[シンガポール] 新型コロナウィルス(Covid-19)の流行を受け第1四半期の個人住宅価格マイナスに(速報値)

2020/04/06

[シンガポール] 新型コロナウィルス(Covid-19)の流行を受け第1四半期の個人住宅価格マイナスに(速報値)


2020年4月1日に発表された都市再開発庁(URA)の速報値によると、個人住宅価格価格は、前四半期比で1.2%下落しました。

四半期としては、昨年の第1四半期のマイナス0.7%ぶりの下落となります。個人住宅価格は、2018年7月に施行された投資過熱抑制策から着実な回復を見せ2.7%上昇、2019年第4四半期は0.5%のプラスとなりました。

上記の数値は全体で、セグメント別にみていくと、土地付きが-1.7%、土地なしが-1%でした。地域別では、コア・セントラル・リージョン(CCR)と呼ばれるシンガポールの最も中心的なエリアでは-1.5%、コアを除いた中心的なエリア(RCR)は-0.5%、その他のエリアでは-1%となりました。

前年同期比では、全体の不動産価格は2.2%上昇となりました。

市場関係者は、Covid-19のシンガポール不動産市場への影響について、シンガポールが景気後退へ向かう中、どのくらいウィルスの流行が続くのか、いつごろウィルスの封じ込めができるのかにかかっていると言います。一方で、シンガポール政府は、失業対策としての「レジリエンス予算」や住宅ローンの繰延などの救済措置*を発表しています。

*住宅ローンがある個人は、銀行・金融機関に対して最長2020年12月31日まで、(i)元金、(ii)元金および金利の返済の繰り延べを請求できる。2020年4月6日時点で90日以上の返済遅延がないことが条件となり、実際にCovid-19の影響を受けているかどうかを提示する必要はない。(出所:シンガポール金融管理局

失業率が抑えられ、人々が住宅ローンを返すことさえできていれば、不動産市場が崩壊することはないだろうと、不動産エージェント会社オレンジ・ティー&タイのリサーチ・コンサルティングヘッドのクリスティン・サン氏は話しています。

サン氏は、Covid-19の状況は芳しくないけれども、今後数か月で価格が大幅に修正されることはないとみています。「過去数年間で、購入者が投機的な購入をしないような様々な措置が取られてきたので、価格がぐんと下がったり、住宅ローンが払えなくなったりする可能性は高くないでしょう。」

「過去の経済危機からの経験で、資金に余裕のあるデベロッパーは、今価格を大幅に見直す必要はないと考えるでしょう。というのも、それらの会社は比較的健全なバランスシートを保っているからです。」とサン氏は付け加えています。

クシュマン&ウェイクフィールドのシンガポール・東南アジアリサーチ担当シニア・マネジャーのウォン・シャン・ヤン氏は、過去に経験した不況に比べると、価格はより回復力を見せるだろうと話しています。2008年から2009年にかけての世界金融危機では、全体の不動産価格は4四半期連続で24.9%も下落しました。

ウォン氏は、最長で2020年末まで個人向けに住宅ローンの返済を繰延できるなど、政府が最近打ち出した措置に言及し、キャッシュフローが緊迫する中、不動産保有者に多少の余裕を与えることから、間接的に現状の価格レベルを維持する助けになるだろうと話しています。

ウォン氏はまた、「今のところ、投げ売りのような状態になることはないとみています。失業率は比較的落ち着いていますし、多くの不動産所有者は資産を売却しなければいけないようなプレッシャーを受けていません。また、過去数年の不動産販売の大部分が国内のマイホーム購入者または投資家で成り立っており、長期的な保有を視野に入れた購入がほとんどです。」と付け加えています。

「さらに、価格が下降の兆しを見せたら、政府が需要を刺激すべく、投資過熱抑制策を緩和することも考えられます。ですので、過去の不況の時のような急激な価格の下落はみられないのではないかと考えています。」

プロップネックス・リアルティCEOのイスマイル・ガフア氏は、現状の市場心理からすると、今年の不動産価格は2%~3%下落するとみています。また、真のバイヤーであれば、適正価格のプロジェクトを購入するために、低金利の今がチャンスと考えるだろうとイスマイル氏は述べています。多くの住宅ローンが連動するシンガポールの銀行間取引金利(SIBOR)は、米国連邦準備制度が緊急対策として基準金利をほぼゼロにしたのを受けて、直近数週間下がっています。


▼過去2か月のSIBOR推移(赤色:SIBOR、青色:銀行間貸付スワップ金利)

(出所:Sibor.sg



アメリカの商業用不動産サービスおよび投資会社CBREの東南アジア担当リサーチ・ヘッドのデスモンド・シム氏は、経済成長率の公式予測が1%~4%に引き下げられたことを受けて、2020年の不動産価格は5%ほど下がって8%台に収まるだろうと考えています。「引き続き住宅需要はあるとみていますが、現状の経済状況からバイヤーの中には購入に踏み切ることを躊躇する人も多いでしょう。」

デスモンド氏は、予測の根拠として、最も住宅価格の高いCCR(金融街を中心とするシンガポールの中核エリア)において、販売開始されたプロジェクトの在庫が多いことと中国人バイヤーの低迷を背景に、最も大きな価格調整が入る可能性があることを挙げています。また、周囲の人との適度な間隔を保ち人ごみを避けるセーフ・ディスタンシング措置を受けて、ショールームへの客足が遠のくと、デベロッパーも「より価格への期待値に柔軟になる」とみています。

URAの速報値は、印紙税支払のために提出された契約書の取引価格と3月半ばまでのデベロッパーからの販売ユニット数のデータに基づいて作成されています。URAは、速報値と実際の価格変動にはかい離があることがあるので、速報値を注意して取り扱うように呼びかけています。

2020年第1四半期の正式な不動産統計が発表されるのは、4月24日となります。

(出所:Straits Times)