フィリピン不動産の2020年のまとめ

2021/02/04


フィリピン不動産2020年のまとめ


不動産タイプ別

フィリピンは、2020年第2四半期の経済成長率-16.9%(前年同期比)を記録し、1981年以来最大のスランプとなりました。

経済成長の収縮は、消費者駆動型の経済に大きな影響を与えた厳しいロックダウンのインパクトを物語っています。

消費者と事業投資の信頼感は、2020年を通して低迷した状態が続きました。

2021年1月28日のフィリピン統計局の発表によると、第4四半期は-8.3%、通年では予想の下限となる-9.5%でした。


▼四半期ごとのGDP成長率(前年同期比)推移(出所:フィリピン統計局)



不動産も同様に、新型コロナウイルス感染拡大封じ込めのための厳しいロックダウンとソーシャルディスタンス確保のための措置により、工業・物流不動産を除いたすべてのセグメントにおいて大きな影響を受けました。

具体的なセグメントについて見ていきます。


オフィス

メトロマニラは3月中旬から5月初旬まで、さらに8月の2週間と厳しいロックダウンが実施され、多くの企業が在宅勤務の働き方を導入し、オフィスのあり方が見直される機会となりました。

オフィスリース活動は、2020年第3四半期緩やかに推移しました。

コミュニティ隔離措置はやや緩和されたものの、引き続き在宅勤務を続ける企業もあります。

大手のIT-BPM(Information Technology & Buiness Process Management)企業の中には2020年の事業拡大計画をいったん見送る形にしたものもありました。

総合不動産サービス会社クッシュマン&ウェイクフィールドによると、既存のグレードAオフィスの空室率は2%ほど上昇し、2020年第2四半期は4.4%だったのが2020年第3四半期は6.4%となっています。

メトロマニラ内の空きスペースは、短期的にはさらに増加するとみられています。

というのも、複数のオンラインカジノ業者(Philippine Offshore Gaming Operations (POGO))がリースの早期解約をしたと言われているからです。

弱含みの経済見通しにも関わらず、平均の希望賃料は月あたり1,028ペソ/平米に留まりました。

今年竣工予定だったプロジェクトが後ずらしになったことで、パンデミック前のレベルに賃料を保てているようです。

ロックダウン措置の緩和により、市場活動が戻りつつありますが、完成予定だったプロジェクトの竣工遅れにより、懸念されていた空室率の増加が最小限に抑えられていることから、このまま賃料レベルが保てるのではないかと期待されています。

フィリピン第2の都市圏であるメトロセブでもまた厳しいコミュニティ隔離措置が実施されました。

必要不可欠(エセンシャル)な物品の提供にかかわるビジネス以外の企業には、基本的に在宅勤務が命じられ、オフィスは必要最低限の人数を残してほぼ空の状態となりました。

順調に伸びてきていたコワーキングスペースも、集まりを避けるという観点から稼働率が下がることが見込まれましたが、在宅勤務ができないような企業が、身体的な距離を取るために追加のオフィススペースを求める動き、また、メトロマニラで長引いたコミュニティ隔離措置を背景に、事業継続のためにメトロマニラ以外の地域にオフィスを構える戦略でセブを選択する動きも出ていることで、別の収入源を確保できているようです。


▼セブオフィス市場におけるコワーキング・フレキシブル&サービスオフィスの総面積(棒グラフ)および市場シェア(線グラフ)(出所:Santos Knight Frank)




レジデンシャル

レジデンシャル市場もまた、Covid-19危機により大きな打撃を受けました。

観光客は大幅に減り、渡航制限が課され、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)からの送金、雇用、ビジネスと消費者の信頼感は下がりました。


▼OFWからの送金額(出所:フィリピン中央銀行)


レジデンシャル不動産価格インデックス(RREPI)は、2020年第3四半期、2016年以降初めて収縮し、前年同期比-0.4%となりました。

メトロマニラの価格下落が最も大きく前年同期比で-12.2%、メトロマニラ以外の地域は前年同期比で+6.4%となりました。

メトロマニラの下落は、コンドミニアム(前年同期比-17.9%)とデュプレックス(前年同期比-11.8%)の価格下落に引きずられた形になりました。

一方で、一戸建ては前年同期比23.3%、タウンハウスは前年同期比11.2%の上昇となりました。

フィリピン中央銀行は、この収縮を景気の先行き不明さから土地・住宅の消費者需要の低迷したことによるものだと説明しています。

メトロマニラでは、POGOを含む外国人からの需要が伸び悩みました。

総合不動産サービス会社Colliersによると、2020年1月~9月のプレセールは、24,900戸で、前年同期比28%減でした。

ロックダウンの影響による工事の遅れから、同社は、2020年に予想していた竣工予定戸数を、当初予想の10,940戸から第3四半期には6,000戸と約45%ほど下方修正しました。

