[タイ] 複合用途開発が人気の選択肢

2018/08/20

[タイ]複合用途開発が人気の選択肢


上がり続ける地価と不動産の各セクターにおける不安定要素により、単一用途の開発物件は好調とは言い難い状況です。

特定の不動産セクターでは競争が激化、うなぎのぼりの地価に引っ張られて開発コストも上がる中、デベロッパーにとって、売り込むのが簡単で高いリターンを提供する単一用途の不動産プロジェクトを開発することが難しくなってきています。

この困難に対処するため、複合用途の開発物件が、巨大型コンプレックスだけでなく、一棟開発においても人気のソリューションとなるだろう、と不動産コンサルタントのJLLは見ています。

JLLマネージングダイレクターのスピン・メチュチェップ氏は、「リテール、オフィス、宿泊ユニットを抱き合わせた複合用途開発は、バンコクでは決して新しいものではない」といいます。

「既存の数ある複合用途開発物件に加えて、One BangkokThe Icon SiamThe ParqSamyan MitrtownSingha Complexなどといった新しい物件が今後続きます。」

スペースを有効活用できる複合開発物件は、土地活用のシナジー効果もあります。一つの開発物件の中に複数の用途を組み合わせることで、デベロッパーは、物件全体の中にある共有のリソースを分けることができるので、開発コストを下げつつ土地を最大限活用できます。

加えて、開発物件内の要素が相互に補い合うことができます。

リテールは、居住スペースに住む人々、ホテル宿泊客やオフィスワーカーのおかげで安定した客足を見込むことができます。居住者は、リテールスペースがすぐそこにある便利さを享受できます。

オフィスにとっても、複合開発物件内で提供されるさまざまなメリットが、間違いなく、スタッフにとってオフィスを魅力的なものにするでしょう。

ホテルやレジデンシャルが同じ物件内にあるというもの、オフィスワーカーやオフィスを訪ねる人々にとってはメリットの一つです。

これらすべての要素が、都会的なライフスタイルを提供する複合用途開発物件の能力を反映しています。

「複合用途開発は、1棟以上の異なる用途の建物から成るような大規模な不動産物件だけに限りません。1棟にさまざまな用途を持ち合わせたような建物もいくつか存在しており、その傾向が増えています。」とスピン氏は言います。


オフィス街の一等地に、再開発用に残された比較的小さな区画がいくつもあります。これらの土地には、高層ビル1棟を建てる面積しかありません。

遅かれ早かれ、これらの区画も売却されたり再開発されたりするでしょう。というもの、土地のオーナーたちは、とても魅力的な価格で売却することができるチャンスにつられるか、近く施行予定の新しい土地・建物税の影響を恐れるだろうからです。

ここ最近の一等地の取引を見てみると、これらの区画は、現在売りに出せば、平方ワー*あたり200万バーツ(約670万円/平方ワー、約168万円/平米)超で取引がされるようです。この価格だと、高級コンドミニアムだとか5つ星ホテルなどの単一用途開発というオプションはほとんど実行可能ではないでしょう。

*平方ワー=4平米

「バンコクのコンドミニアム・ホテルセクターの競争が激化しているので、オフィス開発というのも面白い選択肢かもしれません。バンコクのオフィスは現在供給不足気味で、賃料も上がっています。」とスピン氏は言います。

しかし、グレードAのオフィス物件を、平方ワーあたり200万バーツで取得した土地に開発して、そこそこの投資リターンを得ようとすると、少なくとも月々の賃料を平米あたり2,000バーツ(約6,700円)ほど取らなくてはなりません。一方で、ビジネス街の中心にある既存の一等地にあるグレードAビルの賃料は、現在月々平米あたり1,000バーツ(約3,350円)から1,300バーツ(約4,400円)ほどです。

現在の賃料水準だと、そこそこの投資回収が見込めるようなグレードAの新築オフィスは、ビジネス街の中心にあるリースホールドの土地でしか実現できません。」とスピン氏は説明します。

「よって、地価が急激に上昇し、さまざまな不動産セクターでのリスクや不安定要素を減らす必要がある中で、複合用途開発は理にかなったソリューションとして、今後の不動産開発に人気の選択肢となっています。」

「しかし、これらの開発物件が持続可能な成功を収めるには、リテール、オフィス、宿泊施設の適切なミックスを割り出すことが極めて重要です。また、効率よく物件が管理できるような設計も同様に重要です。」とスピン氏は締めくくっています。

(出所:Bangkok Post