[フィリピン] 土地の権利譲渡にかかるステップを解説!

2021/07/01

[フィリピン] 土地の権利譲渡にかかるステップを解説!


物件を購入するときの最も重要なプロセスの一つが、前の所有者から購入者へと土地の権利譲渡を完了させることです。この法的なプロセスを踏むことによって、購入者が、その物件の新しい所有者としての公的な記録が残ることになります。土地の権利を新しく自分の名義にすることで、購入者は、投資物件を保護し、将来起こるかもしれない所有権にかかる問題を避けることができるのです。


OMIランド・タイトル・サービシーズ社のジェネラルマネージャー、ハーディー・リパナ氏によると、購入者は、売買証書(Deed of Sale)が締結されたらすぐに、権利の譲渡プロセスを開始するのが良いようです。「売買証書が締結され、公証を受けたら、移転税(transfer tax)の支払期限が設定されます。移転税の支払いに遅れると、それ相応の罰金や利息が発生します。」
 

まずは、準備するものから見ていきましょう。



  • 公証済みの売買証書(Deed of Absolute Sale)原本と写し2部
    権利移転証書(Transfer Certificate of Title(TCT))またはコンドミニアムユニットの場合はコンドミニアム権利証書(Condominium Certificate of Title (CCT))の所有者控えと写し2部
    ・最新の土地および不動産物件の改良にかかる税務申告(Tax Declaration)の認証謄本と写し2部 
    ※売却された物件が空地である場合、その土地にいかなる改良も行われていない場合、被譲渡人少なくとも1名による改良なし宣誓書(Sworn Declaration of No Improvement)もしくは市町村の課税審査官(assessor)が発行する改良なし証明書(Cerificate of No Improvement)
    ・売り手および購入者の納税者番号(Tax Identification Number (TIN))



該当する場合は、以下も追加で必要となります。


  • ・TCTまたはCCTに所有者として記載されている者が書類に署名する場合には、特定委任状(Special Power of Attorney(SPA))
    ・SPAが海外で締結される場合は、フィリピン総領事館の証明書
    ・提出された書類で路線公示価格(zonal value)をすぐに決定することができない場合は、立地を示した図または近隣地図
    ・その他、法律、決定事項、規則、通達などに定めるもの
    ・住宅ローン、遺産相続(裁判の、もしくは裁判外の)、抵当物差し押さえ(裁判の、もしくは裁判外の)、所有権の統合、強制売買、コンドミニアムプロジェクトなどに必要な書類については、「不動産登記にかかる必要書類(Documentary Requirements for the Registration of Real Property with the Register of Deeds)」をご確認ください。




必要書類が揃ったら、次のステップに移ります。


 
1.内国歳入庁(BIR)にて

必要書類をBIRの係員に提出しましょう。キャピタルゲイン税(Capital Gains Tax)印紙税(Documentary Stamp Tax)を計算してくれます。提出した書類をもとに、計算が終わったら、キャピタルゲイン税についてはBIR様式1706号、印紙税についてはBIR様式2000号をそれぞれ3部ずつ、BIRの係員から署名するように求められます。

BIR様式1706号と2000号の両方に記入が済んだら、BIRの係員からすべて書類を返却され、認可代理銀行(aurhotized agent bank(AAB))にてキャピタルゲイン税と印紙税の支払いをするように求められます。

 

2.認可代理銀行(AAB)にて

AABでは、係員にキャピタルゲイン税と印紙税でそれぞれ別のAAB支払票を記入するように求められます。両方とも帳票に記入が終わったら、AABに提出してキャピタルゲイン税と印紙税の支払をします。AABのキャピタルゲイン税と印紙税の支払票の控えを必ず受け取りましょう。ちゃんとAABの受領印が押されていることも確認してください。

 

3.再びBIRにて

もう一度BIRに出向いて、AABの支払票2枚の原本も含めて、すべての書類を戻します。BIRの係員が、登録承認証書(Certificate Authorizing Registration(CAR))の受取日を記載した、引換券を渡してくれます。CARは、所有権登記と新しい所有者のTCTまたはCCTの謄本の発行のために、登記官から求められるものです。

BIR覚書令(Memorandum Order)No.15-03にも記載があるように、BIR所轄税務署(Revenue District Office)はすべてのワンタイム取引(One Time Transaction(ONETT))について、必要書類をすべて提出されたら5日以内にCARを発行することになっています。