一方、セブでは、2013年から2019年まで不動産ブームに沸き、2019年には、新規供給は過去最高の10,455戸、成約件数も過去最高の9,526件に達しました。

2020年に入り、第2四半期終了時点では、新規供給は1,700戸、成約件数は3,100戸と、前年同期比ではそれぞれ72%減、42%減となっています。


リテール

2020年3月中旬から厳しいロックダウンが実施され、生活必需品やサービス以外のリテールは厳しい状態が続きました。

6月15日より、マニラを含む「一般的なコミュニティ隔離措置(GCQ)」に指定されたエリアでは、レストランは、厳しい健康・安全手順を踏んだうえで、定員の30%にて店内での飲食が認められるようになりました。

ショッピングモール事業者は、安全なモール環境を確保すべく、厳しい安全・消毒対策をするとともに、パーソナルショッパーサービスや非接触支払システムなどを取り入れて信頼感の回復に努めています。

コミュニティ隔離措置が長引くにつれ、オンラインショッピングを選ぶ消費者が増えたことでEコマースが普及、Eコマース事業者は、オンラインチャンネルでのプレゼンスを高め、コロナ後の「ニューノーマル」に適応すべく、独自のオンラインプラットフォームの立ち上げに続々と投資をしています。


ホスピタリティ

ホスピタリティもまた2020年は打撃を受けたセクターのひとつです。

ホテルは、ロックダウンが実施されていた期間は、取り残された観光客や、交通手段が限られる中、通勤が困難な必要不可欠な産業で働く人々に宿泊施設を提供しました。

徐々に規制が緩和されてからは、フレキシブルワークプレイスとしてリースするなどのアイディアで対応するホテルもありました。

修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置(MGCQ)となった地域、そして9月には一段階厳しい一般的なコミュニティ隔離措置(GCQ)の地域でもステイケーションが可能になり、関係者は国内観光の活性化につながると期待を寄せています。


物流・工業

物流・工業不動産は、コロナ禍でも元気でした。

Eコマースがますます普及することで物流・倉庫業には特に大きなオポチュニティが生まれました。各社は高まる需要に対応するために、シームレスで効率的な物流を目指して、デジタルインフラの整備などを進める動きがありました。

フィリピン経済特区庁(Philippine Economic Zone Authority)は、2020年で合計12つの経済特区(ITセンター(9)、製造経済特区(2)、ITパーク(1))を認定し、推定64億ペソ(約140億円)超を誘致できると見込んでいます。


この章のポイント

・コロナウイルスの感染拡大抑制のためのロックダウンの影響で、フィリピンの経済は2020年大きく縮小しました。

・ロックダウン緩和されても引き続き在宅勤務を続けているところもあり、メトロマニラを中心にオフィスの空室率はやや増加しています。セブは、メトロマニラを拠点とする企業の事業継続戦略の一部として、メトロマニラ外の地域にオフィスを構える企業の注目を浴びています。

・レジデンシャルは、景気の先行き不明さから土地・住宅の消費者需要の低迷したことにより、第3四半期に2016年以降初めて価格インデックスが下落しました。

・リテールは、ロックダウンやソーシャルディスタンスにより苦戦していますが、衛生・安全対策を強化し、消費者の信頼感を取り戻そうと努力しています。

・ホスピタリティは、観光客の激減、渡航制限などで大打撃を受けましたが、フレキシブルワークプレイスへのホテル客室の転換など新たなアイディアを取り入れたり、ステイケーションが認められたことで国内観光客の受け入れを強化する動きが見られます。

