBフラット(公団住宅)の転売市場の過熱抑制策を発表しました。



財務省、国家開発省、金融局の合同のプレスリリースによると、過熱抑制策には、以下のような策が含まれています。



追加購入者印紙税(ABSD)の税率引き上げ

債務返済比率(TDSR)の基準値引き締め

住宅開発庁(HDB)からのローンのLTV引き下げ



昨夜メディア向けに公開されたプレスリリースでは、政府が、数四半期にわたって不動産市場を注意深くモニタリングしてきた中で、Covid-19の経済的影響にもかかわらず、個人住宅とHDBフラット転売市場は上がり調子であったと述べられています。



住宅価格は、2020年第1四半期から約9%上昇しています。HDBフラット転売価格もまた、6年連続の下落から一変して、15%ほど上昇しているということです。



「所得に対する住宅価格の割合は、過去平均を下回るレベルではあるものの、明らかに上昇の勢いがあります。低金利環境の中、個人住宅市場とHDBフラット転売市場の取引量は、コロナ禍にあっても多い状態が続いています。」



「このまま放置しておけば、価格は経済ファンダメンタルズをしのぎ、その後の不安定な修正リスクを高めることになりかねません。借り手もまた、今後の金利上昇の可能性に対して脆弱な状態になります。」



「民間および公営住宅市場の過熱抑制策は、住宅の値ごろ感を促進する意図があります。」



当局は、これらの個人住宅の過熱抑制策は、主たる住居としてではなく投資目的で物件を購入する人を中心とした需要を広く抑えるよう調節されていると述べています。



資金調達条件を引き締めるこれらの過熱抑制策は、民間・公営住宅を購入する際に一層慎重になるよう促すことが期待されています。



一方で、政府は、需要に対応すべく、民間・公営住宅の供給も増やすことにしています。




一部を除き印紙税率が引き上げに


現在、シンガポール人および永住権保持者(PR)が1軒目の住宅を購入するときのABSD(追加購入者印紙税)については、それぞれ0%、5%と変更なしです。 



シンガポール人とPRの2軒目、3軒目以降の住宅購入にかかるABSDについては、税率が引き上げられます。



シンガポール人が2軒目を購入するときの改定後のABSDは17%(変更前:12%)、3軒目以降は25%(変更前:15%)となります。



PRが2軒目を購入するときの改定後のABSDは25%、3軒目以降は30%となります(変更前:15%)。



外国人や法人・団体が住宅用物件を購入する際のABSDも引き上げられます。




▼追加購入者印紙税(ABSD)の税率(出所:国家開発庁をもとにPropertyAccess作成)
 


最も高いABSDが適用されるのは、2名以上のプロファイルの異なる当事者が、共同で購入する時です。



少なくとも片方がシンガポール人の夫婦については、条件はありますが、引き続き、2軒目の住宅を共同で購入するときには、ABSDの還付請求をすることができます。



共同購入者がシンガポール人であれば、デベロッパーからHDBフラットやEC(エグゼクティブ・コンドミニアム)のユニットを購入する人にはABSDは影響しません。



改定後のABSDは、12月16日以降に付与された購入オプション(Option to Purchase(OTP))について適用されることになっています。



次の条件をすべて満たした場合には、改定前のABSD税率を適用する暫定規定が適用されます。

・売主から見込み購入者へのOTPの付与が12月15日以前

・OTPの行使が2020年1月5日以前またはOTPの有効期間内のいずれか早い方

・OTPが12月16日以降に変更されていない



また、購入者が株式の持分を保有する法的実体の場合の追加譲渡税(Additional Conveyance Duties)は、34%から最大44%にまで引き上げられます。




負債基準値と融資上限の引き締め


借入金の返済余裕度を見るTDSRの基準値が引き締められ、60%から変更され55%となります。借り手の月々の融資返済額が、月々の所得の55%を超えてはならないことになります。



新しい基準値が適用されるのは、OTPが12月16日以降に付与された物件の購入のための融資および12月16日以降に行われたモーゲージ・エクイティ・ウィズドローアル・ローン(借り手の住宅の価値を担保に提供される融資)の申し込みについての融資となります。



12月16日よりも前の既存の不動産ローンがある借り手が借り換えを行うときには、改定後のTDSRは適用されないということです。



また、公営住宅については、HDB住宅ローンのLTVが90%から変更されて85%と厳しくなります。HDBから借りられる最大金額が少なくなることになります。



金融機関からのローンについては、引き続き75%のLTVが適用され、見直し後の上限は適用されません。



85%のLTVが適用されるのは、12月16日以降の販売の新規HDBフラット申し込みと12月16日以降にHDBが受理した転売申し込みです。



政府の公営・民間住宅の供給増加についての詳しい計画は追って発表されるということです。



この過熱抑制パッケージの中で行う施策は、安定した持続的な不動産市場を促進するためのものだとして、政府は、所得トレンドに対する価格の持続的な上昇のリスクを注意深く見守っていくことにしています。




(出所:CNA

(画像:Photo by Kirill Petropavlov on Unsplash