[フィリピン] S&P:今年のフィリピン経済は東南アジア最悪

2020/09/28

[フィリピン] S&P:今年のフィリピン経済は東南アジア最悪

コロナウィルス(Covid-19)の感染者数が増加の一途をたどるフィリピン経済は、東南アジアで最悪のパフォーマンスとなりそうです。


米国の格付け会社スタンダード&プアーズ・グローバル・レーティングスは、今年のフィリピン経済について、東南アジア最悪の9.5%収縮を予想しています。コロナウィルスの感染者数が「頑固なまでに減らない」、財政支援が少ないことを理由として挙げています。


同じように、ASEAN+3 マクロ経済リサーチオフィス(AMRO)もフィリピンのGDP成長率を見直し-7.6%としました。しかし、こちらは、タイに続いて域内最悪から2番目となっています。


スタンダード&プアーズもAMROも、フィリピン政府の予測-4.5%~-6.6%よりも悪い予測を出してきています。


スタンダード&プアーズは、2020年の成長見通しを-3%から-9.5%に下方修正しましたが、翌年以降の見通しはほとんど変えていません。


同社のフィリピン経済の見通しは、レポートの対象となっている14か国のうち最悪です。フィリピンに続くのはインド(-9%)です。他の東南アジア諸国は、タイと香港(-7.2%)、シンガポール(-5.8%)、マレーシア(-5%)、インドネシア(-1.1%)と比較的よさそうです。


スタンダード&プアーズは、メトロマニラを含む首都圏の主要エリアが再びロックダウンに入ったこと、頑固なまでに減らないCovid-19感染者数と、限定的な財政政策によるサポートが家計を慎重にさせることで、消費者支出が抑制され、失業が拡大していると説明しています。


ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、2020年9月初め、通称「バヤニハン2」、1,655億ペソ(約3.595億円)の景気刺激策(Bayanihan to Recover as One Act)に署名しました。これは、パンデミック対策として2,750億ペソ(約5,584億円)を割り当てたバヤニハン1に続くものです。


スタンダード&プアーズは一方で、2021年のフィリピン経済について、当初予測の9.4%よりも速いペースの立ち直りを見せるとして、9.6%成長を予測しています。


しかし、Covid-19が企業のバランスシートと労働市場に与える永久的な損傷ににより、Covid-19がなかりせば達成できたであろうGDPには程遠い、と同社は述べています。


スタンダード&プアーズは、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas)が今年まだあと2回ほど利下げを行ったのちに、しばらくはその状態を留め置くと予想しています。


フィリピン中央銀行は、今年あと3回(10月1日、11月19日、12月17日)金融政策決定会合を予定しています。今年これまでに、中央銀行は175ベーシスポイントの利下げを行っており、翌日物借入金利2.25%、翌日物貸出金利を2.75%、翌日物預金金利を1.75%と過去最低レベルになっています。


スタンダード&プアーズは、アジア・パシフィック地域については、2020年は2%のマイナス成長、2021年は6.9%のプラス成長を予想しています。これでも、Covid-19前の2021年末までのトレンド予想からは5%低いものになっています。


同社のアジア・パシフィック地域のチーフエコノミストは、「パンデミックは終わっていないが、コロナが経済に与える影響の最悪の時は去った。政府は、国内全土のロックダウンほどリソーセスを割くことのない、より対象を絞った対策を講じてCovid-19のピークを均す努力をしている。サービス、物品ともに家計の支出も戻ってきている。」と述べています。


AMROは8月の予想-6.6%から下方修正して-7.6%としています。これは、タイの-7.8%に次いで、ASEAN+3諸国で2番目に急激なスランプとなっています。


AMROは、2020年成長予測の下方修正について、8月初旬に再度行われたロックダウンを主な背景として挙げています。2021年については、6.6%成長を予想していますが、GDPがパンデミック以前のレベルに戻るには2022年までかかるだろうとしています。また、回復のペースは、Covid-19パンデミック、世界経済の立ち直りと政策対応次第だと述べています。


AMROは、ASEAN地域の今年の経済成長について3.3%の収縮、2021年は6%の成長を見込んでいます。


(出所:Business World Online

(トップ画像:Gerd Altmann from Pixabay )