[シンガポール] シンガポールの投資家が2019年前半期の域内のクロスボーダー取引でトップ

2019/09/26

[シンガポール] シンガポールの投資家が2019年前半期の域内のクロスボーダー取引でトップ


シンガポールの不動産投資家が、2019年前半期、アジア・パシフィック地域で国外向けの資本取引でナンバーワンとなり、その取引内容は規模と複雑さを増しています。

2018年最も活発なクロスボーダーの不動産投資家であった中国を抜き、シンガポールの不動産投資家は、2019年前半期でおよそ100億USドルの海外取引を行いました(JLL調べ)。うち78%(約8,407億円)が域内、18%(約1940億円)がヨーロッパおよび中東向け、4%(約463億円)がアメリカ向けでした。

JLLアジア・パシフィックのインターナショナル資本部門のシニアダイレクター、ティム・グラハム氏によると、シンガポールの投資家は、国内市場を超えて多様化し、グローバルな不動産の高い知識を武器に、国際市場で計算されたリスクを取りに来ていると言います。

「シンガポール人投資家に一番人気なのは中国で、2019年前半期のほぼ40%に相当します。しかし、かなりの額が、オーストラリアとインド、あとは域外ではUKに投資されています。」

2017年と2018年、中国によるアウトバウンド投資への圧迫が、シンガポール人投資家をトップの座へと押し上げた一方で、シンガポールも単に何もしないで中国の座を奪ったわけではありません。シンガポールからのクロスボーダー投資は、過去5年間で年間12%増となっており、2016年から2018年までは、年間平均280億USドル(約3兆182億円)となっています。


お金の使い方の変化

グラハム氏によると、シンガポール最大の投資家の規模が拡大、したがってその範囲も拡大していると言います。

ソブリンファンドGICおよびテマセックは、毎年莫大な金額の資本を動かしていますが、そこに加わる者も出てきています。「キャピタランド(CapitaLand)とアセンダス(Ascendas)の合併により、海外で大きな金額の資本を動かし続ける強力なグローバルビークルが出来上がりました。同社の米国、ヨーロッパでの経験が豊かで、世界でも最も活発な投資家と肩を並べるでしょう。」とグラハム氏は言います。

大手投資会社は、プラットフォーム取引にもより多くの力を注いでいます。2018年、メイプルツリー(Mapletree)、キャピタランド、アセンダス、フレイザーズ(Frasers)およびARAは、すべて大型ポートフォリオの取得をしています。2019年に入って、グラハム氏はCDLを例に挙げ、各社はオペレーティングプラットフォームやIPOに目を向けていると言います。

「CDLはヨーロッパのオフィス市場に参入したがっていましたが、最初から一度に1棟丸ごと購入するには障害があることに気づきました。よって、ドイツにオフィス資産を5つ保有していた小さ目のREITに目をつけ、そのREITの持分12.4%と、マネジャーの50%を購入したのです。これによりCDLはREITの資産に手が届くようになっただけでなく、意思決定プロセスにも参画できるようになったのです。」

個人の資産の増加に加えて、シンガポールには50のREITと事業信託が上場しており、アジア・パシフィック地域で最も成功している不動産投資信託(REIT)の仕組みの一つがありますが、国内不動産市場の規模が比較的小さいため、それらの投資信託は海外に目を向けざるを得ない、とグラハム氏は語ります。

「クロスボーダー投資を狙うREITが増えてきています。利回りを増やせるものでないといけないので、必ずしも簡単ではありませんが、機会はあります。」

シンガポールREIT制度の成功は、外国不動産を多く抱えるという点において、域内第一を意味します。「今年、米国不動産を保有するホスピタリティREITが2つ立ち上がっています。また、Manulife U.S.REITなど、他のシンガポールREITも引き続き資産取得を進めています。」とグラハム氏は語っています。

(出所:JLL