[ベトナム] シンガポール企業の不動産投資続々

2021/08/30


住宅、都市開発、工業不動産プロジェクトの開発を常にリードするシンガポール企業が、ベトナム市場の倉庫、物流、仲介といった他の分野にも積極的に参入しています。


過去数十年間、シンガポールの不動産投資関連企業にとって、ベトナムは重要な投資先でした。セムコープ・デベロップメント(Sembcorp Development)、キャピタランド(CapitaLand)、ケッペルランド(Keppel Land)、フレイザーズ・プロパティ(Frasers Property)、メイプルツリー(Mapletree)といった大手が進出しています。シンガポール企業は、これまで高品質な住宅、サービスアパート、賃貸用オフィスなどを数多く建設し、消費者の評判も好調でした。


27年の実績を持つキャピタランド・ベトナムのポートフォリオは、2つのタウン開発、15件のレジデンシャル開発内に8,600戸の高品質な住宅、そしてリテールモール1軒、10都市31物件に7,500室の宿泊ユニットで構成されています。


多機能不動産デベロッパー、フレイザーズ・プロパティ・ベトナムは、ホーチミンシティ1区のグレードAブティックオフィスビル「メリン・ポイント(Melinh Point)」、トゥ・ドゥックシティの高級複合用途開発「Q2 タオディエン(Q2 Thao Dien)」を含む、幅広いプロジェクトの開発と運営を行っています。フレイザーズ・プロパティのホスピタリティ事業もまたベトナムでのプレゼンスを確立しており、フレイザー・スイート・ハノイ(Fraser Suites Hanoi)、ホーチミンシティのカプリ・バイ・フレイザー(Capri by Fraser)などがあります。


ケッペルランド(Keppel Land)は、ホーチミンシティを中心に高品質なポートフォリオを形成しており、グレードAオフィス、レジデンシャル、リテールモール、インテグレーテッド・タウンシップなどがあります。同グループはまた、トゥ・ドゥックシティにサイゴン・スポーツ・シティ(Saigon Sports City)という64ヘクタールに及ぶインテグレーテッド・コミュニティ型タウンシップを開発中です。


ケッペルランドによると、このタウンシップには、スポーツ、エンターテイメント、ショッピングモール、および飲食が一つに集まったライフスタイル・ハブ、水辺の大通りや多目的タウンプラザといった歩行者に優しい公共スペースなどの総合的な施設を有するということです。


他にもベトナム不動産市場に進出しているシンガポールデベロッパーには、シティ・デベロップメント(City Development)、グオコランド(GuocoLand)、クストホーム(Kusto Home)などがあります。


住宅や都市開発に加えて、工業不動産もまたシンガポール企業の投資先として注目を集めています。


この分野で有名なのは、ベトナム-シンガポール工業団地(Vietnam-Singapore Industrial Park(VSIP))です。国内のベカメックスIDC(Becamex IDC)とセムコープ・デベロップメントが率いるシンガポール企業のコンソーシアムによる合弁事業です。


1996年に設立されたVSIPは、現在8,600ヘクタール超の敷地を運営しており、これには、工業、都市、サービス用地を含んでいます。総投資額は150億ドルに達し、25万人のベトナム人・外国人労働者のための雇用を生んでいます。


工業団地に加えて、VSIPは、工業地域と同期的に計画された、アーバン・サービス・エリア(USA)と呼ばれる公共サービスへのアクセスが確保されたエリアや商業地などの建設でもパイオニアです。VSIPは、専門家、労働者、工業団地の住民など、地元のコミュニティ向けの、このようなプロジェクトも数多く手がけています。


メイプルツリー・インベストメンツ(Mapletree Investments Pte., Ltd.)は、2020年3月時点でベトナム国内に7.19億ドル相当の資産を保有・管理しています。ポートフォリオは、ハノイ、ホーチミン、ビンズオンからバクニンにまで及び、全部で8つの不動産・物流プロジェクトがあります。


ブーステッド・プロジェクツ(Bousted Projects Ltd.)は、ニョンチャック2工業団地(Nhon Trach 2 Indusutrial Park)に2018年、初めて建売工場プロジェクトを立ち上げました。現在、第2フェーズに入っており、2021年第3四半期に竣工、テナントの入居となる予定です。


拡大するセグメント


以前はベトナムの住宅開発にしか投資しなかったシンガポール企業が、ポートフォリオを物流や倉庫部門にも拡大している例も見ていきましょう。


前述のフレイザーズ・プロパティ・ベトナムは、ビンズオン省に工業団地を開発する最新のプロジェクトを発表しています。これは、ビンズオン工業団地(BDIP)に4万平米の建売工場を建設するもので、2022年第2四半期に入居企業への引き渡しを行うべく工事が急ピッチで進んでいます。BDIPは、今後6~7年で、20万平米超の賃貸工場を建設する計画です。


キャピタランドもまた、工業不動産部門への参入を計画しています。キャピタランド・ベトナムのCEO、ロナルド・テイ氏は、2019年のアセンダス・シンブリッジ(Ascendas-Singbridge)との合併により、中長期的にベトナム経済の主要なドライバーの一つとなる、物流資産や工業団地の開発のための能力および基礎を強化することができた、と述べています。


テイ氏は、「ローカルの深い専門知識とネットワークを活用することで、当社はベトナムの北部および南部で、これらの施設のポートフォリオを成長させようとしています。」と述べています。


2020年9月、ホーチミンシティ輸出加工・工業地帯局(Ho Chi Minh City Export Processing and Industrial Zones Authority)は、SGロジスティックス(SG Logistics JSC)に、ベトナムでの経済活動を認める投資登録証(investment registration certificate)を与えました。SGロジスティックスは、タンフーチュン工業団地プロジェクト(約20ヘクタール、投資額8,000万ドル)の開発を手掛けます。


2021年5月、エマージェント・ベトナム・ロジスティクス・デベロップメント(Emergent Vietnam Logistics Development Pte.)は、ビンズオン省で3,440万ドル相当の物流センター開発のライセンスを受けています。完成すれば、このプロジェクトは、ベトナム南部に物流、保管・倉庫サービス、倉庫レンタル、作業場を提供することになります。



不動産仲介


不動産プロジェクトを開発する傍ら、シンガポール企業は不動産仲介にも参入しました。


2020年、アジア太平洋地域17か国で不動産サービスプロバイダのフランチャイズを行うAPAC Realty(APACリアルティ)は、ホーチミンシティ、ダナン、ビンズオン、ダラットにわたるブローカーネットワークを有するERAベトナムに110万ドルの投資を行いました。パートナー向けに220万ドル相当の優遇金利ローン2本を行う予定です。ERAベトナムは、アメリカ系不動産仲介ブランドで、フランチャイズにより2017年にベトナム不動産市場に参入しました。


東南アジアで3番目の人口を誇るベトナムに高いポテンシャルを見出し、APACリアルティは、そのプレゼンスを高めるべく、大都市の多くに流通システムを有する不動産ブローカーであるERAベトナムに直接投資をするという選択をしたのです。


ベトナム市場には、不動産テクノロジー企業PropertyGuruや仲介のPropNexなども進出しています。


PropertyGuruは、ダイ・ヴェト・インベストメント&テクノロジー(Dai Viet Investment and Technology JSC)と提携し、ウェブサイトbatdonsan.com.vnを開発、PropnNexはベトナムのレジデンシャルおよび商業物件を、近年ベトナムの不動産市場のポテンシャルに高い関心を寄せているシンガポール人バイヤーに紹介・販売することに注力しています。


(出所:Vietman Investment Review

(画像:Photo by Tran Phu on Unsplash  )