・工業・物流は、急速に普及したEコマースを受けて好調でした。


2020年のキーワード

2020年のフィリピン不動産市場に関係する出来事は、大きく4つあります。

①不動産投資信託(REIT)の規制緩和、②コロナウィルス感染拡大防止のためのコミュニティ隔離措置、③POGOの撤退、そして④過去最低レベルの金利です。


REIT上場規制緩和

フィリピン証券取引委員会(SEC)によると、フィリピンのREITの歴史は2007年に遡ります。

下院にREIT法案が提出されてから約2年後の2009年末には法律として成立、2011年5月にはSECは施行規則(IRR)を発行します。

しかし、高い浮遊株比率(1年目40%、3年目までに67%)のハードルが高く、さらに国家歳入庁(BIR)もREITへの資産の移転に12%のVATをかけることを発表したことから、フィリピンのREITは活性化しないままでした。

2020年に入り、SECは国家歳入庁(BIR)とともにネックとなっていたREIT施行規則を緩和しました。

浮遊株比を33%に引き下げ、REITへの資産の移転と引き換えに発行を受ける株式が、発行済み株式の51%以上であることを条件として、REITへの資産の移転にかかるVAT12%を免除するなど、REITの活性化につながるような改正が盛り込まれました。

これを受けて、2020年7月、ついにフィリピン国内初のREITとなるアヤラランドのAREITが誕生しました。

ダブルドラゴンも今年2月にREITを通じて資金調達する計画を発表しています。また、ロイターによると、フィリピン証券取引所の声明の中で、2021年は4つのREIT(会社名は未公表)が誕生する予定になっています。


コミュニティ隔離措置

コロナウィルスの感染拡大を食い止めるためにフィリピン政府が実施している隔離措置です。

コロナ後のニューノーマルに移行するまで4段階あり、厳しい順に、ECQ(強化されたコミュニティ隔離措置)、MECQ(修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置)、GCQ(一般的なコミュニティ隔離措置)、そしてMGCQ(修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置)です。

現在は、メトロマニラを含めた一部の地域がGCQ、その他の地域はMGCQとなっています。

ドゥテルテ大統領は、東南アジアでもかなり早い段階で厳しいロックダウンを実施しました。

ECQが、2020年3月15日からメトロマニラ、3月17日からはメトロマニラのあるルソン島全土にその範囲を広げて実施されました。

5月からは、メトロマニラと一部の地域を残して緩和されたGCQへと移行、6月以降は、8月4日からの2週間、経済の再開に伴い感染者数が再増したためにMECQを実施した以外は、メトロマニラもGCQに移行しました。

オンラインニュースrapplerが報じているところによると、フィリピン観光局(DOT)の情報として、2020年のフィリピンを訪れた外国人観光客数はたった132万人で、2019年の826万人から83.97%減となりました。

2021年初頭時点では、観光目的でのフィリピンへの外国人観光客の入国は禁止されており、公務・フィリピン人の配偶者・二重国籍者など特定の外国人のみの入国が許可されています。

外国直接投資額は、ロックダウンのピークとなった4月に前年増月比-68.4%と大きく落ち込みましたが、それ以降はプラスで推移しています。

2019年は米中貿易戦争にイラン情勢なども加わり2016年以来最低を記録していました。


▼外国直接投資額の推移(出所:フィリピン中央銀行)


POGO撤退

POGO(Philippine Offshore Gaming Operator、ポゴ)と呼ばれるオンラインカジノ業者のの撤退もまた2020年の大きな出来事となりました。

POGOに新しい税制が課されたことに加え、中国政府もオンラインギャンブル活動の取り締まりに力を入れているからです。

過去数年、急速に発達したPOGO業界により、不動産価格は急激に上昇しましたが、メトロマニラを中心に穴をあけた形となりました。

オンラインニュースInquirer.netが報じているところによると、POGO労働者の撤退により、メトロマニラに154,000平米のオフィススペースが空いたとされており、ケソンシティ、ベイエリア、アラバンなどで特に大きな空きが出ました。

総合不動産サービス会社Colliersは、メトロマニラの空室率が空室率は2019年の4.3%から2020年は9.1%にまで上がると予想しています。

多くの企業が様子見の状態に入ったことに加えて、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)業界も、従業員の60~70%を在宅勤務としたためです。

新規供給が加わることで、空室率は2021年には11.6%、2022年には12.1%にまで上がるとみられています。

POGOの撤退は、レジデンシャルルにも影響を及ぼすと考えられています。

オフィスに空きが出れば、それらの地区におけるレジデンシャルの需要も減るからです。


過去最低レベルの政策金利

▼フィリピン翌日物借入金利の推移(出所:Trading Economics)