CARの発行日には、CAR以外に以下のような書類も受け取ります。


  • ・BIRが受け取っていた印紙税が添付された売買証書(Deed of Absolute Sale)の原本
    ・TCTまたはCCTの所有者用の謄本
    ・BIRが受け取っていた印紙税が貼付されたBIR様式1706号(キャピタルゲイン税)と様式2000号(印紙税)の原本
    ・土地および改良にかかる税務申告の写し


 

4.所轄の財務官の事務所にて

税金清算書(Tax Clearance)の写しをもらうために移転料(Transfer Fee)を支払います。以下の書類を提示して、その発行のための手数料を支払うと受け取ることができます。


  • ・売買証書(Deed of Absolute Sale)の原本および写し1部
    ・税務申告書(Tax Declaration)の写し
    ・当年度の不動産税(Real Property Tax)および特別教育基金税(Special Education Fund Tax)の公式納付済み証



5.登記所にて

自分名義のTCTまたはCCTの所有者謄本を受け取るためには、次の書類を提出する必要があります。


  • ・印紙税納付済み売買証書(Deed of Absolute Sale)の原本と写し3部
    ・売り手のTCTまたはCCTの所有者控え
    ・CARの原本
    ・税金清算書(Tax Clearance)の原本
    ・キャピタルゲイン税、印紙税、税金清算証明書(Tax Clearance Certificate)および移転料(Transfer Fee)の支払の公式な領収書の原本
    ・所轄の課税審査官(assessor)の事務所が発行する土地および改良にかかる当年度税務申告書(Current Tax Declaration for land and improvement)の原本

  1. もし売り手または買い手が法人の場合、次の書類を用意します。

    1. a. 不動産販売を許可する秘書官の証明書(Secretary’s Certificate)
      b. 売り手または買い手の法人の定款および附属定款の認証謄本

必要な登記料(Registration Fee)を支払います。支払が完了し、必要書類を提出すると、TCTまたはCCTの新しい所有者控えが5日間以内に発行されます。



6.所轄の課税審査官の事務所にて


自分の名義の税務申告書(Tax Declaration)が発行されるためには、以下の書類が必要になります。


  1. ・売買証書(Deed of Absolute Sale)の写し
  2. ・TCTまたはCCTの写し
  3. ・CARの写し
  4. ・移転税(Transfer Tax)領収書の写し
  5. ・最新の納税証明書または税金清算書(Tax Clearance)の写し

  6. マカティ市など一部の課税審査官の事務所では、次のような追加書類が必要です。

    1. a. 土地が分譲される場合には、分譲プラン(Subdivision Plan)
      b. 住宅、土地区画、またはコンドミニアムユニットのフルカラー写真


所轄の課税審査官の事務所の業務量にもよりますが、届けを出した当日または翌稼働日には税務申告書を受け取ることができます。
 


さいごに

これらの手続きを踏むのには今期が必要です。リパナ氏によると、手続きを始めてからすべてのプロセスが完了するのには2.5~4か月ほど要し、BIRや登記所で手続きをしている購入者がどのくらいいるかにも左右されるようです。


「ドゥテルテ政権では、取引のプロセスを円滑に進めるべく、政府機関で求められる事務手続きや書類の整流化するという政策を掲げていますので、この期間も短縮されてくるでしょう。」


手続きが面倒なことは間違いありませんが、もう少し我慢できる状態にする方法があります。始める前に、すべての準備を整えておくことです。


「行ったり来たりすることがないように、書類に記入をする前に、チェックリストで確認して書類がすべて揃っていることを確認しましょう。また、移転税は期日通りに支払って、罰金が発生したり、書類の処理が遅れたりしないようにしましょう。」


念のために、必要数より少し多めにコピーを用意しておくのも良いでしょう。手間を最小限に抑えるために、署名用にいくつかペンを持参し、支払の計算が正しいかどうかをチェックしたい場合は計算機も持っていくといいでしょう。


リパナ氏は、正しい税金を支払っていることを確認するためにBIRで正式な査定をしてもらうこと、適切な場所で支払をおこなうことの重要性を指摘します。購入した物件がある地域の管轄権を持つ政府機関の出張所に行かなくてはなりません。BIRには、フィリピン各地に歳入所轄税務署(RDO)があります。RDOが一つ以上存在する市もあります。さらに、課税審査官の事務所は、市役所の中などにある場合が多いです。



免責事項:本記事は執筆時に正確だと思われる情報に基づいて作成されていますが、実際の取引にあたっては、専門家にご相談ください。


(出所:MyProperty.ph

(画像:Photo by Scott Graham on Unsplash )