[シンガポール] 購入者追加印紙税率見直し

2018/07/31

[シンガポール] 購入者追加印紙税の税率見直し


▶前回の追加購入者印紙税(ABSD)に関する記事はこちら


シンガポール政府は、7月5日木曜日、不動産市場の過熱を抑え、価格を経済の基礎的条件にのっとったものにすべく、追加購入者印紙税(ABSD)の税率およびLTV(Loan-to-Value、資産価値に占める借入金の比率)の引き上げを行うと発表しました。

シンガポール国民および永住権(PR)保持者が、1軒目の住まいを購入する際には、税率に変更はなく、それぞれ、0%と5%のままです。

しかし、その他すべての個人に対しては、ABSDは5ポイント引き上げ、企業を含む法人に対しては、10ポイント引き上げられることになります。

さらに、デベロッパーが住宅開発のためにレジデンシャル物件を購入する際には、5%の追加ABSDが課されます。

この変更は、7月6日から実施されています。

この過熱抑制策は、個人住宅の価格が昨年に対して9.1%増加したのを受けてのものです。

財務省、国家開発省、および金融管理局は、共同の声明を出しました。「4年近く下降を続けた個人住宅価格は、2017年の第3四半期以降上昇を始めました。急激な価格上昇は、そのまま放置すれば、特に金利の上昇と住宅の供給が今後も安定的に続くことを考えると、将来不安定な反発を起こすリスクがあります。」

国家開発大臣ローレンス・ウォンは、こう言います。「政府は、不動産市場を注意深く監視してきました。我々は、価格が、経済の基礎的条件の上を行っていることに強い懸念を感じています。今後も供給ユニット数が増加予定で、金利も上がっています。今後、不安定な状態を招くような、大きな反発は避けたいと思っています。よって、安定的で持続可能な不動産市場を維持すべく、今アクションを起こすことにしたのです。」

水曜日、シンガポール金融管理局のマネージングダイレクター、ラヴィ・メノンもまた、シンガポールの不動産市場にはユーフォリア(幸福感)が漂っていたと発言、デベロッパー、銀行および住宅購入者に注意を呼びかけました。

メノン氏は、デベロッパー各社は土地の入札を行う際に、今後供給が続くことを念頭に置いて注意をするようにとMAS(シンガポール金融管理局)のアニュアルレポートの記者発表会で述べています。

LTVの上限もまた、金融機関から提供されるすべての住宅ローンに対して、5ポイント引き下げられます。例えば、変更前では、1本目の住宅ローンに対して、借り手は80パーセント(ローン期間が30年超、または65歳を超える場合には60%)を上限として借入を行うことができました。変更後は、その上限が75%(または55%)にまで引き下げられます。

変更後のLTV上限は、HDBにより提供されたローンに対しては適用されません。


追加購入者印紙税率
2018年7月5日以前2018年7月6日以降
シンガポール人
1軒目の居住用不動産を購入
0%0%
(変更なし)
シンガポール人
2軒目の居住用不動産を購入
7%12%
(変更)
シンガポール人
3軒目以降の居住用不動産を購入
10%15%
(変更)
PR(永住権)保持者
1軒目の居住用不動産を購入
5%5%
(変更なし)
PR(永住権)保持者
2件目以降の居住用不動産を購入
10%15%
(変更)
外国人
居住用不動産を購入
15%20%
(変更)
法人
居住用不動産を購入
15%25%*
(変更)
デベロッパー**にはさらに追加5%(新規、軽減措置なし***)

*法人として、デベロッパーも追加購入者印紙税(ABSD)の法人税率25%が適用されます。
所定の条件をクリアすれば、デベロッパーはこの25%の減免を申請することができます。

**デベロッパーとは、住宅用ユニットの建設と販売を事業として行う法人のことです。

***デベロッパー向けの新規5%は、すべてのデベロッパーが対象です。軽減措置はなく、購入に際して前払いが必要です。


住宅ローン
1本目
住宅ローン
2本目
住宅ローン
3本目
変更前変更後変更前変更後変更前変更後
個人LTV上限80%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は60%75%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は55%50%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は30%45%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は25%40%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は20%35%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は15%
最低頭金5%、ローン期間が30年*または65歳を超える場合は10%25%25%
個人以外LTV上限20%15%20%15%20%15%

*購入する物件がHDBの場合は25年

(出所:Straits TimesMonetary Authority of Singapore