フィリピン中央銀行(BSP)は2020年にコロナウィルスの影響による経済へのダメージを緩和すべく合計5回の利下げを行い、翌日物借入金利を過去最低の2%にまで下げました。

2020年11月の5回目の利下げは、アナリストのほとんどが年内の利下げはこれ以上行わないだろうと見ていた中での驚きの結果となりました。

安定したインフレ率を受けて、キャピタル・エコノミクス、野村、ファーストメトロインベストメントなどが2021年第1四半期にさらなる利下げを行う可能性を予想しています。(出所:Business Inquirer、ABS-CBN、First Metro Investment)


この章のポイント

REIT施行規則の緩和により、フィリピン初のREITとなるアヤラランドのAREITが誕生が誕生しました。2021年は、ダブルドラゴン他複数のREITが上場見込みです。

・コロナウィルスの感染拡大抑制のためのコミュニティ隔離措置に加え、外国人の観光目的での入国も禁止されたことで、人の動きが大きく制限されました。

・新しい取り締まりを背景に、過去数年にわたって急成長を遂げたPOGOのフィリピン離れが始まっており、オフィス、レジデンシャルの空室率、価格への影響が懸念されています。

・フィリピン中央銀行は、コロナウィルスの影響による経済へのダメージを緩和すべく5回の利下げを行い、金利は過去最低レベルとなっています。2021年にはさらなる利下げを予想する機関もあります。


2021年の見通し

フィリピン政府は、2020年の見通しについては、コロナウィルスの影響が前回の予測時よりも深刻であったことを反映して下方修正し-8.5~-9.5%としましたが、2021年の成長見通しは据え置いて6.5~7.5%としています。

世界銀行、IMF、アジア開発銀行(ADB)といった各機関も、2020年通年の見通し-8%台から、今年は6%弱(世界銀行)~7.4%(IMF)と急激な回復を予想しています。



この章のポイント

・2021年は、政府を含め各機関が6%~7.5%のプラスの経済成長を予想しており、コロナウイルスによる影響からの回復が期待されます。


まとめ

コロナウイルスの感染拡大抑制のためのロックダウンの影響で、フィリピンの経済は2020年大きく縮小し、2020年のGDPは前年比-9.5%となりました。

不動産は、工業・物流以外は、コロナウィルスによるマイナスの影響を受けました。

オフィスは、ロックダウン緩和されても引き続き在宅勤務を続けている企業もあり、メトロマニラを中心にオフィスの空室率はやや増加しています。

セブは、メトロマニラを拠点とする企業の事業継続戦略の一部として、メトロマニラ外の地域にオフィスを構える企業の注目を浴びています。

レジデンシャルは、景気の先行き不明さから土地・住宅の消費者需要の低迷したことにより、第3四半期に2016年以降初めて価格インデックスが下落しました。

リテールは、ロックダウンやソーシャルディスタンスにより苦戦していますが、衛生・安全対策を強化し、消費者の信頼感を取り戻そうと努力しています。

ホスピタリティは、観光客の激減、渡航制限などで大打撃を受けましたが、フレキシブルワークプレイスへのホテル客室の転換など新たなアイディアを取り入れたり、ステイケーションが認められたことで国内観光客の受け入れを強化する動きが見られます。

工業・物流は、急速に普及したEコマースを受けて好調でした。

2020年の不動産市場のトピックとしては、①不動産投資信託(REIT)の規制緩和、②コロナウィルス感染拡大防止のためのコミュニティ隔離措置、③POGOの撤退、そして④過去最低レベルの金利がありました。①REIT施行規則の緩和により、フィリピン初のREITとなるアヤラランドのAREITが誕生が誕生しました。

②コロナウィルスの感染拡大抑制のためのコミュニティ隔離措置に加え、外国人の観光目的での入国も禁止されたことで、人の動きが大きく制限されました。

③新しい取り締まりを背景に、過去数年にわたって急成長を遂げたPOGOのフィリピン離れが始まっており、オフィス、レジデンシャルの空室率、価格への影響が懸念されています。

④フィリピン中央銀行は、コロナウィルスの影響による経済へのダメージを緩和すべく5回の利下げを行い、金利は過去最低レベルとなっています。2021年にはさらなる利下げを予想する機関もあります。

2021年は、政府を含め各機関が6%~7.5%のプラスの経済成長を予想しており、コロナウイルスによる影響からの回復が期待されています。


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