2022/02/17
不動産サービス会社JLLフィリピンによると、2022年前半期のオフィス賃貸は不活発な状態が続くものの、ITビジネスプロセスマネジメント(IT-BPM)企業が今年のオフィススペースの需要をけん引しそうです。
「オフィス市場については、安定化の兆しが見えてきています。2021年第4四半期は、総賃貸面75,713平米と成約は控え目でした。」
JLLフィリピンのリサーチ&コンサルティング・ヘッドのジャンロ・デ・ロス・レイェス氏は、過去数四半期と比較すると低かったものの、マインドは回復してきていると述べています。
IT-BPM企業は、2021年第4四半期のオフィス市場の駆動力となり、2021年のオフィス成約面積の62.5%を占めました。
しかし、経済特区に入居する企業向けにフィリピン経済特区庁(PEZA)が実施する在宅勤務のガイドラインは、今年のIT-BPM業界の拡大を抑え込むことになりそうです。
デ・ロス・レイェス氏は、「多くのIT-BPM企業が、PEZAが定めるガイドラインが明確になるまで、取引の決断を遅らせています。昨年の第3四半期、PEZAの猶予期間の決定を待つ間、IT-BPM企業からの問い合わせが増えました。それが2022年3月にずれ込んだことで、賃貸活動は下火になっています。」と述べています。
財政インセンティブ審査委員会(Fiscal Incentives Review Board)は、PEZAの経済特区内に位置するIT-BPM企業のリモートワークを3月末まで延長することを決めました。このガイドラインに従って、アウトソーシング企業は、3月まで従業員の多くに在宅勤務を認めることができますが、10%は出勤しなければならないことになっています。
「この3月にも同じ話になると予想しています。オミクロン株に加え、今後3か月の市況を鑑みると、PEZAがさらに猶予期間を伸ばすと予想しています。」
デ・ロス・レイェス氏は、テナント企業の多くがハイブリッド型の働き方を取り入れており、「従業員の一部がリモートワークをする状況に対してオープンだ」と話しています。
また、5月に予定されている選挙も、前半期のオフィス賃貸を冷え込ませることになりそうです。
「ポートフォリオや投資判断に関わる方針が変更になるかどうか、投資家はもちろん、テナント企業が様子見に入って、賃貸の判断を延期することから、賃貸活動は減速するでしょう。」
IT-BPM業界以外にも、テクノロジー、Eコマース、物流企業も、今年のオフィススペース需要の駆動力となりそうです。
パンデミック前にオフィス市場をけん引した、フィリピン・オフショア・ゲーミング事業者(POGO)の返り咲きも期待されています。
デ・ロス・レイェス氏は、「POGOは戻ってくると思いますが、以前と同じ規模にはならないでしょう。家主側の不安も少しありそうです。」と語っています。
一方で、JLLフィリピンは、新築スペースが不動産市場の復活に圧力を及ぼしそうだとしています。需要が供給を支えきれず、短期的に市場を冷え込ませることになりそうだからです。
JLLフィリピンは、新築オフィススペースで838,000平米、リテールスペース497,000平米、新築レジデンシャルが23,000平米、ホスピタリティで7,000平米を予測しています。
「誰もが2021年を市場リカバリーの年として見ていました。しかし、私は、まだリカバリーに向けた旅の途中であると思います。2022年も同じような感じになると予想していますが、今年は不動産市場については確実に動きが改善する方向にいっているという兆しがあります。」とデ・ロス・レイェス氏は述べています。
(画像:Photo by JC Gellidon on Unsplash )
もっと詳しく知りたい方はこちら